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百歳百冊 「日本とは何か 日本の歴史」

豊かな教養のための楽読部門 

日本の歴史、文化史に関する再考を促す話題作。
通説となっている「日本論」の常識を覆すのが主眼。

この場合の「日本論」の常識とは
・単一民族説
・孤立した島国説
・水田稲作中心の農業国家などである

これらの通説は大和朝廷が、随を中心とする対中外交政策として、もくろんだ神話や物語を利用して流布したストーリーであり、無視された部分が多すぎることを解明している。

強力化する中国政権に対して、柵封制度に従うか否かが当時の大和朝廷の最大関心事であり、厩戸皇子を中心に進められた政策が「柵封を受けず、自立国家として中国だけでなく周辺国家にみとめさせること」であった。
そこで有名な「日出ずる所の天子」という一文が生まれる。この政策が中国の「天子」に対する「天皇」を制度発生させ、柵封における蔑称であった「倭」からの独立としての「日本」の国名を誕生させるに至ると推理する。

初期大和政権の日本の国土拡張のための侵略の課程も詳細に検討されており、特筆すべきは、幾内の大和朝廷に対する東国の対抗軸の説明。
坂東の反乱である平将門の乱以降、源頼朝の鎌倉幕府、徳川の江戸幕府など、西国と東国はじつは二つの国と区分すべき存在だとしている。


私にとっては紹介される森巣博氏の「日本国籍所有者という意味以外では、日本人というフレームワークは存在しない」という指摘が重要である。いまの最大関心事である「少子高齢化に対抗する大量帰化人の日本国籍取得」政策をバックボーンで支えるかもしれない理論書になりえると感じた。

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