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【幽霊のかえる場所】あらすじ

紙の原稿用紙にして1,500枚になる作品で第一章だけ配信しましたが、読む気にもならないかも知れませんのであらすじを作ってみました。   

『幽霊の帰る場所』あらすじ

阿佐野桂子


 世界中で行方不明になっている何パーセントかの人間は吸血鬼に襲われて命を落しているらしい。その吸血鬼退治になぜ僕が同行しなくてはならないのだろう。
 僕が一度ロンドンで幽霊になった経験を持つから都合がいい、と言われても承服しかねるが、O型Rh+ null、すなわち誰にでも輸血可能な黄金の血液を持った人間を守るため、と言われ、しかも社命ならいやいやでも従わざるをえない。
 僕は人間と共生し、なるべく目立たなく暮している吸血鬼集団『バイオ・ハザード』社日本支部の血液検査係だ。『バイオ・ハザード』社は温厚な吸血鬼達の為に創設された世界的な規模の多角経営企業で、僕もその全貌は知らない。
 一方、人間が抱く凶暴な吸血鬼のイメージそのままに単独行動をしているのがアウトロー吸血鬼と呼ばれる者達だ。日本国内だけでもその数二十名。『バイオ・ハザード』社はひっそりと大人しく暮している同類とO型Rh+ nullの血を持つ人間を守る為に彼等アウトロー吸血鬼の殲滅に乗り出した。
 吸血鬼と言ってもコウモリになって空を飛んだり怪力だったり、十字架やニンニクや日光を怖がったりはしない。
 目が合った相手を少しの時間眠らせる事ができるくらいだ。ただ血が命の糧なのは確かで、穏健派が人殺しをしないのに対してアウトローは殺人も躊躇せずにやってのける。
 
 その刺客となったのが、僕と少しばかり縁があった賀茂さんとミツミネだ。
 賀茂さんは「賀茂流霊能力者協会」の凄腕の霊能力者で三十歳、仕事中は汚いジャージ姿だ。爆発したような髪型を櫛で撫で付けるとアニメの「ちびまるこちゃん」に似ている。 
 賀茂さんには博打好き、浪費癖の兄がいて、その借金二千万円を吸血鬼ハンティングで稼ぐという切実な目的がある。 
 ミツミネは普段は柴犬か豆柴の姿をしているが、霊感のない人間には見えない。霊験あらたかと評判の三峯神社の神使いで実体は狼だ。賀茂さんが気に入ったらしく、人間世界にいて常に傍でガードしている。
 この世間からはずれまくった一人と一匹とまた幽霊に逆戻り中の僕の新幹線乗り継ぎアウトロー吸血鬼狩りの旅が始まった。僕の仕事はアウトロー吸血鬼を見定めることだ。
 
 同類が灰にされてしまうのは気が重いが、アウトロー達は『バイオ・ハザード』社の説得に応じなかったシリアル・キラーだ。人間世界の掟に照らしても許される存在ではない。
 猫の轢死体をみただけで気絶しそうな僕の想像に反して彼等の最後はあっけないものだ。強力なアイテムを持った霊能者が実力を発揮すると吸血鬼さえあっと言う間もなく灰と化す。おそらく痛みを感じることさえなく逝ってしまうのだろう。そこだけが唯一の慰めだ。
 
 福岡でまず二名、北海道の札幌と小樽で各一名、広島で一名、大阪で五名、名古屋で二名、横浜で一名、最後は東京で七名。計二十名だ。
 小樽で僕は美人さんの幽霊に一目惚れされた。それからはずっと行動を共にしているがアラフォーの冴えない僕のどこが気に入ったのか不明だ。ついでに死亡原因も不明。
 大阪では東京支部時代に顔見知りだった女性吸血鬼のジュネーブ転勤に付き合った。
 彼女はアウトロー吸血鬼の子供を身篭っており、学会が子供の保護を決定したからだ。吸血鬼同士で子供が出来るのは稀で、母子共に本部のジュネーブでお預かりの身となった。
彼女を騙していたアウトローは灰になった。
 名古屋では年の若いアウトロー吸血鬼に反撃を食らいそうになったが、賀茂さんとミツミネは一糸乱れぬタッグで乗り切った。
 そして総てのアウトロー吸血鬼をやっつけて会社に戻った僕は再度吸血鬼として復活した。二度も幽霊になった吸血鬼なんて、ギネス・ブック掲載ものだ。おそらく人間だって二度幽霊になったやつはいないだろう。
 
 一緒に旅をしている間にミツミネがぼやいていたのを覚えていた僕は賞金一千万円の上乗せに成功した。これで賀茂さんは弟と縁を切って独立できる。剣呑な武器を持った破邪の巫女とおさらば、と思ったのだが……。
 
 僕は現在賀茂さんと同じアパートに住んでいる。神使いと霊能者、その子供「宝子」ちゃんと一緒だ。ミツミネは人間の姿になって探偵社を設立した。どうやらこの先長い付き合いになりそうだ。いいんだか悪いんだか、普通でないのは確かだ。

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