「古い11月と新しい11月」

クラリネットは壊れていない
上手に音を出せないだけだ

いつもの窓からの景色
11月を探している

樹木の葉を見ながら
少し先の寒い季節の芝生を見ながら

あそこの道を歩くときの感触を思い出すと
昨年と同じように歩けるかなと考えてしまった

古い11月と新しい11月
いつもの窓からの景色
どちらの11月を探している

長いリードの年配の男性
愛犬に引っ張られてゆく

公園のあるあたりの曲がり角の婦人たち
気温の異状の話をしていそうだ

古い11月と新しい11月
君が思うほどには
周囲は物事を複雑に捉えていないのかもしれないよ

見える景色は見えるままに
鳴きたい心は鳴きたい心のままに

クラリネットは壊れていない
上手に音を出せないだけだ

#叙景の頃合いを君にも知ってもらいたくて3