![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/74836677/rectangle_large_type_2_2a5deec2b15c9cfccffd3acc60e93d51.jpeg?width=1200)
はる、なつ、あき、ふゆ、そしてまたはる(17)
恋人が病気になったのは二人で暮らし始めてから一年が経ったころからだったと思う。
まず症状としては仕事に行くことができなくなった。続いて家事をすることができなくなった。おしまいにはベッドで寝ていること以外何もできなくなった。一日に一回しか食事をとることがなくなって、その一回の食事をするのも非常に大変そうだった。私は仕事をしながら、毎日恋人の介護(介護という以外に上手い言い方が思いつかない)をすることになった。
医者は恋人のことを「重度の病」だと言った。恋人はその診断を聞いている間も抜け殻のような顔をしていた。ほとんど何もわかっていないみたいだった。私は「重度の病」と繰り返した。
「しばらく仕事や家事を休んでゆっくりとすることです」と医者は言った。
やがて恋人は勤め先を辞めた。収入は私のわずかなアルバイト代だけになった。私はアルバイトをもう一つすることにした。そうしなければ家賃や公共料金を払っていくことができなかったからだ。そうして私はだんだんと詩や小説を書かなくなった。もちろん恋人も短歌を書かなくなった。
私たちは日々の生活を何とか営むだけで精一杯だった。
(続)
(目次)
thx :)