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2023

みんな何かに酔っ払ってねぇと やってらんなかったんだな… みんな…何かの奴隷だった…

『進撃の巨人』



アーマードコアの年でしたね。
毎年やってるこのnote、一応映画のランキングがメインなんですが、まあアーマードコアの年でした。しょうがないじゃん。

今もサントラ聞いてます。『Contact With You』『Steel Haze(Rustesd Pride)』あたりがお気に入り。今回のはFreaquencyっぽさが抜けて世界観に合わせた感が強く、それはそれで良しと思いつつ、少々寂しさを感じつつ、だからといって『Stargazer』が好きかと言われれば実はそんなこともないオタク心。
この想い。星野康太さん、届いていますか。

ここ数年、割とすぐにサントラがサブスクで配信しますよね。サントラスキーとしてはかなり嬉しいんですが、その方が儲かるって判断なんすかね?それとも風潮的にそうなってるからそうしたほうがよかんべ、って感じでなんでしょうか。ほっといたらYouTubeにアップロードされたみんな聞いちゃうから渋らず出した方がいいってのもありそう。
うん、そうだよ。渋らない方がいい。
聞いてるか第三開発事業部。暁月のフィナーレを開放しなさい。
FF16?うるさいんだよ。

翻って映画の話。
例年のごとく「なんだか今年はいい映画が多いな」という感覚を抱きつつ、それ以上に自分の感性の変化が大きかった気がします。感性の変化というか、感受性が繊細になった?
要は何回か映画で泣いたって話で。

それ自体は泣ける映画がたくさんあったということであり、素晴らしいことに違いないんですが…。泣くの?俺が?自分が想像している自分と実際にギャップが出てきました。年取ると涙腺がって話も聞くけど、若造もいいとこですけど。森久保ですけど。

ともあれ、より楽しめるようになったことには違いないので、今後一体どんな映画で泣くようになるのかが楽しみです。

はい、そんな感じで。
ランキングにゴゥ。








第10位:『グラディエーター』

(画像引用元)

80代も後半に差し掛かろうというのに、まだまだ溌剌と毒を吐き続ける我らがサー・リドリー・スコット。SF好きを自認する身としては、この人の『ブレードランナー』にハマれなかった過去が心にちょっとした影を落としていたのですが、この映画が払拭してくれました。ていうか度肝抜かれました。
世界観を見せるのであれば、世界を構築してしまえばいいじゃない。
シネマスコープに収められた圧倒的な物質の密度の前には"狂気じみている"などという感想すらあまりにも貧しいと言えましょう。押井守は『GHOST IN THE SHELL』においてサイバーパンク的異世界を情報量の飽和で表現しましたが、この映画は古代ローマという異世界を物量で表現しました。
僕が知っている中で、もっとも濃いと言える映画です。
『ナポレオン』も…まぁ、良かったんじゃないでしょうか。



第9位:『君たちはどう生きるか』

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長いことジブリを牽引してきた彼は、口癖のように「子供たちのために」と言ってきたそうです。その言葉に嘘はないのだろうというのは、多くの人は経験的にわかることでしょう。
その彼が初めて"自分"を明確に出した作品がこれでした。『風立ちぬ』以前の作品のように趣味を描き出すのではなく、気持ちを差し出した。
もちろんこれはつくりものなので、作者の心なんて存在があやふやなものがどれだけ入り込んでいるかなんてわかったものではないはず。けれど、主題歌の『地球儀』を聞くたびに、どうも切ない気持ちになってしまうのが僕にとっては事実で。
「千と千尋」のエンドクレジットでは、人のいない彼岸の風景が描写されていました。この映画はその一歩手前。それが受容なのか、抵抗なのか、はたまたどこまでも混乱なのか。
きっとひとりひとりの目に映るものは違うのでしょう。



第8位:『ノスタルジア』

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タイムパフォーマンスって言葉が最近生まれましたが、この言葉を積極的に使うタイプの人がこの映画を見たら気絶してしまうんじゃないでしょうか。そうでなくたってプラネタリウムばりの睡眠導入力を誇ってますけど。
タルいと言ってしまえばそれまでなのですが、そのタルさが心地いい。川のせせらぎに身を任せるがごとく、画面に耽溺する系の映画です。
トリップ感的には『ミッドサマー』、テイスト的には『LAMB』が近いかもしれない。でもそれらよりだいぶ空虚で荒涼としてます。これがロシアか。
『天使のたまご』よりも長いけど、こっちの方が良かったかも。やっぱり実写の情報量って大事っていうことなんですかね。
こういう映画の良さって言語化できないんで、人になかなか薦められないところはあります。ていうかこれ薦めるのなんかスノッブっぽくて嫌だ。



第7位:『ロード:オブ・ウォー』

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たま~にある魂にぴったりくる映画。今年はこいつでした。
現実に起こってる戦争を扱っているのに、なーんにも重くない。深刻さを理解した上で、妙にポップに仕上げられた軽薄さが大好きです。もちろんそれだけだったら不真面目なお話としてまともに取り合わないところですが、主人公が武器商人であり、彼の語りで物語が進行するというつくりによって、軽さが持つ意味合いが全く変わってきます。
シリアスな問題と真っ向から向き合うことを避け、自己欺瞞にまみれたユーモアでのらりくらりとやりすごす彼の姿勢にはどうも親しみを覚えずにはいられません。それは世界の重大な問題に対する現実の僕らの態度と、そっくりそのままなのですから。
…とか書いてたら続編の情報が目に飛び込んできた。まじかよ。



第6位:『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』

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"センス"とかと同じでマジックワードっぽいのであんまりこの言葉使いたくないんですが、やっぱりこう、"映画的な時間/画面"ってあるわけじゃないですか。例えばヴィルヌーヴはヴィルヌーヴ的な時間感覚を映像にしてるし、フィンチャーは特有のリズムが編集に出ているでしょう?あんな感じでいかにも映画的な時間っていうのもあるわけです。
で、この映画には常にそれを感じました。
前述の『ノスタルジア』は観客が映画に付き合う形でしたが、この映画は画面内のすべてが映画に付き合うかのようで、映画というメディアに奉仕しているというか…。上手く言えないんですが、それが気持ち良かった。今のところポール・トーマス・アンダーソンで一番好きです。
『リコリス・ピザ』観とけばよかったかなァ。



第5位:『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』

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僕らの現実ってなんだろう。
僕が見たり聞いたりする波形だろうか。僕が嗅いだり味わったりする粒子だろうか。僕が触れる質感だろうか。僕が考え、想う、心というやつだろうか。
きっと違う。
僕の眼が、僕の耳が、僕の鼻が、僕の舌が、僕の肌が、僕の筋肉が、僕の骨が、僕の内臓が、僕の脳味噌こそが、僕らの現実で、絶対で、唯一の本当だ。
肉体に対する興味冷めやらぬクロ様。この映画ではそれが清々しいほど、特別真っすぐに出ていたと思います。ぶっちゃけSF的な考察はあさーくしかできていない僕にとって、この映画は僕らが何なのかという問題に真正面からアンサーをくれる映画でした。
他人って何だろう。犯すってなんだろう。
物を食べるとき、僕らは身体に隷属している。
忘れがちだけど、ずっとそうだったんだ。



第4位:『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

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折に触れて言ってますが、「パラベラム」の時点でだいぶ不安だったんですよ、僕は。ギャグギリギリ、というか普通にギャグなんじゃないかってアクションが連続していて。それはそれで最高だったんですが、いい加減ネタ切れか?という疑念も拭えず。年をとってもキレキレのアクションを見せてくれているキアヌも、肉体的にそろそろやばいんじゃないのという余計なお世話も抱きつつ…。
見事乗り越えてくれました。
1の時点で"ゲームのような"と批評され、実際ゲームっぽさに対して自己言及的でもあったところを2でグッと引き締め、3でちゃぶ台返して、4で全部詰め込んだ。って感じ。
なんにも伝わらねえなこれ。まあでもそんなもんです。アクションってのは自分の目で見てこそなんで。



第3位:『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

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この順位でいいのかほんっっっとに迷いましたが、3位です。ていうかこれ以降のやつは全部1位でいいくらいなんすけど。
この映画は正しさを語る映画ではないはずです。ADHDとかアジア人女性とかそういう要素を拾えば徹底してポリコレ的ではありますが…そんなことはマジで本当にどうでもいいです。
テイストはもうぶっ通しでコメディで、シリアスかな?って思ったタイミングでも容赦なく笑いを挟んできます。しかもかなり下品。話も無茶苦茶。流行りのマルチバースをとりこんで、中年の女性が小指でカンフーしたりコックスタイルで戦ったり。何言ってんですかね。ジョン・ウィックさんもびっくりです。鉛筆握り締めながらドン引きしてることでしょう。
でも、それよりなによりこの映画は優しい。
世界にどんな倫理が流行していようが、この映画はただ誰かの居場所として在ってくれるはず。
監督のダニエル・クワンがとあるインタビューで言っていたこと。それはこの作品を表すのに、これ以上ない言葉でした。
"思うに、この世にはどんなものでも存在する余地があるのです"



第2位:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』

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どういう切り口で語ろうか…と何パターンか書き出してみては消してを繰り返してます。この映画を上手いこと語る手段が思いつかなくて。
だって、この映画を2位にしてる理由って僕がボロ泣きしちゃったからなんだもの。みつお。ミツヲ。
そして自分でもなんで泣くほど良かったのかよくわかっていないんですな。音楽とか演技とか話とかアクションとか良かったところはいくらでもあるので、単にそれが複合して相乗してものすごい高みに行った結果涙腺が決壊したという…至極真っ当に映画に感動したというやつだったとしか。
卓越して良かったのは音楽ですけどね。音楽と言うか曲の使い方。
僕、ガーディアンズに対した思い入れはなかったつもりなんですが、それでも泣けてしまうほどには良かったです。
本当に何書いたらいいのかわからなくて泣いたという情報だけで押し切ろうとしてます。そういうこともある。



第1位:『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』

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圧倒的と言うべきでしょう。
アニメーション、というより、映像表現として「スパイダーバース」は確実に歴史に名を遺しました。真っすぐな三段構成で作られた前作に続き、話としては王道を扱いつつ、それを表現する手段がブッ飛んでいる。物語というものの構造はもう出尽くしてしまっているというなんだか切ない言説もあるみたいですが、デジタルアートは"どう"語るかという点においてまだまだ可能性を残しているようです。
手描きやCGは言わずもがな、グラフィティにマンガ、絵画、あまつさえLEGO。あらゆるリファレンスを用いつつ、しかしどこかコラージュ感は希薄で、「スパイダーバース」の色で綺麗にラッピングされている。最高の音楽を最高のDJがRemixしているかのような興奮と陶酔を摂取できます。
もし宇宙人が現れて地球の文化を教えてくれって言ってきたら、僕はドヤ顔でこのスマートドラッグを見せるでしょう。地球代表面で、ときどき地球人の身内ネタを解説しながら…。
え、なんて言ったかわからなかったって?
オーケィ、じゃあもう一度だけ説明しよう。








はーい、次はゲーム。
なんと今年出たゲームが1つだけになりました。んなことあるか。
ではどうぞ。








第5位:『すみれの空』

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『ノスタルジア』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』で観客に与えられる"時間"の言及をしましたが、ゲームには"空間"を与える力があります。
…まあこの対比はちょっとレトリックに酔い過ぎですが。
『すみれの空』はHUDを排し、ゲーム的誘導を極力世界観に収めるデザインとなっています。結果生まれる、自分がその場にいるかのような、その世界観に溶け込んでいくような体験。伝えたいものを伝えるためのデザインというか…。インディ-ズらしい創作のマインドは素直に好印象で、それを下地に繰り出されるエモーショナルなお話は心に沁みるものがありました。
別に田舎育ちってわけでもないんですが、ノスタルジーに駆られて存在しない子どものころの思い出に没入していくかのような浮遊感が心地いい作品でした。
別ルートはやれてないです。怖いもん。



第4位:『ドキドキ文芸部』

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このゲームは"あなた"を指差して向き合ってきます。プレイヤーを、名指しで。ゲームとしてはそういう演出って実は珍しくもないというか、ゲームでこそ効果的な手法ではあるので、特にインディーズだと結構やりがちだとは思います。
が、これがギャルゲーってなると話が変わってくる。だってキャラクターが「自分、存在しないっすけどね」なんて言っちゃったらちゃぶ台返しもいいところですから。
でもやるんです。やって、そこに意味を持たせる。体験を与える。
モニカが画面の向こうからこちらを見つめてくるスチル。それが本質的に意味するものは、他のギャルゲーのものとは歴然と異なるものです。



第3位:『HOLLOW KNIGHT』

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長ぇっす。
ネガキャンじゃなくて異様なボリュームがあります。後になって振り返ってみるとまずその感想がでてくる程度には、あります。
これと比べると去年やったメトロイドヴァニアの『ENDER LILIES』は短めにまとまってたのかなぁと。
ただ『HOLLOW KNIGHT』はボリュームもさることながら、しっかりとしたソウルライクの手応えがあり、その分達成感も大きな代物となっています。一番面白かったのはマクロな意味でのアクションの広がりでした。「え、こんなことできるようになんの?」という驚きから、それを駆使してパズル的にステージを攻略するのが楽しかった。ヨコオタロウが"プレイヤーの世界を広げる"というゲームデザインのメソッドを提唱してましたが、似た設計思想があったのかな、と。



第2位:『OUTER WILDS』

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"孤独"と言う言葉に"自由"のニュアンスを感じるという人はどれだけいるでしょうか。もしわからなくても大丈夫、『OUTER WILDS』をプレイすればわかるはずなので。
このゲームの白眉は孤独の享受にあります。広くて、暗くて、誰もいない宇宙を、たった一人で旅をする。そこにあらゆる社会的な拘束はなく、だからこそ孤独で…。でも遠くから音楽が聞こえる。あそこにも誰かがいる。ひとりだけど、ひとりぼっちじゃない。
そういった感傷をこのゲームは与えてくれます。
ゲーム性の主軸である物語を進めるためのパズルも楽しく、先の気になる構造になっていて良いです。洋ゲーってユーザが操作してる感を重視しすぎて無駄にシナリオを散らしたりする節があると思ってるんですが、そういったわずらわしさもなかったですね。
なんか疲れたなーって人にプレイしてもらいたいゲームでした。



第1位:『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』

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"価値のあるゲームを作る"という信条を掲げ、外から見る限りでは企業としては不気味なほどその言葉に真摯な製品を開発し続けるフロム・ソフトウェアという会社にとって、かつての人気タイトルの復刻は相当な重責があったことでしょう。流通している再起動リブートという言葉で簡単に表せるような高さの壁ではなかったはずです。
今のフロムには壁を越える力があると、「AC6」は証明しました。
アーマードコアのエッセンスを高い精度で保ちつつ、一方で"らしさ"に甘えず新規の遊びを盛り込み、現代のゲームとして適切なゲームフロー設計で、そして少しばかり宮崎的ミームを伴って登場したこのゲームには、ファンとして惜しみない称賛を送りたい。挑戦を厭わない姿勢が生んだ傑作であると、僕は思っています。
"一度生まれたものは、そう簡単には死なない"
火種が絶やされなかったことに、ただただ感謝。







以上。2023年。

最近、仕事とプライベートが融和してきました。ちょくちょく言ってますがゲームの開発が本業です。アレの仕様どうしようか、とか、アレの調査しなきゃ、とか、あの人にアレ伝えなきゃ、とか。いつもどこかで考えてる。

直接開発に関わっているのは現時点で1年半ほどですが、たったそれだけの期間でも製作プロダクションという事業の大変さが身に染みることがあります。なんせ考えなきゃいけないことが多い。しかもエンタメなんで、そのほとんどは消費者にとって見えないところに隠蔽するものです。

なんとなく、ゲームも映画も、そういう目で見ることが増えた気がします。こういうこと考えてたんだろう、こういう意図だったんだろう、と自然と想像してしまうというか。作り手の視点と言うと洒落臭いですけど。
莫大な時間と人数と予算がかけられ、ノウハウが詰め込まれ、アイデアを絞り出している。
ここでも頑張ってんだなァみたいに思ったり思わなかったり。

色々と変化を実感する、そんな一年だった気がします。じゃあ来年もよろしくお願いしますということで。

それでは。

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