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「VOCA展2021 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」レポート

国際的に通用する若手作家の支援を目的に1994年より毎年開催している「VOCA展」は今年で28回目を迎える。全国の美術館学芸員、研究者、キュレーター、ジャーナリストなどから推薦委員を選出し、それぞれが40歳以下の作家1名(1組)を推薦する。新作の平面作品が出品の条件だ。

「VOCA展2021 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」では、31名の推薦委員から推薦された30作家が出展する。グランプリとなるVOCA賞には《上野山コスモロジー》を出展した尾花賢一、VOCA奨励賞に鄭梨愛、水戸部七絵、VOCA佳作賞に弓指寛治、岡本秀はVOCA佳作賞と大原美術館賞に選出された。

受賞者選考委員は小勝禮子(選考委員長/美術史・美術批評)、水沢勉(神奈川県立近代美術館館長)、家村珠代(多摩美術大学教授)、荒木夏実(東京藝術大学准教授)、前山裕司(新潟市美術館館長)、推薦委員はWEB参照

開催に先立ち、11日に同展会場で授賞式が開かれた。

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VOCA賞を受賞した尾花賢一は、受賞について「審査が終わり、3ヶ月ぶりに自分の作品をみると、まだまだできることはあるなというのが正直な感想。」

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VOCA奨励賞 鄭梨愛《Vision》布に昇華転写、フック・ステンレスパイプ・木材

現在京都市京セラ美術館で開催中の「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989-2019」展では「突然、目の前がひらけて」として参加している鄭梨愛。《Vision》は祖母や祖父のイメージを5枚の布に描かれ、絵と時間軸を重ねるように作られている。

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VOCA奨励賞 水戸部七絵《Picture Diary 20200910》, 《Picture Diary 20200904》油彩・麻布・木製パネル

SNSに流れる社会のニュースを絵日記として残したという「Picture Diary 」からの2点。大英博物館の創立に寄与したハンス・スローンの顔、そして女子サッカーブラジル代表が描かれる。本人も「重量がある作品なので壁にかかるのか不安があった」という程の量感のある油彩画。

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VOCA佳作賞 弓指寛治《鍬の巨人と鉄の巨人》アクリル・鉛筆・ペン・新聞紙・木製パネル

「これまで自分の母の死など、タブーとされてきたものをテーマとしてきた。今回の作品はこれまで継続的にアプローチしてきた満州や満蒙開拓民、そこに関わった祖父などから着想を得て制作した。」という本作は満州に入植する開拓民の歴史、そして中央にはパシナ型蒸気機関車が大きく描かれる。画面右には農機具で作物を収穫する弓指本人も登場する。

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VOCA佳作賞、大原美術館賞 岡本秀《複数の真理とその二次的な利用》紙本着色・額に写真をマウント

中国元代の画家、劉貫道の屏風絵を元にした作品。木製の額縁に見えるのは木製パネルに貼られた写真である。襖に描かれたモチーフは古今東西の引用からなる。
岡本は2020年に日本橋三越本展で開催された梅津庸一キュレーション展「フル・フロンタル 裸のサーキュレイター」にも参加している。

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長田綾美《103,000》ブルーシート・BB弾・糸

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吉國元《来者たち》色鉛筆・紙

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今井麗《SUMMIT》油彩・カンヴァス

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青原恒沙子《humus》油彩、カンヴァス

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永田康祐《超低速》モニター、4ch FHDビデオ

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「VOCA展2021」展示風景

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「VOCA展2021」展示風景

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「VOCA展2021」展示風景


本展は上野の森美術館で3月30日まで開催される。

開催概要
URL https://www.ueno-mori.org/exhibitions/voca/2021/
会場 上野の森美術館
会期 2021年3月12日(金) 〜 30日(火)
開館時間 10:00 〜 17:00(最終入場閉館30分前まで)
入館料 一般800円/大学生500円/高校生以下無料
*障害者手帳をお持ちの方と付添の方1名は無料(要証明)
主催 「VOCA展」実行委員会/公益財団法人日本美術協会 上野の森美術館
特別協賛 第一生命保険株式会社


レビューとレポート第22号(2021年3月)


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