#春猿火 2nd Album『心獣』について考える【ディスクレビュー】(あと、ミニライブについても少しだけ)
約6200字
バーチャルラップシンガー・春猿火が二年ぶりに発売した
2nd Album『心獣』について、です
あと、ミニライブ BEAST OF THE HEART -不可解空間-についても少しだけ書きます
新体制になって初のアルバムで相当に気合の入ったこの一枚
CDという作品として向き合った時、どのような味わいがあるのか探っていきましょう
ちなみにCDには、春猿火によって描かれたPoem(←初公開!)、セルフライナーノーツがついてきます(後その他諸々、アクキーとか缶バとかも)
Poemめちゃいいし、セルフライナーノーツが一番アツいです
正味、これ見るためだけに買ってるまである
このnote読んだら次はセルフライナーノーツ読んでね(絶対に)
2nd Album『心獣』について
01 台風の子
この手ちぎれても絶対離さないよ━━━━━
新生春猿火としての第一歩はやっぱりこの曲
1st Album「心眼」に収録されている台風の眼から続く台風シリーズの一曲
「台風がやんだら必ず晴れる」をメインテーマに辛さ悲しさ悔しさを吹き飛ばし洗い流す力強い曲
”台風の眼”の『問題ないときに泣けばいい』とスタンスは変わらず、
『涙の後は必ず晴れるから』という励ましが印象的
泣くなと気張らせるんじゃなくて、泣いてもいい、その涙を無駄にしないという優しさと決意に溢れた歌
02 自由までの距離
辛いなら共に手を上げてこう!
YouTubeアニメ「テイコウペンギン」コラボ曲
オープニングテーマとして2022年11月~2024年2月まで使用されました
社会の理不尽さ、不条理を(ぶん殴って)ぶっ飛ばそうぜ、とでも言いたげな一曲(手をあげるってそういう…)
神椿では珍しいユーモア溢れる歌詞とロックなサウンドが独特のカッコよさを醸し出しています
ユーモア溢れる歌詞だけど社会人は共感もできるしラスサビはちゃんとカッコいいという流石のたかやん大先生ですこの歌詞を笑っていられるのは学生のうちなんだからな…😠
7文字だしじょちょさんカバーも期待できる!?
(歌い方的に結構合うと思うんだけどなぁ)
小ネタ
pixiv大百科の”自由までの距離”のページには
ってあるんだけど、実際
聴いてみると、まぁ言われてみればそんな感じもするけど、ホント…?って僕は思いました←
音感が終わってるからあんまよくわかんなかったけど
『勿体ないじゃん~無礼講』のとこのテンポが同じらしい
みなさんは気づきましたか?
03 百花繚乱
明日へ羽ばたいて行け!
この中では一番古い曲かな?
春猿火といえばこの曲という人も多そうな、大舞台で何度も披露された曲
和ロックで空間を一気に華やかにする様は領域展開と言わんばかり
纏 其の参 落葉が一番似合う曲でもあります
百花繚乱とは
という意味で、落ち葉が舞う中で歌う姿が連想されます
落ち葉は枯れた、力尽きたイメージを持つ人もいるかもしれませんが
枝から解き放たれて風に乗って自由に舞う姿は、羽ばたいていると捉えられるかもしれないですね
04 迷人
『愛されたい、とは滑稽な回復手段さ』
文字通り迷う人という意味、めいじん=maze in=迷路の中という意味をかけた一曲
迷宮を踏み進むような不穏さと、踏み出す勇気のような力強さを感じます
luv luv luv…のところがDECO*27さんを始めとするボカロミュージック的な一面もあると思いました(煮ル果実さんもボカロPさんなので当然ですが)
春猿火の治安の悪い感じをファンタジー方面に伸ばしたような印象です
クラップ、してぇなぁ~👏👏
05 Interlude #1 -ケダモノ-
この心の ケダモノ…
迷人と声帯学の繋ぎを意識しているのか、この2曲の要素を混ぜて。
不穏さをメインに抽出した雰囲気です
より深く、深くなっていく、後戻りできないような妖しさは
シャーマニズム(無印)のイントロダクションの映像や九紋龍のお披露目映像のようなテイストも持ち合わせています
囁き声が素晴らしい。声質最強なので
06 声帯学
私を許せるのも罰せるのも 私だから tell me no more
這い寄る悪意のような不穏さを感じる一曲
『いつから目指してた平均以上
誰であれシャーデンフロイデ
撮ればレントゲンはしゃれこうべ』のところはリズム、韻の踏み方だけでなく歌詞もお気に入りのところです
「シャーデンフロイデ」とは、他人を引きずり下ろしたときに生まれる快感のこと。
「しゃれこうべ」とは、晒され頭(こうべ)、野ざらしになった頭蓋骨のこと。
治安の悪さとか、ドープな雰囲気とは違って、自分自身の黒さを醸してしてる一風変わった曲だと思いました
07 フリーフォール
背伸びなんてしませんから
遊園地のフリーフォールのことを歌った曲だそう
個人的には、夜の廃遊園地の夢みたいな情景を思い浮かべました
現実で上手くいっていない子が見る悪夢のような感じですね
落ちる、というよりは堕ちる、みたいな感じもあります
「一人ごちている」とは聞く相手がいないのに、自分だけで物をいうこと。
パードゥン パードゥン パードゥン ドゥンドゥンの耳に残る率の高さが異常
08 潜む自信
昨日の僕らよりも熱く 生きれてりゃいいから!
シングルでもリリースされている潜む自信
数学の教科書のようなジャケットが印象的です
歌詞としては、あと一歩!を応援してくれているかのような印象があります
春ちゃんは自分とともに誰かを応援する歌を歌うのが本当に上手いなと思わされます
”テラ”と”中間地点”の間のような、たかやん先生からのメッセージも込められているようにも思いました
自信はきっと自分自身の中にある!そんなメッセージを感じます
09 daydream
───I'm looking for it.
ふわふわ浮遊感がエモいと言われる二度寝ソング
現地ライブで全部終わって明るくなって退場のときとか、
野外フェスの夕方に聴きたい曲ランキング1位
英語多めのリリックと囁くような優しい歌い方が特徴的です
『最後一口色移り』という歌詞が春ちゃんの特徴的なリップを思わせ、セクシーですね
CDの流れとしても、緩急の”緩”を担ういい仕事をしている楽曲です
10 Interlude #2 -eventide-
ねぇ、ここにずっと居るんだよ─── 『私』
こちらもdaydreamに引き続き、語りかけるように囁いています
途中のスマホの入力音がASMRみたいで気持ちいい
寂しさや無常感、学校から夕陽に黄昏れながら悩むような雰囲気を感じました
春ちゃんのポエトリーは比較的カッコよく読むことが多いですが
今回は素直さ、素朴さがあり、また素敵な一面を見せています
個人的に、心獣の中でも特にお気に入りです
11 ディストーション
3秒のLimited!
おしゃれさの中に葛藤があって、それに打ち勝とうとする強さが共存する曲です
個人的には一番神椿弐番街っぽい曲だな~と思っています
ディストーションとは、ゆがみやひずみのこと。
『単純じゃないプライド 曝け出す甘い完全じゃない
見せかけの才「じゃねぇよ!」
叫ぶエモーション!』のとこがめちゃくちゃ好きです
春ちゃんの歌声で特徴的なのは、語尾の”跳ね”だと思いますがこの曲ではより顕著です
筆文字のような力強い跳ねは聴いた人を掴んで離さないホールド力を持っています
この語尾跳ねを”癖”じゃなくて、制御可能な”武器”として扱える歌唱力、
誇らしくないんですか????
12 friction
理想現実 friction 焦燥 なんで?
CDのリリースより先に”friction(Remix)feat. 梓川”が代々木での現象IIで披露されたり、MVが公開されましたが、こちらはソロバージョン
デュエットVer.よりもソロの方が春ちゃん自身の歌い方は激しいです。
DaydreamやディストーションがEDならこちらはOPといった趣きで
パワフルなカッコ良さを持つ一曲です
frictionとは、摩擦という意味。
デュエットVer.が二人の歌声での摩擦熱ならソロバージョンは大気圏突入でしょうか
仕事とかでミスした時、『理想現実 friction 焦燥 なんで?』って頭の中で歌うとなんか笑えて落ち着くのでオススメです。恐縮です(?)
13 中間地点
「「拝啓、貴方へ」」
今までを振り返りながら、大切なたかやん先生と別々の道を踏み出そうとする曲
今までたかやん先生が書いてくれた曲名が歌詞の中に散りばめられており、これまでの歩みを思い出させます
お別れしたのはたかやん先生だけじゃなくて、色んな人と出会って、別れたけども、この歌を歌う度、きっと何度でもその人達を鮮明に思い出せる
そんな思い出の箱のような楽曲になっています
感情がダイレクトに乗ったラスサビは何度聴いても目頭が熱くなります
中間地点を超えた先の景色に何が待ち受けているか、楽しみにしているのはきっと僕らだけじゃないはず
14 Wind walker
もしも貴方が嵐の中で迷った時は 僕も届けるよ
夢を、希望を、未来を、 そしてこの歌を───
治安の悪さとポップな可愛さ、そして誰かの背中を押す力強さ
春猿火の持つ良さ全てを持った彼女らしさ満載の一曲
これ歌えるのがまず凄いってくらい歌うのが難しそうな曲で、
まず、文字数がめちゃくちゃ多くて1000文字OVERなんですよね
(例えばfrictionだと650字くらい)
ポエトリーの歌詞も歌い方もめちゃくちゃ良くて個人的心獣で一番好きな曲です
嵐のようにコロコロと変わる変幻自在の歌声は聴く人を絶対に飽きさせない面白さと歌唱力の高さが伝わります
また、中間地点よりも後にWind walkerを持ってきた意図には、
明るく終わりたい、ループしたときに流れとして違和感なく再生できるということがあり、CDを作品として良いモノにしようとする意志が伺えます
まとめ
台風の子、自由までの距離、百花繚乱で駆け抜けて
迷人、声帯学で迷い込み、フリーフォールで落っこちてしまう
その先で潜む自信を見つけてdaydreamで立ち止まって
ディストーション(=歪み)やfriction(=摩擦)、
中間地点(=別れ)と向き合い、
Wind walker でまた走り出す
彼女が自分自身と真っ向から向き合った一枚になっていると思いました
まずは一度こちらから聴いてみては如何でしょうか
ミニライブについて
ということで、見事に心獣 楽曲をやりきったミニライブでした
印象的なのはミニライブシリーズ恒例の美麗ステージですね
百花繚乱や台風の子のMVを作ってくださった玲架さんワールドをいかに再現するか、そこにスタッフさん達の総力が注ぎ込まれているように思いました
また、ライブで歌うのは初披露の曲もあり、新宿でのシャーマニズム3の期待に拍車をかけるものでした(特にWind walkerとかね)
シャーマニズム3で心獣の曲やります←わかる
その前のミニライブで全部やります←?????????????
もしかして、シャーマニズム3って新曲めちゃくちゃ来たりしますか???????
簡単に予想できることはしない、観測者に隙は与えないという意志を感じます
少しの不安とそれを遥かに上回る期待で楽しみです
ということで、僭越ながらディスクレビューというものに挑戦してみました
前回のシャーマニズム2の感想では視覚的な情報の割合が多くて、
反省というか、もっと音楽について向き合いたいと思って今回やってみました
なるべくMVの話じゃなくて音楽から受けた感想を書くことを意識しました
これからも多角的な向き合い方をしていきたいです
数日後に控えたシャーマニズム3、めちゃくちゃ楽しみだ!!!!!!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました
それでは、また。
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