一人ひとりとの関わり-刑務官にエールを送ろう-

 ふだん授業を配信するのは,勤め先のwebサービスへテキストデータとそれを読み上げながら講義するMP3の音声ファイルだ。学生が提出してくれる小レポートで出席をチェックする,という日々が続く。150人規模の講義では提出物チェックがやっとこさで,コメントを返すまでに至らず申し訳ないなと思っている。また,ゼミはさすがにしんどいのでweb会議システムをあれこれ試して,顔を合わせ話をしている。でもネット環境が不安定だったり,機材がスマホだけという学生の方が多いので,研究室の電話も使ってやりとりを増やしている。

 そうやって,一人ひとりとの関わりを工夫していると,お互いのおかれた状態がよく分かってくる。そうやね,大変やけどがんばろうね,とか。それに,メールだとまどろっこしい相談も電話やweb会議システムの画面で顔を合わせると,すんなりやりとりできる。ああ,直接やりとりするのって,本当に大切なんだと改めて思う。

 支援を必要とする人へ働きかける福祉職,ソーシャルワーカーやケアワーカーが今大変だ。感染の恐れがあるがサービスは必要だということで,資材も不足する中介護サービスや相談事業に取り組んでいる。三密だから避けましょうと一般論で対処できない仕事なのだ。医療関係者への支援は多いけれど,まだまだ介護や福祉職への応援は少ない。読者には,どうかどうかかれらを応援してやってほしいと思う。

 同じように人と関わる仕事ながら,もっと日の目を見ないのが刑務官や保護観察官だ。刑務官は,社会に代わって罪を犯した人を罰する仕事についていて,かれらの自由を制限して少人数で何とか頑張っている。仕事がら人手不足でも派遣さんやボランティアを頼むわけにもいかない。読者には,何でそんな仕事まで応援せなあかんの,と思う人がいるかもしれない。でもね,刑務所は福祉の最後の砦なんです。刑期のあいだかれらを世話する仕事を担ってくれているから,最後の最後でこの国の治安を保てている。だからどうかどうか,刑務官にエールを送ってあげてほしい。

 こんな事をいうと何やけど,TVで「コロナウィルス対策での詐欺に注意ください」という政府広報が流れる。その時私は,「給付金を配ると言ってながら先延ばしにすることって詐欺まがいちゃうんかな」と思ったりするが,昔インタビュー調査でお世話になった刑務官たちを思い浮かべ,誠意をもって職務に忠実に取り組んでいる現場の公務員たちに失礼だなと感じる。検査が進まないのもこの10年間保健行政を縮小させてきた結果現場が疲弊しているからでもある。社会の仕組みを担ういろんな人たちの働きを,私たちはこの際いろいろ勉強したい,そして理解したいもの。

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