![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/73537837/rectangle_large_type_2_f16e78208dc261a49f868fb67784fb53.jpeg?width=1200)
はる、なつ、あき、ふゆ、そしてまたはる(15)
失踪から一週間経ったころ恋人は突然帰ってきた。一週間に渡る失踪自体なかったことのように、恋人は「ただいま」と言った。私は「おかえり」と言った。格好を見る限りでは仕事先からそのまま帰ってきたようだった。私は恋人がどこにいたかだとか、一週間どうやって生活していたかだとか、そういうことを聞きたくてたまらなかった。しかし、どのように話しだしたらいいのかがわからなくて、私は黙っていた。恋人は部屋着に着替えると、私のもとにやってきてハグをした。私もハグをし返した。
「友だちのところに泊めてもらっていた」と恋人は言った。
「うん」と私は言った。
「ごめんね」
「いや、こちらの方こそ悪かった」
我々はそれからウーバーイーツでピザを注文して、ネット配信のコメディ番組を見ながら平らげた(それは我々のお気に入りのアメリカのコメディ・シリーズだった)。二人とも涙を流すほど大笑いして、手を叩いた。
もっともひどい我々の喧嘩の一つはこのようにして幕を閉じた。
(続)
(目次)
thx :)