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0107「社名変更どころではない」

年末から続いている家の深刻な問題がまだくすぶっている。やっと仮住まい生活を終えて本住まいに戻ってきたと思ったのに、夫婦ともども絶望に泣く。嫁は、「もう日本に帰りたい」と言うが、その気持ちはわかる。この国というか、日本を一歩外に出れば人間なんてそういう環境で普通に暮らしているわけでどちらかというと完全に日本が異常なのだが、それにしてもいわゆるQOL(Quality of life)というやつが低い。精神的にやられる。

昨夜は、友人を連れて、Maria Schneider Orchestraのライブに出かけた。2セットフルで参加した。どうやら2枚組の新譜をレコーディングするらしく、ファーストもセカンドも新曲づくしだった。なんなら各曲レビューとかできてしまうが、去年くらいからマリアさんは、Googleデータ帝国的な話やシンギュラリティ怖いよね的な話をやたらMCでするようになっていて、そういう系の話をテーマにした曲が少なくとも3曲ある。で、実際2枚組の1枚目は、そっち系のデータとかシンギュラリティとか嫌だよね的なアルバムになり、2枚目は禅とか精神世界をテーマにした曲を集めたものになるらしい。2枚目に入る予定の「Blue Bird」という曲は、「Pretty Road」を彷彿とさせる名曲というか、マリア・シュナイダー業界的にはシングルカットされるべき、あの、映像感のある感動的なフレーズで構成された曲だ。2枚目には京都の三千院をモチーフにした「sanzenin」という曲も入る。たぶん。

そもそもお正月にライブなんかやらないような気がするし、上記みたいな話は、すごくごく一部のファンにとっては鼻血が出るような情報なのではないかと思う。これ読んでいる人は絶対に大丈夫だけど。

そしてセカンドステージではそれ以上に変わった体験をした。最近、Maria Schneider Orchestraには、20年前のファーストアルバムに参加していたギターのBen Monderが戻ってきていて、往年の激しい曲でイングヴェイ・マルムスティーンみたいな速弾きソロを展開するようになっている。ここ数年、彼がいなかったので演奏されなかった曲も結構あって、その筆頭がファーストアルバムである「Evanescence」の1曲目、つまり、多くの人が最初に聴いたMaria Schneiderの曲かもしれない「Wyrgly」。聴くとわかるのだが、ギターソロはかなりヘビーメタルなので、ジャズ青年だった当時の私は戸惑った。当時サークルで、隣の軽音サークルのメタル系のギターの人連れてきて演奏したなあ。

で、セカンドステージでどうだったのかというと、ファーストステージから参加していたので、ウェイターさんに「良い席に移動させてよー」なんて言っておいた結果、なんと、ギタリストのBen Monderの真ん前に移動させてくれたと思いきや、真ん前ではなく、ビッグバンドなんでステージに人が多すぎて客席まで食い込んでいて、むしろ「真横」だった。目の前の40cmくらいのところでBen Monderが弾いていて、アンプを通さない弦の生音が聴こえるすごい位置だ。というか、真横なので、バンド全体の音が聴こえないというか、むしろ「バンドの中で曲を聴いている状態」だった。何しろ、Ben Monderの譜面が完全に見えるので、重ね順でセットリストが全部わかる。

一番すごいのはこれだ。Maria Schneider Orchestraはオーケストラなので、コンダクター(指揮者)であるMaria Schneider本人は常に客席に背を向けている。つまり、Maria Schneiderが指揮をしている正面の姿は、通常ライブで観ることは不可能なのだが、昨夜の私は、Ben Monderの真横というかバンドの中にいるので、完全に指揮中のマリアさんが見えたのだ。これは本当にやばい。意外に表情が笑ってないのとか結構新鮮だった。

で、話は戻るが、セカンドステージの1曲目は上述の「Wyrgly」。Ben Monderの速弾きが40cm先の目の前で展開された。なんなら血迷ってBen Monderさんのエフェクターを自由に踏める位置にいた。昨夜の私はあのソロのディストーションを切っちゃうことすらできた。メンバー以外で、本物のMaria Schneider Orchestraの「Wyrgly」を「バンド内の位置」から観た人なんてほとんどいないはずだ。全然伝わらないのはわかっているが、書かざるを得ない。

青春時代から毎週3回は欠かさず聴いてきた名曲の本人の演奏を、20年後に40cmの距離で体験するということがわかりますか、という話だ。
ヘタしたら、まんが道で手塚先生を初めて訪ねたときよりやばい。

思わずちょっとだけ写真を取らせて頂いたが、この位置だ。左のでかい人がBen Monderだ。終わった後にスタンディングオベーションしたら、完全にメンバーの1人になっていた。

友人が風邪でやばいので、すぐに帰ってきたら、PARTYからwhateverへの社名変更の件が発表になっていた。そういえば私も公式な声明を用意していなかったのでガーっと書いて公開した。ちゃんと書いたが、まあ実際、手塚先生の後なわけであって、心中は社名変更どころではなかった。

あと、半年お待たせしたFINDERSの連載記事が公開された。先月深圳に行ったときに感じた、普通とはちょっと違う切り口の深圳レポートなので、こんな趣味日記読んでいる暇があったらこちらをお読みください。この文章は久しぶりに嫁に褒められたし、読まれたいです。


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