仕事に行けなくなった話

 仕事に行けなくなった(再び)。

 正社員として働いていたときも、フリーターになってからも、私はあらかじめ運命づけられていたかのように仕事に行けなくなる。

 働き始めてからしばらくは「今度こそ」と思っているのに、やがて行けなくなる日がやって来る。そして宿命づけられたかのように何回か休み続け、休むことが癖のようになって何もできなくなり、最終的には仕事を辞めなければいけなくなる。

 勤務先の労働環境が悪いわけではない。人間関係に悩みがあるわけでもない。給料は決して高くはないけれど低いわけではない。それなのに私はいつでも決まって仕事に行けなくなる。 

 ときどき、私は自分のことをまともな人間ではないのではないかと疑いたくなる。例えば私はヘンリー・ダーガーのような変人に憧れているけれど、基本的には自分のことはまともな人間だと信じていた。少なくとも世間でサヴァイヴしていけるくらいにはまともだと思っていた。奇人変人に憧れているだけの平凡な人間だと思っていた。

 しかし、恐らくそれは間違っていたのだ。

 (差別用語をあえて使うけれど)私はいわゆる片輪なのだ。私は現実的にもう何年も精神疾患を患っていて、社会の周縁みたいなところでずっと生活している。精神病になる前はこうではなかった。小中高大と卒業し、中小企業ではあるにせよ正社員として就職し、この日本という国において「正しい」とされている階段を上ってきたつもりだった。それが精神病になった瞬間に一気に階段を転げ落ちた。そして私は「間違った」存在になってしまったのだ。

 日本というこの国では一度「ゲーム」から脱落してしまったら、再び参加資格を得るのは簡単なことではない。「ゲーム」の条件ははっきり言って不平等きわまりないし、生まれ育ちの違いによって初期装備だって異なる。そして「ゲーム」から脱落してしまった人々は、例えば高架下の安居酒屋で酒を飲み、煙草を吸いながら、「政府が全て悪い」と口を揃えて言うのだ。

 まともがわからない(本当に)。



thx :)