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林香苗武「ストロー」


ペインター・林香苗武の2年ぶりの個展「ストロー」が東京・WISH LESS galleryで開催中だ。

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ストロー 展示風景


武蔵野美術大学油絵科を卒業した林は絵画で速度を追求し、速度主義を掲げ、2013年に「速度/∞ /0」(HIGURE 17-15 cas)、2015年に「大木と巨大キツツキ」(CLEAR EDITION GALLERY)、2017年に「スカイジュース」(コ本や)と、一貫して「速度」をテーマとした絵画・インスタレーションを発表し続けてきた。
ある時から「絵が楽しくなくなってきてしまった」という林は、2019年のイタリア未来派巡礼を機に、速度主義から一旦離れることとなる。その頃のことを林は「2015年くらいから友人には愚痴のように『絵を描くのを楽しめる人間ではない』と言っていました。それからスランプみたいな時期がすごく長く、2年前の2019年にここ(WISH LESS gallery)でやった展示『GOD OF SPEED』で一旦速度主義から離れて、代わりに自分の中で神様みたいなものを作ってそっちを信じて制作を続けようと決めた時から、再び絵が描けるようになりました。」と話す。


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《戦慄》2021


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《ニュース》2021


中央に大きくキャラクターを配置するという構図はこれまでの林の作品でも見られたが、今回目立つのは《戦慄》や《ニュース》に見られるようなキャンバスを縁取るように描かれた枠だろう。

「枠で飾るという意味合いはなくて、元々キャンバスや白い大きな四角いものに対するコンプレックスをなんとか克服するための試みでした。ジェッソの白すら嫌になったので、そこに少し色を付け足すことから始めて、キャンバスの縁も何か自分で作ってみようと描き始めました。漫画のコマ割りのようにも見える枠が二つある作品《ニュース》は、枠を一つ作って、どうやらキャンバスはコントロールできるようだとわかってから、その中にもう一つ枠を描いてみよう、そしてその中に絵を描いてみようと思いつきました。」

「白い大きな四角いもの」の気持ち悪さというのは具体的にどういうものなのか聞いてみると

「人の手から生み出されている「生っぽさ」です。突然生えてきた雑草ではなくて、綺麗に管理が行き届いた花を見るような、人工物的な気持ち悪さです。枠線は直線ではなく、フリーハンド的な歪みを出しました。」


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《二十日鼠》2021, 《賢者》2021, 《荒野の指揮者》2021(左から)


この他、サキの短編小説「二十日鼠」から着想を得て描かれた《二十日鼠》や、羽衣伝説をテーマとした《羽衣》など新作10点を展示。

出品作品はiPadで下描きをしたものや、描いている途中で一度写真を撮り、画像編集を経て再びキャンバスに描いたものが多いという。林は2019年の秋頃からiPadで制作を始め、SNSで発表し続けてきた。会場で販売してるZINE『POCKET KNIFE』には、今回展示している作品の元になった画像3点を含んだ29点を収録している。


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『POCKET KNIFE』2021


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WISH LESS gallery


展示情報
林香苗武個展「ストロー」
会場:WISH LESS gallery  http://wish-less.com/
会期:2021年9月18日(土)~10月10日(日)
木・金 15:00~20:00/土・日 12:00~19:00
月~水 休み (最終日18時終了)


レビューとレポート第29号(2021年10月)

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