全日本フィギュアという大会の意義
全日本フィギュアは、その年の日本一を決める大会である。その結果は、その後に開催される世界選手権や四大陸選手権の代表に反映される。冬季オリンピックのある年には、もちろんオリンピック代表が懸かることになる。
しかし、全日本フィギュアに出場すること、フリーに進むこと、最終グループに残ることなど、選手たちは、それぞれに独自の目標をもってこの大会に挑むのだ。大学4年生は、全日本フィギュアが引退試合となる選手もいる。これを境に、競技者に別れを告げ、コーチとして、多くは一般企業などに就職していく。
時に、世界の舞台で活躍する選手たちに目が行きがちになってしまうが、世界に出ていくための通過点としての全日本フィギュアではなく、全日本フィギュアそのものが晴れ舞台という選手のほうが多いと言えるかもしれない。全日本フィギュアは、日本のフィギュア選手たちの憧れの舞台といえるだろう。
昨年の全日本フィギュアで最も心奪われたのは、早稲田大学の石塚玲雄選手の演技だった。それは、私だけではなかったようだ。滑走順にもかかわらず、多くの観客が、その演技にスタンディングオベーションを贈っていたのがその証拠である。
最初から最後まで、本当に楽しそうに、その楽しさがだんだんと見ている者に伝播していくような、マジックのような演技だった。この演技を「奇跡」というなら、努力を積み重ねてきた人のところに「奇跡」は舞い降りるのかもしれない。
石塚君の「雨に唄えば」と友野一希選手の「ラ・ラ・ランド」を何度繰り返し観たかわからない。あんなに素敵なプログラムに出会えて、本当に幸せだ。
石塚君は、卒業後はコーチの道に進むようだが、きっと素晴らしい選手を育ててくれるに違いない。
この2年間はコロナ禍という難しい環境の中で、思うような活動や練習ができなかっただろう。学生が、のびのびと青春を謳歌できるような環境でもなかった。そんな環境であっても、大学で主将として部員をまとめてきた経験は、きっと、今後の人生に生かされていくのでしょう。そして、キスクラの選手の横であの笑顔を見つける日は、そう遠くないだろう。
また、他の大学スポーツの選手たちも、大学卒業を機に、競技生活からも卒業するという学生たちは多いだろう。
良いことも良くないと思えることもそれらの経験は、今の自分を作っている。今後の自分も、様々な経験が基になって作られる。マイナスの経験もプラスに変える力があると信じている。
ぜひぜひ、新しい世界に力強く羽ばたいていって欲しいと思う。
「地球ドキュメント」でカナダのシニアの女性たちがフィギュアスケートに打ち込んでいるドキュメンタリー番組を見た。年齢を重ねてもあんな風にフィギュアスケートを楽しんでいるのは素敵だと思った。観るだけでなく、リアルにスケートを楽しむ喜びをたくさんの人に体験して欲しいなぁ。あんな屋内スケート場が身近にあったらなぁ。
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