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テクニカルアーティストによる”デザイナーの理想を現実にする環境”とは?

こんにちは!QualiArts(クオリアーツ)の「テクニカルアーティスト室」の見原です。今回は、QualiArtsのクリエイティブ組織の記事でも触れた「テクニカルアーティスト室」について紹介します!

テクニカルアーティストとは

テクニカルアーティスト(以下TA)はゲームや映像制作において、デザイナーとエンジニアの橋渡し役をするような職種です。会社によって呼び方も役割も異なるので、一言でTAと言ってもその業務範囲は多岐にわたります。

QualiArtsではデザイナーの開発効率とクリエイティブの品質を向上させることをTAの主な役割としています。

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TAの体制と取り組み

QualiArtsでは社員の提案をきっかけに2016年からTAのチームが立ち上がり、これまで複数のプロジェクトに関わってきました。現在はテクニカルアーティスト室(以下TA室)という名前で再編され、7名のTAが所属しています。

TA室の立ち上げにあわせて19新卒と20新卒の2名が新たにTAとしてのキャリアをスタートするなど、現在はTAの育成にも力を入れています。

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上にも書いた通り、TAは業務範囲が非常に広いので、現在は3DチームとEditorチームの2つに分け、それぞれ以下のように役割分担をしています。

3Dチーム
3Dチームは大きく以下のような目標をもって業務にあたっています。

①クオリティの高いクリエイティブを作り続けられるワークフロー、パイプラインの構築

アセット作成からUnityでのセットアップまで、以下のような様々なサポートを行っています。
・命名規約やディレクトリルールの策定
・モデルやモーションの各種ルールの策定
・ワークフローの策定と、それに関わる効率化や事故防止ツールの作成
 ・Maya、Unity、Photoshop、GoogleAppsScriptなど
・リグや補助骨の仕様策定

また、プロジェクトの初期や新機能の追加が行われる際は、モデルのポリゴン数、骨の構成、テクスチャ構成や、モーションの制御、シーン構成などを実際にサンプルデータを作りながら検討します。3Dチームにはデザイナー出身のTAもエンジニア出身のTAもいるため、双方の視点を取り入れながら、データ作成からUnityでの検証まで行える体制になっています。

②スマートフォンの進化に合わせた次世代グラフィックスと、3D美少女を可愛く魅せる表現の追求

Unityにおける描画やアニメーション制御の基盤を作成し、各プロジェクトごとにカスタマイズしていくような形になっています。シェーダーの開発はもちろん、ScriptableRenderPipeline、Animation C# Jobs、VFXGraphといったUnityの新機能の検証、導入も行っています。

こちらは現在開発中のスマホゲーム「IDOLY PRIDE」のゲーム中のライブ映像です。UnityのTimelineを使用して制作されており、TA室ではTimelineの拡張はもちろん、演出の中で使用されている様々な舞台装置の描画と制御なども演出のチームと連携して開発しています。

Editorチーム
現在は主に内製スクリプトエンジンである「Uguiss(ウグイス)」の開発、プロジェクトへの導入とカスタマイズを行っています。

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「Uguiss」は弊社の運用タイトル、「オルタナティブガールズ2」の開発の中で生まれ、現在は株式会社サイバーエージェントのゲーム・エンターテイメント事業部である「SGE」の中でも多く導入されています。

「Uguiss」は主にアドベンチャーパートの構築と再生に使用されており、こちらも「IDOLY PRIDE」に導入されています。

(0:15~の台詞が表示されている部分がUguissを使用して制作されています。)

デザイナーとの関わり方

デザイナーとは基本的にプロジェクトごとに週次、隔週のMTGを行ってタスク状況の共有や要望のヒアリングを行っています。

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このような機会を絶やさないことで、継続的なサポートと、さらなる改善を双方から提案できる状態の維持を実現しています。現在はリモートワークも多く少し事情は異なりますが、基本的にはデザイナーとTAはすぐに話せるよう、出来る限り座席をまとめるようにしています。

上でワークフローの策定と書きましたが、基本的にはデザイナーのやりたいことをいかに効率的に、高い品質で、かつ継続可能な形で実現するかを考え、それが実現できるようサポートするようなスタンスです。

TAがワークフローを決めてそれを守ってもらうというよりは、デザイナーの要望を受けてワークフローを検討し、提案と議論を繰り返すことで、デザイナーと一緒にプロジェクトごとに適切なワークフローを決めていく、というような流れになります。

事例紹介~エクスポーターとバリデーター~

TAがいない頃はMayaで作成されたデータを目視で確認し、Unityに出力して問題があればMayaに戻る…というようなフローになっており、デザイナーのコストが非常に高い状態でした。

3Dはチェック項目が多いため、大量のデータをこのフローで制作していくのは効率が悪く、そもそも人力でのチェックには限界があるので、これを解決するためにバリデーターを作成しました。

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モデル、モーションなど、対象の種類ごとにチェックする項目が決まっています。具体的には、モデルであれば骨の名前が命名規約に則っているか、モーションであればフレームレートが正しいか、といった項目が設定されています。

これにより、機械的に検知できる問題は簡単に抽出することができるようになりました。一度発生した事故が繰り返し発生しないように、チェック項目は日々追加、改善が行われています。

しかし、これを提供するだけでは出力されたデータに問題がないことの保証ができません。そのため、出力時に必ずバリデーターが自動実行されるようにしました。

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出力にはこのエクスポーターを使用するルールになっています。キャラの体モデル、顔モーションなど、対象に合わせたエクスポート設定を行うと、これがシーンに保存されます。

前述の通り、チェック対象の種類によってバリデーションのルールが定義されているため、出力を実行すると対象にあったバリデーションが実行され、問題があった場合は出力が中断される仕組みです。

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出力前にある程度問題に気付くことができるので、MayaとUnityの行き来を減らすことができました。

また、エクスポーターを通すことで、出力の度にディレクトリとファイル名を指定するという作業からも開放され、デザイナーの工数を減らすことが出来ました。

まとめ

このように、TA室ではデザイナーの開発効率とクリエイティブの品質を向上させるための様々な業務に取り組んでいます。

引き続きデザイナーと連携してより品質の高い作品を生み出していけるよう、サポートを続けていきます。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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