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上野君

 今日は暑かったので、暑かった日のことを書きます。

 マンションの駐輪場、駐車場も兼ねていて少し広いです。大家さんの子供が友達と遊んでいます。大人に見られたくて僕は、少し胸を張ってゆっくり歩きました。大人の所作で自転車を取ったあとは、手綱をひいて出口に向かいます。どうどう。
「上野君ですか?」
一目で人の親だとわかりました。牝馬にまたがっていたからです。
「こんにちは。上野です。」
僕の上野人生が始まりましたよ。出走です!

 どうやらこの親は駐輪場で遊んでいる子供の母親だとわかりました。そして上野君は一緒に遊んでいるうちの一人のお兄ちゃんのようです。それなりに話を合わせれば親はぺらぺらとよくしゃべってくれました。警戒心が全くないですね。競走馬でないから本能が衰えるのでしょうか。よほど子供の方が知らない人に対して距離をとれます。少しずつ上野君の素性もわかってきました。地元の高校に通う2年生(3歳若く見られた嬉しい!)で、サッカー部のようです。そこまで聞くとだんだん上野君が体の中に流れ込んでくる感覚がありました。芝生を駆ける颯爽とした風が吹いた感じです。

 話を聞く番から話す番へ、形勢逆転、コーナーで差をつけます!隆太(僕は「みんな」と指して話していても、勝手に自分の子供は名前で指して話してくれるので知れます)は最近、優愛ちゃん(佐々木が合うかな)と防犯ブザーを交換していること(シーブリーズじゃないんだから笑)と、貝原(本当に上野君の友達にいたらすごい)も一緒に遊んでくれた時は隆太が一番なついたことなどを話しました。ある思い出よりない思い出の方が話しやすいのは不思議なものです。自分でも褒めたいくらいすらすらとしゃべることができたので、実際の上野君もコミュニケーション能力が高いのかもしれないですね。サッカー部で長男だし。奥の子供たちは一輪車で震えながらバランスをとって立ち上がろうとしています。

 子供たちがこっちに来る気配がしたので退散することにしました。楽しい時間はあっという間です。最後に児童館の縁日に招待されたのですが、そんなに日時まではっきり言って大丈夫か不安になりました。僕に悪用する気があったらどうするつもりなのでしょう。全国の親に届いてほしい!そんなこんなで無事、上野人生を完走できました。とは言っても、僕は完走してから自転車にまたがったのでちぐはぐですね。


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