能登半島における地震活動の変化

東京大学地震研究所が公開しているT-SEISを用いて気象庁一元化震源(1995~2023)を解析した結果とその考察です。
内容は訂正する可能性もありますし、一個人の考察ですのであくまでも参考程度にご覧ください。
今回は各セグメントでデータを集めましたが、あくまで緯度経度でいくつかに区分しているだけなので他のセグメントや異なる起震断層等の活動も含まれています。

産総研の図の区分を参考にしました。画像をクリックorタップすると引用元の産総研HPに飛びます。

1.全体の移動平均比較

各セグメントにおけるb値の移動平均

2007年の地震の前後には長期的な傾向としてb値に大きな変化(減少?→増加)があったものの、少なくとも今回の地震の前には2007年ほど明瞭な変化がありませんでした。
(もっと長期的な時間スケールで減少している?それとも本当に減少していない?)

2.門前沖セグメント付近(37.0°〜37.5°N,136.25°〜136.75°E)

領域内のM-t図(1995~2023/M2以上)
b値の推移
(地震が少なすぎた年は前後の年とでまとめて求めているので値が飛んでいます)

この領域では、2007年能登半島地震(Mw6.9)の直前にややb値が減少し、その後上昇したように見えます。
また、1995年5月には門前沖セグメント西端において最大でM4程度の地震を伴う小規模な群発地震?があったようです。

1995年の震央分布
1995年のM-t図(横軸は月の頭文字/M2以上)
2007年の震央分布。
1995年5月に小地震が続いた領域が空白になっている

3.猿山沖セグメント(37.1°〜37.6°N,136.75°〜137°E)

領域内の震央分布図(1995〜2023/M2以上)
領域内のM-t図(1995~2023/M2以上)
同じくb値推移

令和6年能登半島地震(Mw7.5)で最も大きなすべりがあったと見られるのはこの周辺です。
この領域の西側も2007能登半島地震の余震域に入っています。
ここでは、2007の地震の前数年で明瞭にb値が減少し、その後急激に上昇しているようです。
直近数年では、2017年頃からb値が低下し、かつ地震活動が若干高まる変化がありました。その後、2020年3月13日にM5.5の地震が発生しました。これは2007の地震の余震域の少し東の場所で発生しており、誘発される形で発生したものかもしれません。
また、この地震の後b値が上昇し、2022年以降は再びb値が下がっています。しかし、22年以降の活動は低調であり、有意な変化であるかは分かりませんでした。

産総研緊急調査HP(2020.3.13更新)より引用。
※この図ではこの地域は輪島沖セグメントに区分されています
画像をクリックorタップすると引用元のHPに飛びます

4.輪島沖セグメント(37.3°〜37.7°N,136.9°〜137.2°E)

領域内のM-t図(1995~2023/M2以上)
b値推移

この領域の東部は2020年頃からの群発地震の活動域内に含まれていて、群発地震が起こっていた間のb値は1.0〜1.1程度で推移しています。
また、1729年にこの領域内で享保能登地震(M6.6~7.0程度)が発生しています。

5.珠洲沖セグメント(37.3°〜37.7°N,137.2°〜137.5°E)

領域内のM-t図(1995~2023/M2以上)
領域内のb値推移

珠洲セグメントでは、群発地震が起こるまでの直近30年ほどの間で地震活動が少しずつ低調になっていた様子がわかります。さらに、この期間でb値もやや減少傾向にあったように見えます。
90年代当時が活発だったのか、それとも最近20年間が静穏だったのかが気になる所ですが、当時は日本の震度観測点がちょうど増え始めた頃(主に1996年の阪神淡路大震災以降)なので、それより前の地震活動を詳細に知ることは困難です。
2018年頃からは再びb値が上昇して、2020年頃に群発地震が開始しました。

6.珠洲北東沖〜佐渡付近(37.5°〜38°N,137.5°〜138°E)

領域内のM-t図(1995~2023/M2以上)
領域内のb値推移

能登半島の北東沖では、長期的にb値が若干の減少傾向にありました。
ここでは近年目立った地震は起きていませんでした。

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