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2022/8/26 8:48 天草灘を震源とする地震について

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1.地震の概要

2022年8月26日8:48(日本時間)頃、天草灘(北緯32.04°,東経129.988°)を震源とする最大震度4のやや強い地震が発生しました。この地震による津波はありませんでした。
震央は天草灘で、震源の深さは12km、地震の規模はMj4.5と推定されています(気象庁暫定値)。最大震度4を観測したのは鹿児島県長島町でした。

2.地震動について

防災科学技術研究所のK-net強震観測網によると、鹿児島県長島町の長島観測点で震度3(計測震度3.2)、三成分合成最大加速度73.6galを、熊本県天草市の牛深観測点で震度3(計測震度3.3)、三成分合成最大加速度51.8galを観測しています。

画像2.1 K-net牛深 強震波形

また、同研究所のJ-RISQ地震速報によると、震度4を観測した鹿児島県長島町の他、熊本県天草市、鹿児島県阿久根市、薩摩川内市の一部では震度4相当のやや強い揺れがあったものと見られています。
※ただし、これらの推計震度は必ずしも実際の震度と一致しないことに注意してください。また、推定に用いられている震源要素等はすべて速報値段階のもの(気象庁速報値)です。

画像2.2 J-RISQ地震速報 推定震度頻度分布

気象庁によると、この地震で長周期地震動階級1以上は観測されていません。

3.地震のメカニズ厶

気象庁からの発震機構解(速報値)の発表はありません。
防災科研のAQUA-CMTによると、東西方向に圧力軸を、北東―南西方向あるいは北西―南東方向に走向を持つ横ずれ断層の型となっています。
(解1)λ=-4.3°[純粋な左横ずれ断層-4.3°]
(解2)λ=-161.1°[純粋な右横ずれ断層+28.9°]

画像3.1 AQUA-CMT

同研究所のF-netによると、東西方向に圧力軸を、北東―南西方向あるいは北西―南東方向に走向を持つ横ずれ断層の型となっています。
(解1)λ=-155°[純粋な左横ずれ断層+25°°]
(解2)λ=-9°[純粋な右横ずれ断層-9°])

画像3.2 F-net CMT解

CMT解にはAQUA-CMTとF-netとで大きな差はありません。
この地震はユーラシアプレートの内陸地殻内で発生した地震です。
地震調査研究推進本部(2013)によると、この地震の震源となった場所には上甑島活動セグメント(甑断層帯上甑島北東沖区間)が存在します。鹿児島県西方沖の甑島近海を北東-南西方向に延びる右横ずれ断層で、AQUA-CMT、F-netのCMT解ではそれぞれの断層面解2と一致しています(産業技術総合研究所活断層DBによる)。断層長から推定される、この区間が単独で活動した場合に考えられる最大規模の地震はM6.9程度です。

画像3.3 産総研活断層DB
画像3.4 産総研活断層DB(拡大)

また、同本部の音波探査で得られた情報に基づくと、この区間は傾斜が高角であり、それを含めて防災科研(AQUA,F-net)によって自動解析された今回の地震の静的断層パラメータの値にはいずれも矛盾がありませんので、前述の活動セグメントで発生した地震である可能性が高いと考えています。

画像3.5 甑(こしき)断層帯 地震調査研究推進本部

4.緊急地震速報

気象庁は8時48分38.6秒に地震波を検知し、地震波検知から7.5秒後の8時48分46.1秒に緊急地震速報(予報)を発表しています。緊急地震速報第一報提供の段階でS波が到達していたのは鹿児島県と熊本県の一部でした。一般向け緊急地震速報(地震動警報/特別警報)は発表されていません。

画像4.1 緊急地震速報第1報提供から主要動到達までの時間及び推計震度分布図(気象庁)

5.過去の地震活動

2012年8月17日の8時48分頃、天草諸島西方沖を震源とするMw4.8(Mj4.9)の地震が発生しました。メカニズムは北東―南西あるいは北西―南東方向に走向を、東西方向に圧力軸を持つ横ずれ断層の型で、断層面解1が今回の地震の断層面解2とよく似ています。この地震は、上甑島活動セグメントの北端付近で発生していた可能性があります。

画像5.1 気象庁地震月報(カタログ編) 2012から
2012.8.17の地震の発震機構解

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