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30年を経て『河殤』を振り返る(8)

前回

さて、
②「河殤(電視片集解説詞)」三聯書店(香港) 1988
                 蘇暁康・王魯湘 総選稿  
は、香港で出版された『河殤』のシナリオである。

1988年12月に出版され、所蔵している翌1989年7月版が4刷目であるので反響の大きさがうかがえる。1989年前半は民主化運動が広がった時期である。

蘇暁康の前書、製作者で哲学者の金観涛の後書は①の日本語版にも収録されているが、監督である夏駿による製作後記は①には収録されていない。

演出上の工夫や使用した映像の出所などが内容となっているので、収録しなかったのだろうと推測される。

国家安全維持法が発効となり、もはやこのような中華人民共和国の内情を客観的に伝えたり、論評したりする書籍が刊行されることはないのだろう。

③「重评《河殇》」杭州大学出版社1989 钟华民 等
は、おそらく96~99年の現地駐在時に②と一緒に香港で購入したのであろう。香港三聯書店の値札(HK$21)が貼ってある。ちなみに本土での定価は3.8元。

②と③との紙質のあまりにも大きな差に時代を感じる。

③の刊行は1989年11月。標題紙(title page)を開けると、最初のページは江沢民の筆跡署名付きの以下文章である。

社会主义不仅要实现经济繁荣,而且要实现社会的全面进步。坚持社会主义物质文明和精神文明一起抓,是我们的基本方方针。
要积极吸收我国历史文化和外国文化中的一切优秀成果,坚决摒弃一切封建的、资本主义的文化糟粕和精神垃圾。当前在这个问题上,要特别注意反对那种全盘否定中国传统文化的民族虚无主义和崇洋媚外思想。

慶祝中華人民共和国成立四十周年大会での講話からの抜粋との補記がある。

この講話は1989年9月27日に行われたもので、ネット上に残る原稿に従えば、約1万5千語で、大きく10項目に分けられる。

上記抜粋部分は8項目にあたる《关于社会主义精神文明建设问题》の冒頭と結語の部分にあたる。

③は江沢民体制の、そして現在の体制にまで綿々として引き継がれている解釈本なのだ。

(*)写真は、2004年9月の西安曲江賓館にあった庭園

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