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腐海のほとりに生きる 3.11東日本大震災・福島原発事故のあとに 百歳百冊「漫画版 風の谷のナウシカ」

腐海のほとりに生きる日本人のこれからの「希望」
3.11東日本大震災・福島原発事故のあとに


あなたは、漫画版の「風の谷のナウシカ」を読んだことがあるだろうか?
それは、エンターテインメントに徹した映画版とは
全く違うものであるのをご存知だろうか。

「カリオストロの城」で興行的に失敗した宮崎駿が
人生で最も不遇の時代に創り、
クリエイターとして満たされなかった
思いの丈をすべて吐露した
哲学的で内省的な物語である。

有名な話だが、
「風の谷のナウシカ」は
宮崎駿によるJRRトルーキンの
「指輪物語」に対するオマージュである。

主人公たちの配置は指輪物語そのままだ。
ナウシカは「指輪物語」の主人公のフロドであり、
クシャナ王女は、王の帰還を果たすアラゴルンである。
剣士ユパはガンダルフであり、
王蟲は、木の精霊ファンゴルンを鋳型にしているはずだ。

しかし、下敷きにしたとして
時代も違えば、西洋と東洋という差もある。

ナウシカの旅の物語は
微妙にロードオブザリングから逸脱していく。

その世界観のなかで、
JRRトルーキンの「指輪物語」と
最も大きな違いを見せるのは
「唯一の原爆被爆国・日本」という
宮崎駿の原点から生み出された
「汚染された環境」という環境設定であろう。

その象徴となるのが、
「大海簫(だいかいしょう)」という現象だ。

人類の「科学化」が悲劇的な結末を迎え、
大規模な核戦争が起こる。

それから1000年後という
衰退していく人類の黄昏に設定された
「風の谷のナウシカ」。

「指輪物語」の世界設定は
不死の神々の時代のあとに
粗野で短命な人類が
中世界を譲り受けるというものである。

人類にとって旅立ちの希望に満ちた
「指輪物語」の幸福な時代設定とは逆に、
「風の谷のナウシカ」では、
人類は自らの発展が引き起こした
自業自得の罠の中で
「大海簫(だいかいしょう)」という
地球規模の大災害を引き起こす。

今回の東日本大震災の津波の映像を見て、
私がまず始めに思い出したのが、
この「大海簫(だいかいしょう)」のシーンである。

http://www.youtube.com/watch?v=RM3HDODpieY&feature=related

震災の当日、NHKが中継した
ユーチューブのこの映像は、衝撃的だった。

私が思い出したのが、このナウシカの「大海簫(だいかいしょう)」だった。


人類が築き上げてきた文明や科学のすべてを
押し流していく「大海簫(だいかいしょう)」

今回の大海簫(だいかいしょう)は、
「絶対安全」と人類が豪語していた原子力発電所を襲った。


それはあたかも現代のバベルの塔のようだ。

福島原発のメルトダウン事故とはなにか。

広島、長崎という被爆体験を持っている日本が
世界最大規模の原発事故を引き起こした事実。

これこそが、人類の愚かさの象徴ではないか?

人類の科学への妄信、
進化へのつきない強欲、
「想定外」と強弁する自戒の欠如。

ここに見た現実は、
大海簫(だいかいしょう)を引き起こした
ナウシカ世界の先人類とまったく同じ
人類の愚かさである。

こういう批判めいた発言を控えるべきだという
過度な「自粛」の風潮も
さらに人類の愚かさの象徴であろう。

悪いことを悪いことだと、反省もできないのか、我が人類は。

大海簫(だいかいしょう)の後の世界、
ナウシカは悲劇的な地球世界を背負って生きていく。
人類の愚かさを自分の宿命のように
ひとりですべてを背負って生きていく。

風の谷の民は、なぜその被爆した世界で
生きていけたのかご存知だろうか?

腐海と呼ばれる汚染地帯からの
わずかに吹き抜ける風で、
放射能から守られた土地だからだ。

事態は、日本の今後と重なる。

我々は、これからの数十年を
放射能の塵を浴びながら生きていくだろう。

地震や津波という災害ではなく、
自分たちで引き起こした科学文明による人災によって引き起こされた、
汚染された世界で生きていくのだろう。

水にも、植物にも放射能はわずかづつ入るだろう。
われわれはそれを食べて生きていく。
毎日、毎日少しづつ汚染されていくだろう。
動物もともに汚染されるだろう。


このことを福島の話だとして地域限定で考える人がいる。

そのひとこそ罪人だ。あなたこそ、被爆者なのだ。

この件で福島の人たちが非難される謂れはどこにもない。

我々は等しく被爆した。

腐海のほとりで住むがごとくに、
長い間にゆっくりと放射能を体に蓄積していく。

そして世界中の人々は、日本を汚染された土地と見なすだろう。

先日見た香港の映像では、
すでに寿司バーでガイガーカウンターで確認しない限り
日本というブランドを信じなくなった外国人が映し出された。
すでに始まっているのだ。

事態はもっと悲劇的になる可能性を持っている。
過去に培った日本ブランドは、すでに警戒されているのだ。

それでも我々は生きていく。

だからこそ、いま立ち止まって考えねばならない。

日本はこれから先どこに向かうのか?

なにを信じて、なにを反省し、
そして、新たになにを創り出していくのか?

我々の子供たちには、なにが必要になるのか?
残された世代に何を教えればいいのか?


原子力発電はやめなければならない。

自分が制御できない「力」を使うことは、地球に対して失礼だ。

日本人は 2度も被爆した国として 原子力を止め

いち早く自然エネルギーの活用の道を国民の総力を挙げて実現しなければいけない。

我々は、風の谷に生まれたナウシカのように自分で考えて
自分で決定して、自分で行動していかなければならない。

それでも、我々はこの風の谷で
希望を心に、行動しなくてはならないのだ。

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