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【まとめ】2022/11/9 17:40 茨城県南部を震源とする地震について

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1.地震の概要

2022年11月9日17:40(日本時間)頃、茨城県南部(北緯36°11.1',東経140°01.6')を震源とする最大震度5強の強い地震が発生しました。この地震による津波はありませんでした。
震央は茨城県南部で、震源の深さは51km、地震の規模はMj4.9と推定されています(気象庁暫定値)。最大震度5強を観測したのは茨城県城里町でした。

2.地震動について

気象庁によると、この地震では茨城県城里町小勝震度5強(計測震度5.1)を観測しました。
防災科学技術研究所のK-net強震観測網によると、茨城県鉾田市の鉾田観測点で震度4(計測震度4.0)、三成分合成最大加速度296.84galを観測しています。また、栃木県鹿沼市の鹿沼観測点で震度4(計測震度4.3)、三成分合成最大加速度176.86galを観測しています。

画像2.1 K-net鉾田 加速度波形
画像2.2 K-net鉾田 速度・加速度応答スペクトル

気象庁の推計震度分布によると、茨城県城里町と笠間市の一部では震度5強相当、茨城県水戸市の一部では震度5弱相当の強い揺れがあったものと見られています。※注1,2参照

画像2.3 気象庁 推計震度分布図※注1,2参照

防災科研のJ-RISQ地震速報によると、この地震で茨城県城里町の一部では震度5強相当の強い揺れがあったものと見られています。また、震度5弱相当の揺れがあった地域があると見られるのは笠間市と水戸市です。震度5強相当の揺れに見舞われたと推定される人口は合わせて1000人未満程度、震度5弱相当の揺れに見舞われたと推定される人口は合わせて2000人程度です。※注1,2
(注1)これらの推計震度は必ずしも実際の震度と一致しないことに注意してください。
(注2)推定に用いられている震源要素等はすべて速報値段階のもの(気象庁速報値)です。

画像2.4 行政区ごとの推定震度遭遇人口

気象庁によると、この地震で長周期地震動階級1以上は観測されていません。

茨城県城里町小勝の地震計は茨城県が設置したもので、2022年4月19日に茨城県北部を震源として発生した地震においても最大震度の5弱を観測しています。今回の地震でも当該観測点は丘陵部に位置していて地盤増幅率は0.75と低いにもかかわらず、この一点のみで震度5強の揺れを観測しています
なお、気象庁は9日の緊急記者会見で「地震計は適切に設置されたもの」としていて地盤表層部の特殊な条件により地震波が増幅した、あるいは地震波の伝わり方により強く揺れたなどの可能性が考えられます。また、2020年4月12日に発生したMj5.0の地震においては、このような現象は見られませんでした。

3.地震のメカニズ厶

気象庁のCMT解(速報値)では、南南東-北北西方向に圧力軸を持ち、北東-南西走向で南東側上昇の高角逆断層、あるいは東西走向で北側上昇の低角横ずれ逆断層の型となっていますMw4.8で、セントロイド深さは52kmです。

画像3.1 気象庁CMT解(速報値)

一般的なモデルでは、この地震は大陸プレートとフィリピン海プレートの境界付近で発生した地震と見られます。
関東地方の地下構造は、従来モデルにおいても1枚のプレートの直下に2枚の海洋性プレートが沈み込む複雑な構造をしていて、いわゆる「地震の巣」と呼ばれる地域になっています。

(参考)
また、従来説とは異なる新しいモデルである「関東フラグメント」モデルでは、関東地方の地下構造は以下のようになっています(→画像3.2)

画像3.2 従来のプレートモデル(左)と新しいプレートモデル(右)。それぞれの等深度線と数字はプレート上面の深さを表す(産業技術総合研究所[2008])

これを元にして考えると、今回の地震は関東フラグメント(過去に破断した太平洋プレートの一部が沈み込めずに留まったと考えられている、ブロック状のプレート断片)と大陸性プレートの境界付近で発生したことになります。

4.緊急地震速報

気象庁は17時40分20.7秒に地震波を検知し、地震波検知から3.6秒後の17時40分24.3秒に緊急地震速報(予報)を発表しています。緊急地震速報第一報提供の段階でS波が到達していた地点はありませんでした(→画像4.1)。一般向け緊急地震速報(警報・特別警報)は発表されていません。

画像4.1 緊急地震速報第1報提供から主要動到達までの時間及び推計震度分布図(気象庁)

5.過去の地震活動(Mj≧5.0)

気象庁震度データベース検索から検索すると、今回の地震から半径10km程度の範囲で、1950年以降M5.0以上(45km≦深さ≦55km)の地震は十数回程度発生しています。
1975年4月12日7時15分頃、今回の地震の震源付近を震源とするMj5.1の地震が発生しました。震源の深さは55kmです。

2011年4月2日16時55分頃、今回の地震の震源付近を震源とするMj5.0の地震が発生しました。震源の深さは54kmです。最大震度は5弱です。
CMT解は今回の地震と大きな差はなく、今回の地震と同様の地震であると考えられます(→画像5.1)。

画像5.1 気象庁地震月報(2011年)より 2011.4.2の地震のCMT解

2020年4月12日0時44分頃、今回の地震の震源付近を震源とするMj5.0/Mw4.8の地震が発生しました。震源の深さは53kmです。最大震度は4です。
CMT解は今回の地震と大きな差はなく、今回と同様の地震であると考えられます(→画像5.2)。

画像5.2 気象庁地震月報(2020年4月)より 2020.4.12の地震のCMT解

6.被害の状況(2022年11月10日17:33現在)

東京電力パワーグリッド(株)によると、地震後に栃木県宇都宮市の約1,160軒で停電が発生しました。地震による直接的な影響であるかは不明です。
また、千葉県と総務省消防庁などによると、震度3を観測した千葉県柏市内の飲食店で1名が軽傷を負った模様です。
消防庁によると、その他に9日19時現在で大きな被害の情報は入っていません。

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