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スタートアップのエンジニアの集まりが"組織"になるまでの過程から学んだこと

はじめに

atama plus の深澤 (@qluto) です。
2019年入社で一人目のエンジニアリングマネージャーとして活動をし始め、採用・組織作り・制度づくり・技術的負債の解消といった課題に向き合いながら組織運営全般の活動を推し進め、最近その全バトンを新たな人に受け渡しました。

この記事は atama plus Advent Calendar 2023 の3日目です。
この4年間を振り返るのにちょうどいい機会だったので筆をとっています。

この文章はどんな人向け?

特にスタートアップのような変化の激しい開発組織において、これから分業や仕事間の調整を図って組織をスケールさせていく必要を感じているがどのように考えをまとめればいいか探りかねている人、分業や調整をしているけれど課題を感じている人向けです。

エンジニア人数15人ほどの開発が50人ほどの体制になるまでの4年間で進めてきたことの要点をかいつまんで紹介します。
エンジニアに焦点を当てた話のためここでは詳しく触れませんが、エンジニア以外の職能も含めた開発組織規模としては20人ほどから70人ほどへの変化となっていました。

※ atama plus にはエンジニアリングマネージャーという名前での役割はなく、独自の命名をしているのですが、世間一般的に言われる役割としてはエンジニアリングマネージャーが一番近いものであるため、わかりやすさのためにそう記述しています。

エンジニアの組織作りから学んだこと

大事なのは未来志向のエンジニア採用戦略

背景
なかなか難易度の高いとされているエンジニア採用(特に2021〜2022年ごろは競争が激化していました)においてはなかなか思ったような成果をあげられていませんでした。当時は過去の採用ペース実績を維持しながら活動展開をし、それに合わせた組織構造を適宜考えていくというスタイルに近かったと言えます。

取り組みと結果
採用目標を漫然と過去実績から導くのではなく、目標指向の採用戦略を採用することで、全社的にたくさんの力強い協力を仰ぐことができ、採用ペースを大幅に向上させることができました。各プロダクトオーナーと各エンジニアリングマネージャーと協力し、組織の将来像を定義し採用戦略を導いたという形です。

採用チームとエンジニアの協力体制を強化し、全体の目標達成に向けた定量的な取り組みを推進しました。採用プロセスも、単なる選考から、候補者がatama plusでのキャリアを探求する機会へと変貌させました。
これは、内定を辞退された方々のフィードバックを真摯に受け止め、候補者一人ひとりに対して atama plus で働く理由、働いてほしい理由を共に作る部分が採用プロセス全体を通じて弱かったということを学ぶことができたからです。

学びと今後の挑戦
転職・就職を考えている一人ひとりに個別の思いがあるので、たとえ会社への注目度が高まっている状態だとしても一人ひとりに真正面から向き合い、候補者の選考体験を深く理解し期待に応えていくことの重要性を実感しました。これは転職市場の情勢がどうなっているかにかかわらず、ずっと大事なことなので肝に銘じたいと思います。

オンボーディングプログラムの拡充は目標とする状態定義と共に

背景
2019年に私が入社して以降、Dev向けオンボーディングプログラムの改善に取り組んできました。コロナ禍以前は、新入社員一人ひとりに対して直接説明をおこなっていました。しかし、コロナ禍になるにあたって非同期でも進めやすいような動画コンテンツ化を推し進めたりしながら、プロダクトの根幹知識を中心に据え、その他は実務を通じて周囲から学ぶスタイルとして確立されてきました。特定領域に特化したチーム固有のオンボーディングも必要に応じて追加導入されました。
2021年から新卒入社のエンジニアを迎えるにあたっては、それまで確立してきた中途入社向けのオンボーディング内容を理解するのに必要な基礎部分の速習オンボーディングを1ヶ月分用意し、両者を結ぶ役割を果たしました。

取り組みと結果
オンボーディングの目標は、入社3ヶ月以内に小規模な機能開発タスクを自立的に担当できることでした。オンボーディングを進めている最中にも都度フィードバックをもらい、オンボーディングを終えた後にも振り返りの場を設けていました。
目標とすべき状態がはっきりしていること、随時フィードバックを受けての継続的な改善を積み上げてきたことが良いオンボーディングプログラムを構築できた秘訣でした。
新たに導入した新卒向けプログラムは、中途入社者向けプログラムへの理解を深める架け橋として十分機能し、素早くチームに溶け込んでの開発ができていました。

学びと今後の挑戦
現状、チームに入った後の学び方は個々に委ねられています。今後は、「これを知っておくべき」という形式知を効率的に学べる環境を提供することが課題です。特定技術領域の横断組織体(ギルドと呼んでます)や特定の事業領域に特化した組織を通じて、より深い知識共有を促進することが、オンボーディングプログラムのさらなる進化につながるでしょう。

エンジニアの成長支援は王道たる日々のフィードバックから

背景
当社の成長支援活動は、創業当時は代表が単独で行っていた人事評価から始まりましたが、現在ではDev Successという役割を持つメンバーが担当するようになりました。Dev Successが担当し始めた初期は、異なるチームのメンバーがお互いの活動を把握し、支援する形でしたが、日々の活動を共にする人が成長支援を担当するように調整が行われました。

取り組みと結果
成長支援においては、日常的にメンバーの活動を理解し、即時のフィードバックが可能な関係性が重要です。人事評価は重たい半年ごとのプロセスではなく、日々の活動の蓄積と振り返りが中心となるべきです。私たちは、組織や業界の先人たちの経験を活かし、普遍的なプラクティスを採用するべきだと考えています。
後述する役割定義に関するアプローチとは真逆の主張ですが、両者には普遍性に大きな違いがあるからであって考えが矛盾しているというわけではないです。

学びと今後の挑戦
先人たちの経験を活かして更なる進展を遂げるとなれば、キャリアラダーやロールモデルの構築などがその候補として挙げられるでしょうか。
キャリアラダーの構築は、組織や業務の需要と密接に関わっています。経験年数や範囲の多様性を考慮し、現在の組織や局面で重宝されるスキルを明確にすることが、メンバーの相互成長を促進します。エンジニアに閉じずに、事業戦略と技術戦略を統合した協調的な取り組みが必要となっています。これにより、組織全体の成長支援体制を強化し、個々のキャリアパスの発展に貢献できるようになると良いと考えています。

役割定義やチーム組成は実態に合わせて小さく着実に

背景
4年間の役割定義やチーム組成の話を一つずつ紹介していくとそれだけで一つの記事になる分量なので、ここでは端的な紹介に留めます。具体例は別記事にしました。

開発チームの活動範囲を適切に進めるために、効果的なチーム構成と役割定義に焦点を当てました。提供価値とスキルセットが他とは異なる領域を新たな性質のチームとして定め、チームを代表し他のチームとの接点となる役割を徐々に組み立ててきました。

取り組みと結果
エンジニアの主たる領域をはじめとした高度な取り組みや技術的負債への対処などは着実に進んできました。役割や特定技術領域チームが成立したことで、エンジニアが意識するロールモデルやスキルも段々と共通認識を作りやすくなってきています。

学びと今後の挑戦
他社の取り組みや組織構成も大いに手がかりにして試行錯誤をしてきたのですが、他所から借りてきたようなフレームワークや取り組みを組み入れるよりは、現組織で実際に芽生え始めている新たな活動に名前をつけて共通のものとする方が根付きやすいということに気づきました。
現在の挑戦は、エンジニア組織の枠組みを超えて、会社全体として直面している問題に取り組むことです。ユーザーからの学びを基に価値提供のスピードを最大化するためには、これまでの開発フローの見直しなどが重要なピースになって来ると考えています。

効果的なコミュニケーションの機会づくりは意識的に

背景
Open Space Technology 形式の数ヶ月に1度の定期的集会、週次で行っている開発ノウハウ共有会、エンジニアリングマネージャーとの 1 on 1 ミーティング、日々活用するSlackでのチーム横断コミュニケーションなどを行なっています。
全体からすればチーム内のコミュニケーションが一番密なものですが、組織を横断しての情報交換の機会も大事にしてきました。

取り組みと結果
コミュニケーションは双方向の過程ですが、参加者がどのような期待を持って集まっているのかは常に明確ではありません。コミュニケーションがスムーズに進むためには、その意図を明確に設定することが重要だと考えています。テーマを定めない雑談はチーム内で日々発生していますし、成果発表などの場はエンジニア間によらず既に全社で設けられています。その間に当たるコミュニケーションをどのようにとるかという共通認識を作りやすくするよう場の位置付けや目的を少しでも明らかにしておくようにしてきました。
早いうちからこれを意識していたため、これをやらなかった世界線はなかなか想像できないのですが、普段触れにくい部屋の中の象のような話題に触れることができているので、有意義な場を用意できているのだと捉えています。

今後の挑戦
これまでコンテクストを埋めやすい同期的コミュニケーションに頼ることが多かったのですが、これをを継続しつつも、非同期コミュニケーションの比重を高めることが重要だと感じています。
組織が多様化し多くの情報をやりとりする必要がある中では、時間調整が必要でスケールしにくい同期的コミュニケーションだけでは立ち行かないシーンも多く生まれてきます。
ありていに言えばドキュメントをもっと書こうという話なのですが、今まさにどのような情報をドキュメントとして残すべきかという課題の整理から議論を始めているところです。

結び

ここに書いた内容はもちろん全て自分一人で行えたことではなく、協力をしてもらったり、ちょうどよくリードしてもらったりなど、会社にいる人一人ひとりの自主的な活動による集大成と言えるものです。
実際にバトンを渡したのちに自分抜きにトントンと進化しているものが数多くあります。

実は私自身年内いっぱいを持って atama plus を離れるのですが、様々な試行錯誤の果てに根付いたもの、思いを受け継いだ人を残すことができ、これからの一層の進化を託す安心を抱いて去ることができそうです。
私のこの4年間の学びが多くの人の学びのきっかけになればこれ幸いです。

明日はSREチームの石井さんによる、クラウドインフラ費用の削減工夫についての予定です!

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