見出し画像

2020年の抱負|敗色豊か|西川火尖

今年、36歳になる

おりしもリーマンショック後の不景気で、第二新卒だった火尖には
どこも雇ってくれる会社なんかなかった。
採用担当の人に、「5年後君の同世代の人間はポツポツ出世しだして、
部下を持ったり、車や家を買ったりするものもでるかもしれない。
一方君のような人間はどんどん落ちぶれ碌な仕事にはつけないだろうね」と言われて、そうだろうなぁと納得してしまったりしていた。
今や、その彼女の言った五年後はとうに過ぎたが、半分あたり、半分はずれの生活をしている。

http://syuuu.blog63.fc2.com/blog-entry-1191.html

二回転職して、三つの仕事を経験したけど、転職する度に手も足も出なくなって本当に蝌蚪にでもなったみたいだった。それでも、この回想から四年、件の採用担当者の言葉からは十年が過ぎ、今も半分あたり、半分はずれの生活を楽しんでいる。
自分の努力や能力、才覚で勝利して稼ぐなんてことは結局一度もできず、ただただ時間の切売りの労働者で、共働きのおかげもあって、家族三人何とか暮らせている。
車はレンタカーを借りて済ませたり、戸建てや新築マンションは無理なので、月2万くらいのローンで中古マンションを買ったり、部下はいないけど、社内でドローンを飛ばしてワイワイしたり、採用担当者の箴言を中途半端に気にしながら、「これでよかったのだ」と言い聞かせている。
それでも私は、生きてさえいられればいいなんて、ほんの少しも思えないし、たくさんの人が苦境に陥って二度と浮上できなくなるのも全くいいとは思えないのに、そういう現実に折り合いをつけて、世の中の競争や勝負に一つも勝てないまま「幸せになろうとして、なった。」なってしまったから、そのことをずっと気にしている。
力の強い人の一息で跡形もなく吹き飛んでしまう生活を、弱いままで生きていく。それ以外に選択肢がなかったからそうなっただけかもしれないけど、今年はそこに意味を見つけていきたいと思う。
初めての仕事を辞めようと決めたとき、自分の俳句作品に「敗色豊か」という題をつけて発表した。それから今まで、漠然と考え続けてきたけど、多分そういうことだったんだと思う。

最後になったけど、
具体的な作品制作の話。社会に対する問題意識を一時忘れて花鳥に没頭するような作り方も、自分の不安感や憤りに義理立てするような社会詠もやってきたけど、どちらも少し不自然で、もう少し自分の体に即した、憤りなら憤り、自然なら自然を芯にそこに言葉をしっかり結びつけるような作り方をしていきたい。
あと、発想の幅の狭まりを最近特に感じるので、とにかく人の句を読んで読んで丸暗記していつでも引き出せるようにする。結局、実際に作る話になると物を言うのはどれだけいい句を覚えているかだと思う。睡眠をしっかり取る。運動する。賞を獲る。賞が獲れれば句集作りたい。うおおおおなんかテンション高くなってきた。まずは炎環賞、こいつをいただく!!!!

作りながら、生きていくために

2020年のQaiもどうぞよろしくお願い致します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?