蒼蘭訣感想諸々(ネタバレあり)

WOWOWオンラインで蒼蘭訣を見終わって、今、盛大なロスの真っ最中なので、色々と気づいたこと、感じたことを綴っていこうと思う。

*衣装、小物、背景とかがゴージャス、CGも良い。何より魔王様初め美形な登場人物ばかりで目の保養。

*36話と中国ドラマにしては短いので、話のテンポが良い。中弛みせず、一気に観られる。

*中国ファンタジー版ロミジュリだが、命をかけた恋、なんて現代劇では重すぎるテーマもファンタジーなので違和感なく観ていられる。

*強い魔王に弱いヒロインが一方的に守ってもらうのではなく、互いが互いのために命を捨てる自己犠牲、献身の対等な関係。とはいえ、最初は威張ってた魔王が、最後には下僕のように甲斐甲斐しくヒロインに尽くす変身ぶり。男性の愛が女性の愛より強い方が(少なくとも私は)満足。ドラマ全体を見ても、小蘭花の東方青蒼への愛には理性の歯止めがあるが、東方青蒼は小蘭花にhead over heels。元々感情豊かな小蘭花は青蒼への愛は自分の心に後から入ってきたものだが、そもそも感情を欠いていた青蒼は、感情を取り戻す過程で、空白の心が一気に小蘭花色に染まってしまったのだから。彼の心イコール小蘭花への愛なのだ。

*なんせファンタジーだから突っ込みどころを探すとキリがない。敵陣地にいつでもワープできるなら、敵の寝首かけるじゃん、とか、主人公達が地獄の苦しみを経て愛を深めるのだが、現実にそんなに苦しんだら心身ともにボロボロで老けてしまうのだろうが、2人は若く美しいままだ、とか、3万年の歳月の中で子供は成人するが、一旦成人した大人は若さを保ったままで老化しないとか… でもいいのだ、ファンタジーなら全てが許される。視聴者が観たいのは非日常豪華絢爛ご都合主義大いに結構の世界なのだ

*シリアスばかりだと疲れるが、コミカルなパートが随所に挟み込まれていて、緩急つけていた。男女逆転劇や別の生を生きる設定で同じ俳優が違う人格を演じるのが新鮮だった。陳情令で酔っ払った藍湛(普段は自他共に厳格)が鳥泥棒をしようとするシーンがあるが、蒼蘭訣でも、優等生戦神の長珩が人間界での歴刧中は博打付きのボンボン息子だったのがおかしかった。品行方正な人物は実は心を抑圧していて、それが何かのきっかけで解放されるとはじけてしまう、ということだろう。

*金庸(まだ2作品しか読んでいない素人なのだが)の「笑傲江湖」でもあった、敵同士の合奏で慰霊をする場面が、蒼蘭訣では東方青蒼と長珩の合奏で再現されていた。金庸の作品は、自分等は正義、敵は邪悪という思い込みが正されるものが多いが、この蒼蘭訣も、陳情令もその金庸のテーマを引き継いでいると思う。

*立場を超えて平和な世界を作るのに大事なのは愛、というラストは、宇宙戦艦ヤマトを思い起こさせた。まあ、普遍的なテーマだから作者がヤマトから影響されたわけでもないだろうが。

*一旦死んで蘇る話はかつて米ドラマBuffyで観た。闇の勢力(だったっけ)との戦いで命を落としたBuffyが、でも、世界にはあなたが必要なの、と強引に墓場から起こされるのだが、生き返ったことへの強烈な違和感を訴えていた。

…あの世は平和で、静かだったのに、何で呼び戻したの、という感じの。

小蘭花は息山仙女として蘇る。元亀から小蘭花だった頃の喜びや悲しみは忘れる、と言われていたのに、なぜ記憶を取り戻したのだろう。再登場した時には本気で青蒼がわからなったように見えたのだが、彼に接する内に小蘭花としての記憶が蘇ってきたといたということか。

でも、息山仙女としての記憶もあるのだから、青蒼が戻ってきて結ばれるのは、小蘭花と息山仙女の融合した女性ということになるのだろう

よくよく考えてみれば、現実世界のカップルも、それぞれが年を取る内に変化していく。お互いへの愛があり、お互いの変化が受け入れられる限り、関係は続いていくのだろう。そう言えば、最後の青蒼のセリフが、「我回来了」。本座じゃなくて我を一人称に使ったという事で、ただ戻ったんじゃなく、これからは小蘭花と対等な立場だ、ということが表れていたんだなあ。日本語字幕は「戻ったぞ」だから、そこまで汲み取れ無い。

*陳情令で不夜天はロードオブザリング味があったけど、蒼蘭訣ではアイアンメイデン?が出てきた。あの中に入るってただ苦しいだけで何の意味があるのかよくわからなかった。

*日本のドラマと違うのは、とにかく年月の桁が違う。青蒼が3万年封印されていたって、長すぎる気がする。これを100で割ると日本人の感覚に合うようになる。魔王封印3万年は300年に、小蘭花が1500歳というのは15歳に、小蘭花が1000年かけて髪を伸ばしたのは10年に、死んだ魔王が戻って来る500年後は5年後、と考えるとしっくり来る。

*BGMや挿入歌も良かった。いくつかの切ない歌で二人の愛を盛り上げ、視聴者の涙腺を崩壊させ、とぼけたメロディでコミカルな場面をより可笑しくした。

*やたらキスシーンが多かったが、男女のキスなら、あれだけ多くても検閲通るんだな、と思った。男性同士なら1回でもアウトなのに。

*魔王や長珩の鎧は、防御に役立たないどころか、つけてると邪魔でしょ、と思った。長珩のはプラスチック味が半端なかった。

*何と言っても東方青蒼を演じる王鹤棣(あれ、なぜか太字に…)が素敵なのだが、忠実な部下觴闕と魔王の弟の巽風も格好よかった。

*魔王宮での女性の衣装調度や小蘭花の髪飾りがアラビアっぽかった。中華ファンタジーは、中国らしさをベースに、色々な風俗を取り入れている。

*蒼蘭訣に限らないのだが、中国ドラマって登場人物の子供時代を演じる子役が全く本人に似ていない。

*1ミリも共感できない悪者が一人もいないのが良かった。確かに非道なことをする人物はいるのだが、彼には彼の切ない理由があり、憎みきれないところがある。

*蒼蘭訣の直前に王鹤棣が出演したファンタジーはとにかく外見が酷い。胸をはだけていて、髪はボサボサ。それに比べて、蒼蘭訣では東方青蒼の服や飾り、髪型、何バージョンかあるが、全て素敵でもう美しすぎる。原作を元に脚本を書くだけで8ヶ月もかけたそうなのだが、美術や音楽も時間をかけて、世界観を作り上げていったのだろう。とにかく、総合力が高いドラマだ。

*原作は日本語に訳されていないので、原作とドラマの違いを紹介した中国語のサイトを、翻訳サイトにコピペして読んでみた。訳がわけわからない所があったのだが、原作とドラマはかなり内容が違うようだ。原作では三階は欲界、色界、無色界と呼び名も違うし觴闕は忠実な部下どころか、自分の野心のために東方青蒼を復活させただとか、もう別物に近いくらい。でも、読んでみたいので、日本語訳が出ることを願っている。

*東方青蒼は王鶴棣しか演じられないのでは、というくらいハマり役だったが、小蘭花は虞书欣じゃなくても他の可愛い系女優でも良かったかも。この方、声が吹替ではなく自声なのだが、普段の話し方もインタビューを見ているとあんな感じ。ただ、バラエティに出演している時などは、もっとセクシーな装いをしていてお姉さんっぽく見える。王鹤棣は逆に、ドラマの吹き替えが魔王らしく威厳のある声なので、自声が若々しく、インタビューではより幼く見える。東方青蒼が小蘭花を亡くして夢の世界に逃亡した場面では地の笑顔で笑っていたが、それ以外の場面では、入れ替わりの時を除いては硬い表情が多かったので、年齢より年上のように見えた。

*蒼蘭訣あらすじ、とか、蒼蘭訣感想とかで検索すると、昨年中国で放映されていた時にリアルタイムで観ていた方が多いのがわかる。私は日本語字幕かせめて英語字幕がないとダメなので、人気ドラマも字幕がつくまで待たなければならない。字幕なしでもドラマが観られるよう、中国語万年初心者から脱出しなければ。中国語学習、頑張ろう!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?