【前代未聞の2000 in 1】
今年の『SFマガジン』を彩ったのは、連続特集「ハヤカワSF文庫総解説」。怒涛の物量攻撃で、読み手も書き手も阿鼻叫喚だった。もちろん、編集部はもっと大変だったろう。
そんな連続特集が1冊の本に! 2000冊のSF/ファンタジーを紹介するブックガイドだ!
それが『ハヤカワ文庫SF総解説2000』である。
わたしが担当したのは……
問答無用のヒロイック・アンチヒーロー、黒い剣を持った白い狼。ファンタジー界のジョニー・ウィンターにして、ヘヴィメタル界で最も愛される最後の皇帝『エルリック』シリーズ。
古き良きユートピアとしての東アフリカを宇宙に求めたキクユ民族長老の闘争と挫折の物語、『キリンヤガ』。
ヌード写真でおなじみ、黒人ゲイSFの巨匠サミュエル・R・ディレイニー先生の宇宙海賊大作『ノヴァ』。
コミカルな装いの中にメッセージを込めた『銀河遊撃隊』。
ヴードゥー教徒&ラスタファリアンがアステカ帝国と激突する異星カリビアン/メソアメリカSF『クリスタル・レイン 』。
近未来、再び世界をリードする西アジア・イスラム圏の都市を舞台にしたサイバーパンク・ハードボイルド『重力が衰えるとき』。
わたしが敬愛するアーシュラ・K・ル・グインの短編集『内海の漁師』(タイトルは「ないかいのすなどり」と読む。浦島太郎のこと)。
『ゲーム・オブ・スローンズ』のG・R・R・マーティンと仲間達が描く、スペイン語の罵詈雑言が飛び交う異星逃走劇『ハンターズ・ラン』。
オーラの強さを買われてスカウトされ、いろいろな星に霊魂だけ派遣されては現地の女性と懇ろになる007風の『クラスター・サーガ』シリーズ。
文化人類学系SFの最高峰の一つ、『色褪せた太陽』シリーズ。
ロンドンが誇る共産系ダーク・ファンタジー作家チャイナ・ミエヴィルの『ペルディード・ストリート・ステーション』……他!
でも、一番うまく評することができた(いや、そんなに大したもんじゃないけど)と思ってるのは、珍品中の珍品、『炎の塔の剣士』なんだ。『コナン・ザ・グレート』のキリスト教徒版パチもんみたいな、ドタバタ筋肉ファンタジー。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?