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エンジェル投資家から画商へ。山口豪志氏の野望とは?

世界で初めてアートビジネスを始めたのはヴォラールである。

彼はピカソに「君は仕事が遅いから版画にしなさい」と言って、
世界でもっとも多くの作品を残すアーティストに仕立て上げ、巨万の富を得た。

セザンヌ、ドガ、ゴーギャン、ゴッホ、ルノワールなども彼によって発掘され、お金の成る木に成長させた。

こんな説明をしてくれたのが、久々に再会した山口さん(組長)である。
テックジムの創業のきっかけを作ったのはまさに組長だった。
組長から紹介をうけた彼の出資先で出会ったのが中村だったからである。

岩本町のプライベートオフィスにお邪魔すると、所狭しとアート作品が並んでいる。
これから沖縄に美術館を作り、そこでお披露目するという。

組長は岡山出身。そういえば、大原美術館も岡山である。
なぜ豪商が美術館をやるのか、ちょっとわかった気がした。

なぜ、ニューヨークがアートの中心地になったのか?

アメリカのニューリッチがヨーロッパの貴族に憧れて、ヨーロッパの絵画を買い集めた。
その裏に画商の暗躍があった。

古い絵画を二束三文で買い集め、「これは一国分の価値がありますぞ」と売り捌く。
「千利休」みたいなフィクサーは今も昔も政治に近いところにいる。
いわばペテン師。大型資金調達をする起業家に近いかもしれない。

価値があるかわからない物に価値を見出し、シンジケートを組み、価値を上げたあとは、値が落ちないようにコントロールする。

その裏には税制優遇があり、資産家の金融ツールの一つとして機能しているのがアートである。

単に「価値があがるぞ」と予想して張る「NFTアート」とわけが違う。
彼らは価値が上がることを意図してやっているのである。
そしてそのコミュニティに属することが一つのステータスになり互助装置になるのである。

「価値が減らない」にはいくつかの約束事があり、
その中でも重要だと思ったのが、「アーティストの人生そのものが詰まっている」という要素である。

後述するアーティストの梶川さんが、「アーティストは中途半端じゃいけないんです。いつ死んでもいいやと思って生きてないといい作品は生まれない」と言った言葉に一種の感動を覚えた。

「アーティストと比べて起業家は生ぬるい」と組長は言う。

一生をかけて残せるものを作れる起業家はほぼ皆無である。
そもそも、そんなに大それたことを思っていない。
でも、アーティストはことごとくみんなが「100年先にも残るもの」を作ろうとしている。

エンジェル起業家の組長が、アーティストに興味を持つのは当然の動きだった。
逆にいえば、アートに関心が向かないベンチャーキャピタリストがいるのが不思議である。

私は自然物であろうと、人工物であろうと、自分の動きを止めたものが「アート」だと定義している。
「タイムイズマネー」で動く人を「美しい」と言う理由で釘付けにするのだから、とんでもないわけだ。
そういう意味では「美人」もまた、自然あるいは人工が作り出したアートである。

メタバースにせよ、自然界にせよ、脳をバグらせるのがアートである。
そこに金銭的価値や、その時代の流行を生み出すのが、画商たちだったということだった。
起業家の裏に投資家がいるように、アーティストの裏に画商がいるのだ。

そして両者は時代を作り替えるフィクサーである。
その片方では片手落ちである。

インプットがあってのアウトプット。
アウトプットがあってのインプットだからである。
「金儲けしてこれからどうすんのよ」と言われて答えられないなら、アートにじゃぶじゃぶつぎ込めばいい。

組長を見ていると本当に楽しそうだ。作品を買っては我が子のように愛しんでいる。

まず最初に、組長とインセクトアートの展示会に行った。

福田亨さんの「Mushikago」に釘付けになった。
木工でできたヒラタクワガタである。
なぜかガラスが貼ってあるような感覚になるのは、そういう技法だからである。

直接作家さんの説明を受けるというのは、贅沢な体験である。
それにしても、昆虫をテーマにしたアートカテゴリーがよくもあるもんだと思った。
古来より「昆虫」は工芸職人の創作活動に大きなインスピレーションを与えたそうだ。

その後は、先述した梶川さんと3人で街中華を食べて、
梶川さんの作品の展示会場へ。

組長が借りているマンションルームが展示会場である。なんて贅沢な話だ。
秘密のアジトに来ている気分である。

梶川さんの作風は一瞬で焼き付くものだ。
フォロワーが出れば、元祖が梶川さんとなる。
その梶川さんに影響を与えたのがアンディウォーホール。

こうやって、系譜をひもとくのもアート体験の醍醐味である。
かつて、「ロックの潮流図」を見て楽しんでいたことを思い出した。


「これからの日本を牽引するは、観光、アート、教育である」と組長が言った。

その全てを沖縄の美術館でやるそうだ。

アスティーダの他にも、沖縄に行く理由ができた。

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とりあえず、俺のアート体験をメディア化してみることにした↓


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