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stay home

「行ってくる」
『おいおい、どこ行くんだ?』
「ちょっとその辺、ブラブラ」
『まだ駄目だぞ、外に出ちゃ!』
「ええー、もういいでしょ?」
『駄目駄目。パパだって我慢してるんだから』
「大丈夫だって。行ってくる!」
『駄目だって!それにマスクもしてないじゃないか!』
「うん。だってあんなの私らしくないし」
『何だそれ。なおさら出ちゃ駄目だ!』
「もう~、私多分うつんないって!」
『そういう考えが駄目なんだよ!お前がうつす可能性があるんだよ!自分の事ばっかり考えるんじゃない!』
「ええー、パパにそんな考えがあるなんてビックリ」
『とにかくまだ家にいなさい。終息したら思いっきり町で遊ぼう!な!』
「チェ!じゃ、今我慢するご褒美に服が欲しい!」
『まったくお前ってやつは。』
「だって私いつも同じ服だし、新しいの欲しいよ!もうボロボロだよ」
『似合ってると思うけどな。』
「お願い!新しい服!」
『分かった分かった。しかし、いつまで親のすねをかじる気だ。もうパパのすねが無いよ』
「何それ?面白くなーい」

ピンポーン

「ん?誰か来た?」
『ああ、出前だ。腹が減ったからさっき頼んだんだ』
「ええー、自分だけズルい!私出てあげる!」

ゲップ

『ん?お前!パパが呼んだ出前を!!』
「え!し、知らなーい」
『嘘つけ!ゲップしてたろ!それに何より口の周りが汚れてるぞ!』
「さ、さぁねー。それより暇すぎ。何かしよーよ」
『外には出るなよ』
「分かってますー。あ、動画撮ろ!パパカメラで撮って!」
『面倒くさいなー』
「それぐらいやってよ。家に居てあげるんだから!ほら、私踊るから!」
『はいはい』
「じゃ、踊るね!ミュージックスタート!」

「どう?ちゃんと撮ってる?」
『撮ってるよ。でも踊るんならもっと踊れよ。右に左に行ったり来たりしてるだけじゃないか。』
「うるさいなー!ちゃんと撮って!」
『もういいもういい、終わり終わり。』
「ちょっと!もう!ちゃんと撮ってよ!カメラを止めるな!」
『は?何それ?くだらないよ。」
「もうヤダ!つまんない!パパと一緒に住みたくない!私、終息したら家出るから!一人暮らしするから!」
『どうぞご自由に。お前みたいな奴に部屋を貸してくれるとは思わないけどな!』
「何でよ!貸してくれるに決まってるでしょ!って言うか、パパ、私が大切じゃないんだ?早く出て行って欲しいんだ!」
『何でそうなるんだよ?』
「そうよ!きっとそう!私なんか必要ないんだ!死んでやる!ここから飛び降りて死んでやる!」
『もういいって。お前はいつもそう。何度目だ?そんなこと言って死んだことないだろ?』
「今日は本気よ!飛び降りるから!」
『出来ないって。無理無理。』
「もう!!」

『あ、飛び降りた』


「ただいま…」
『な!おかえり』


※ゾンビ親子の会話だと思って、もう一度読んでみてください。




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