50歳50冊 アンドロイドは電気羊の夢を見るか? フィリップ・K.ディック
やれやれ自分は本当に人間なんだろうか? 迷想の哲人ディックの深い謎掛け。
人生の50冊 SF編 ベスト3
SF作家で誰にハマったかと言えば、間違いなくフィリップ・K・ディック!
いつもの通り、幻覚と狂気の果てに、支離滅裂な結末になることは百も承知で、
彼の難解な迷路に我々は好んで入り込むのです。
これは完全に自虐的なMの行為です。しかしこの迷宮のなんと豊潤な事か。
今思えばそれは読書ではなく、宗教体験に近いものでした。
「流れよ我が涙と警官は言った」、「高い城の男」と
代表作の題名を書いただけでも光悦します。
晩年の「ヴァリス 三部作」はSFですらなく、人類最大の哲学書だと信じてます。
その体験は間違いなく僕にとっての「失われた時を求めて」でした。
さて、難解なディック作品の中でも
映画「ブレードランナー」という最良の解説があるだけに
間口が広いのが本作。しかしハードボイルドアクションな映画と違い、
小説の読後感にあるのは、ポッカリと穴の空いた虚無感だと思います。
おいおいディックさん、いったい誰がアンドロイドで、誰が人間だったんだい?
そして、そう思考する自分自身の存在すら怪しくなってくる。
それがディックの世界です。
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