わたしの「星空」

わたしは、星空を見るのがすきだ。
どうしてだろう。

とてもとても幼いころ、
わたしは母に、それはそれはありきたりな
「星はどうしてできたの?」
という質問を投げかけた。

鮮明に覚えている。
おうちで一番大きな窓を目の前に
わたしは母に抱かれていた。
窓に手を付けて手の跡がついたときに
怒られたことがあったから
手をつけないように気をつけながら、
母も好きな星を、一緒に見ていた。
あの日、母は応えた。

「あれは全部、チリだよ。ごみクズみたいなもん。」

――かなり、ショックだった。


あの記憶を強く持ちながら、
わたしはどうしてこんなに星空がすきなのか。
月にはそんなに興味がなくて、
むしろ満月の夜は、星が見えなくて
ちょっとだけがっかりする。

なぜ星空なのか。
ちょっとだけ考えてみた。

今日までにわたしは様々な家に住んだ。
多くはないけれど、様々な地域に足を運んだ。

どこへ行っても晴れの日の夜はどうしても星を探してしまう。

今、とても星がきれいに見える場所に住んでいる。
流れ星の夜は心が躍る。
プラネタリウムで聴く、星にまつわる物語も関心があるし、
宇宙に関する真面目な、理論的な話もとても興味深い。
詳しいわけではないけれど、聴きたいと思うことたちだ。

きっとわたしは
星空をみる楽しみ方が
人それぞれだというところがとてもすきなのだ。

それは例えば、
道徳の授業の時のような、
音楽をしている時のような、
絵手紙を描いている時のような。
考え方、楽しみ方、やり方の見本はあるけれど
どんな風にあっても良い、というところが、すきなのだ。

そして、なにより、
星が見える夜空だけ
地球をとりまく本当の姿で、
地球の秘密を知ってしまったような
本当を見てしまったような気持ちになるのが、
とても、とてもすきだ。

満天の星を見ていると、
宇宙に来たような気がして、ぞくぞくする。
青空じゃなくて、普段から、
地球は真っ暗な、星が広がっている場所で、
わたしが行ったこともない場所で、
青や緑や白がマーブルになったガラス玉みたいに
佇んでいるはずなのだ。

そう思うと、わたしは
みんなが寝静まった夜にやっと、
明かりも少なくなった時間に
ちょっとだけだぞと言って、
わたしに本当の空を見せているんじゃないか。
そんな、妄想にふけるのだ。

あの星たちが、チリだろうが、
手に取って見れるものじゃなかろうが、
そんなことは関係なく、
わたしにとって
その有様は宇宙そのものなのだ。
そう思わせてくれるところがすきだ。

わたしが、
わたしが見ている星空を
「ああ、見てほしい」と思う時
それはわたしの秘め事を、
本当の気持ちを、見てほしいような
そういう気持ちに、とても似ている。

母の、星がすきな理由を
今日初めて、聴いてみたいと思った。

そんな日曜日。

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