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品質管理の玉手箱

まえがき


 突然ですが、“品質”あるいは“品質管理”と聞いて、みなさんはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?
 もしかすると、「データの改ざん」とか「リコール」とか「産地偽装」「異物混入」などなど、マイナスのイメージが先行する方も、少なくないのではないでしょうか?
 確かに、昨今のメディア報道を見たり聞いたりしていると、“品質”と言う用語は、社会的にはあまり好ましくない状況(事件や事故)と共に語られることが多いように思います。
 しかし、1961年生まれの筆者にとっての“品質”は、全く異なるイメージを想起させます。
 筆者が生まれる前年に当時の内閣総理大臣池田勇人が打ち出した「所得倍増計画」の実現に向けて国内の産業界が大きく飛躍した高度経済成長時代に幼少期を過ごし、2度のオイルショックを乗り越えて「世界一の品質大国」と呼ばれるまでに至った日本の技術力の高さに驚きと憧れを抱いて「自分もエンジニア(技術者)になって、日本品質(Japan Quality)に関わりたい」と、人生の道標になったもの…それが、筆者にとっての“品質“なのです。
 そして、1980年に工業高校電子科を卒業後、東京に本社のある超音波応用機器メーカーに就職した筆者が、5ヶ月間の系列会社(工場)での現場実習を経て配属されたのが、本社工場の製造部検査課…まさに、品質の最前線でした。
 あれから44年、職場は変わっても、今でも品質管理の最前線で実務に携わる中で、冒頭に挙げたような数々の品質不祥事のニュースに接するたびに、「一体、日本はどこに向かっているのだろう?」との疑問と不安がないまぜになって、筆者の胸を締め付けます。
 そこで、若い頃に憧れ続けた「日本品質」復興の足掛かりを見つけるために、もう一度「品質とは何か?」を問い直してみようと、これまでの経験から学んだ品質管理のあれこれを書き綴ってみようと思います。

 なお、ここでご紹介する「あれこれ」は、あくまでも筆者の経験と知識と価値観(特に、品質管理への思い入れ)に基づく「個人的な意見」であり、必ずしも「正解(唯一解)」や「真実」ではないことをお断りしておきます。
 立場や見方、考え方に違いがあれば、同じモノを見ていても解釈は十人十色ですから、筆者とは異なる意見があるのは当然のことです。
 そんな時には、是非、皆さんのご意見をお聞かせ下さい。そうした多面的視点から、これからの日本の品質管理のあるべき姿を描けることが、何よりの喜びです。

2024年5月

注) 現在、「品質管理」と言う言葉(用語)は、「品質に関わる活動全般を指揮、統制する活動(Quality Management : QM)」と、かつて、品質大国日本の礎となった、「現場レベルで品質を作り込む活動(Quality Control : QC)」の2つの意味で使われていますが、これからのお話の中で、単に「品質管理」と書く場合は、特に断りのない限り後者のQuality Controlを指すものとします。
 

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