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ひと癖ある男にしかアロハは似合わない
「女性の香水は、その筆跡よりも本人について多くを語るものだ」
とデザイナーのクリスチャン・ディオールが言った。
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「あなたが乗っていたエレベーターだとコロンの匂いでわかった」と職場の同僚に
よく言われた。カルバンクラインのエタニティだった。
しかし、ディオールには悪いけど、匂いでは「アイツがいた」くらいの情報しかない。ムスクとかシトラスとかウッドとかフローラルとか香りの系統はあるが、嗜好であり、人柄までは語らない。
ファッションにも情報量の少ないアパレルがある。例えば「アロハ」。この開襟シャツは、いつもニコニコ笑顔で、何を考えているのかわからない。どうも何も考えていないらしい。
トロピカルな花鳥風月の派手さは、カーテンやテーブルクロスに、むしろふさわしい。
似合う人、着こなしている人が少ない。かっこいいジョージ・クルーニーですら、植物園の用務員くらいにしか見えない。
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アロハは、1920年代に日系ハワイアンの仕立て屋さんが、古い着物地をデザインした。
アロハを模した沖縄の「かりゆし」は、夏の国会で大臣たちが着用。これが、揃いも揃って似合わない。逆宣伝になっている。せっかく沖縄に来たんだから「かりゆし」を買って行こうかという気持ちに旅行者はならない。
1930年ごろには、トロピカルな極彩色にいろどられ、手に負えなくなった。
人がアロハを選ぶのではなく、アロハが着る人を選ぶ。
天才的にアロハが似合わない人もいる。クエンティン・タランティーノも日本の
国会議員並に似合わない。
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いったい誰が似合うのか。
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タペストリーのような極彩色をものともしない、オーラをただよわせたブラッド・ピットのような男が、アロハをてなずけられる。
アロハが似合うには才能が必要だ。
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そして、カイテルのような枯れて、ひと癖ある男でないと、トロピカルな花鳥風月には勝てない。
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電気製品や百科事典の叩き上げのセールスマンで、辛苦をなめたDJウルフマン・ジャック。彼の普段着はアロハだった。
彼のDJショウは、LAの巨大なアンテナから、西はオーストラリア、東はイスラエルまで届いていた。
「アーカンソーから電話しているんだけど」
「夜のアーカンソーには何があるんだ?」
「何もないよ。あるのは、ウルフマン・ジャックの声だけだよ」
「はははは」
「いま、僕は裸だけど、キミも裸?」
「いいえ」
「裸にならないか」
「ダメよ」
「そちらに行っていい?」
「もっとホットになりたいの?」
「はははは」
こんな調子でリスナーからリクエスト電話がくるDJショウだった。
ウルフマンは、日本のレジェンドFM番組”ジェット・ストリーム”を残したDJ城達也と同世代だった。二人の没年も偶然1955年。20世紀でラジオの時間が終わったような気がする。
お時間がある方は、”ウルフマン・ジャック・ショウ”に耳を傾けてください。
お付き合いいただきありがとうございます。ご閲覧感謝。
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