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ものを買う勇気(エッセイ#2)


#創作大賞2023 #エッセイ部門

財布の紐の固さで相撲をとれば、私は小結ぐらいにはなれるのではないかと思っている。

かつての活動拠点である「ボカロP」グループの中では圧倒的だろう。

ボカロPという趣味を持つと、やたらとお金がかかる仕組みになっていて、「あれを買った」「これをサブスクライブした」「それを外注した」というつぶやきが雨後のたけのこのように周りからニョキニョキと出てくる。

音源、プラグイン、イラスト、動画……とかくにあの世界は住みにくい。

私はしっかり者ではないが、万年金欠なので、自然と節度が備わっている。

ボカロPとして使ったお金は「初音ミク」を買うときに使った一万六千円あまり。以上。

音に関しては、無料のプラグインや音源で済ませ、イラストは知り合いにゴリ押しで(無料で)描いてもらい、質の悪い動画を自分で作っている。

そのうえ、歌い手甲子園のイベントでは、一万八千円程度のオーディオインターフェイスを抽選で見事当てたので、活動実績としてはプラスである(この計算は合ってますか?)。

このように、質実剛健、質素倹約をこねて焼いて人型にしたような私だが、不思議なことに嫁の貰い手は現れないし、関係を迫ってくる漢もいない。なんなら好意を寄せられることすらない。寄ってくるのはTwitterの文化であるエロDMだけ。

もしかすると、あまりに固いとよくないのかもしれないと思いたち、緊結していた紐を緩め、買い物をすることにした。

というのは真っ赤な噓で、ギターの録り音にどうも納得がいかないので、アンプシミュレータを買うことにしたのだ。

もちろん、DTMをするためだけに買うつもりは微塵もない。実際演奏するときにも使えるから決断した。

機種を詳しく書いたところで私もみなさんも面白くないので、そこは省略するが、評判も上々の一品である。新品を買う余裕なんかはないので、メルカリやハードオフ等、中古市場を巡り巡ってどうにか安いものを探した。それでも八千円もした。私の家庭教師バイトが三四回分吹っ飛ぶ値段だ。購入した瞬間、タダ働きをさせられたように勘違いし、涙まで出た。私のプラスだったポートフォリオに赤字が灯る。

今、まさに、実は、私を泣かせたそいつを試し運転させている最中である。

エッセイか試運転かどっちかに集中しろよ、と思われそうだが、ちゃんと理由がある。

説明書がついてなかったので、PCでPDFをダウンロードし、モニタをみながらベタベタと触っている状態なのだ。

あまりに複雑だったため、「ええいくそう! PC開いてんだから、noteでも書こう!」と思い、今に至る。

改めて書いてみると、あまり理由になってないように私ですら思う。なにやってんだ、私よ。

そこは置いておいて、アンプシミュレータ君のことです。
結論にはあまりに早いが、あえて言い切ろう。良い。

良いのだ。

ソフトウェアのアンプシミュレータの悪さが際立っちゃうじゃあないか。
あいつらはPCパワーも食うし、音も良くない。ぷーくすくす。
こいつはどうだ。
スタンドアロンだし、素敵な音色だ。こんちきしょう。

バンドでも使えるんだし、こんなことならもっと早く買うべきだった……。

そんなことを思いつつ、そろそろ試運転のほうに戻ります。


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