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根性ってどれくらい効果あるの?Part3/3 スタミナ編

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はじめに

長かった近似計算もついに最終章です。
今回はレース完走時の余剰体力に線形近似を行い、微分を用いて接線の傾きを求めることで、根性の消費体力軽減効果をスタミナに換算した数式を作りました。

結論としては距離や根性の値によって変換率は異なり、より根性が増えるほど、そしてより短距離を走るほど根性の効率が悪くなり、↓の表のような変換効率になることを調べました。また、これらの近似が他の方の計算機によるものとおおよそ同じ数値になることの確認も行いました。

根性とスタミナの換算

スタミナ計算機で色んな根性での必要スタミナを総当たりするようなやり方も多いですが、こういう微分や数式を使ったやり方もあるんだと楽しんでもらえたら幸いです。

前提

計算式

スタミナ消費に関する計算式は以下を用います。脚質補正は差しや追い込みを想定して1で計算しています。また、以下の数式中ではスタミナは$${s}$$、根性は$${g}$$で表します。staminaとgutsの頭文字です。

$$
初期体力=0.8s-(スタミナに依存しない部分)
$$

$$
終盤消費体力=20\times(現在速度-基準速度+12)^2/144\times(終盤の時間) \times(根性補正)
$$

$$
根性補正=A=\frac{200}{\sqrt{600g}}+1
$$

計算精度

ここで計算の精度について考えましょう。めちゃくちゃ正確に計算したa=2.1423という数と小数点以下で四捨五入したb=3という数があったとしてこれらを掛け算したら、計算の精度はどうなるでしょうか?aをどんなに正確に小数点以下まで計算したとしてもbに誤差があるため、a×b=6程度ということまでしかわかりません。

一般的に色んな数を掛け算する場合、最終的な答えの精度はかけた数の中で一番精度の悪い数と同じ程度に揃えられます。計算を何段階かに分けて行う場合、その一部分だけを正確にする行為にはあまり意味がありません。

今回は最終的に整数のnを使って「根性の1/nが根性に加算」のような形にまとめるのを目標にします。つまり計算途中で0.52352・・・のような精度を求める必要はありません。全ての計算は一番上の桁が変わらないような程度の精度で揃えます。近似を行う際はこの「一番上の桁が変わらない程度の精度」が保たれていることを確認しながら進めていきます。

計算

消費スタミナの厳密な式は各瞬間ごとの速度などで変わるためそのままだと非常に計算が複雑になります。今回は先ほど述べた程度の精度で大雑把に計算することが目的なため、どの部分を大雑把に計算しても精度を落とさないか確認しながら簡単にしていきます。

その後でスピードと根性の換算で行ったように、線形近似を行い根性の増加をスタミナの増加に換算する計算を行っていきます。

現在速度ー基準速度の差はスピードの大小、加速中かどうかで変わってきますが、ここは5m/sで近似します。これに12m/sを足してから掛け算していくため、5m/sが5.5m/sや4.5m/sになったとしても12+5±0.5=17±0.5程度と十分な精度に収まるからです。

同様に終盤の時間も25m/sで$${\frac{L}{3}}$$mを走ったと考え、$${\frac{L}{75}}$$秒で近似します。ここで$${L}$$はコースの距離です。

$$
(終盤消費体力)\fallingdotseq \frac{20}{75} \left(\frac{17}{12}\right)^2\times L \times (根性補正)
$$

以上の計算により、終盤で消費する体力をコースの距離だけで決まる数式に書き換えました。コースの距離の部分も同様に適当な数字に置き換えたいところですが、コースの距離は1000m~3000mと3倍程度の幅があるため、ここを適当な数字で置き換えてしまうと目的の精度(=有効数字一桁)が出ません。

余剰体力を$${f(s,g)=初期体力-消費体力}$$として根性の増分をスタミナで換算します。

$$
f(s,g+dg)=f(s+ds,g)
$$

上の式を満たすような$${dg}$$と$${ds}$$の関係を見つけますが、線形近似して計算すると次のようになるのでした。

$$
ds=\frac{b}{a}dg
$$

ただし$${a}}$$と$${b}$$は$${f}$$の接線の傾きで、次を満たす定数です。

$$
f=as+bg+c\\
a=\frac{\partial f}{\partial s}\\
b=\frac{\partial f}{\partial g}
$$

スタミナや根性の微分を代入すると次のようになります。根性補正は$${A}$$と置いています。

$$
a=\frac{\partial f}{\partial s}=0.8\\
b=\frac{\partial f}{\partial g}=-\frac{20}{75} \left(\frac{17}{12}\right)^2\times L \times \frac{\partial A}{\partial g}
$$

$${f}$$の式のうち、スタミナに関係する部分は初期体力の部分のみ、根性に関係する部分は終盤の体力消費のみなので、その部分の微分のみが残り、序盤や中盤の体力消費の微分は0になっています。

根性補正の根性微分は次のようになります。

$$
\frac{\partial A}{\partial g}=-\frac{100}{g\sqrt{600g}}
$$

まとめると次のように書けます。

$$
b=\frac{20}{75} \left(\frac{17}{12}\right)^2\times L\times \frac{100}{g\sqrt{600g}}
$$

事前に調べておいた通り$${a}$$と$${b}$$の比がスタミナと根性の変換係数になりますから、基準になる根性を決めて代入すれば完成です。

$$
ds=dg\times 0.8\times\frac{20}{75} \left(\frac{17}{12}\right)^2\times l\times \frac{100}{g\sqrt{600g}}\\
\fallingdotseq dg\times \begin{cases}
\frac{L/1000}{5} &(根性600の場合)\\
\frac{L/1000}{15} &(根性1200の場合)
\end{cases}
$$

おおよそ距離に比例して換算の効率が決まり、1000mあたり根性の1/5がスタミナに変換されると考えることができます。

例えば2000mでは(2000/1000)/5=0.4なので根性600を基準にすると根性の4割ほどがスタミナに換算され、例えばスタ700根性650とスタ720根性600が同程度となります。根性育成で根性1200を基準にすると(2000/1000)/15=2/15≒1/8で、約8分の1がスタミナ換算されます。

距離の影響をいちいち計算するのは使いづらさがあるので主な距離で何割が換算されるかを表の形にまとめました。

スタミナと根性の換算

注意点

スピードの結果と比べるとわかりますが、スタミナへの換算はスピードへの換算よりも根性を変えた時の曲線の曲がり方が大きく、線形近似が悪くなりやすいです。出来るなら今回の結果に頼りすぎず、詳しい人の作ったスタミナ計算機で確認することを推奨します。

また、今回下り坂の影響を考慮していません。近似の計算を追うと終盤にある下り坂のみ根性スタミナの変換に影響があり、変換の定数を小さくする効果があることがわかります。

近似が成り立っているかの確認

砂井裏鍵様のエミュレーターを用いて近似がうまくいっているか確認します。

http://race.wf-calc.net/#/champions-meeting

余剰体力が出力されているため近似を用いて求めたスタミナと根性でここ↓の数字が同程度になることを確認してみましょう。なお、スキル発動率修正→全乱数固定のオプションを付けることで乱数は固定しています。

エミュレーターを用いて余剰体力を計算
スピード1400パワー1200で計算

中山2000m

まずは中山2000mです。今回求めた近似だと根性100増やすとスタミナ40削れるはずです。一方、エミュレーターの結果は以下になります。
スタミナ1200根性600の時余剰体力405
スタミナ1160根性700の時余剰体力395
おおよそ同じ体力といえます。なお根性100増やしてスタミナ28削ると余剰

体力405でぴったり一致となるのでその差分が近似の誤差だと思ってください。

また、根性育成では近似では100増やすとスタミナ13削れることになっています。エミュレーターの結果は以下になります。
スタミナ1200根性1200の時余剰体力490
スタミナ1187根性1400(1300)の時余剰体力488

京都3200m

距離を伸ばすとどうでしょうか?3200mだと今回の近似は根性100増やすとスタミナ64削れることになっています。エミュレーターの結果は以下になります。
スタミナ2000(1600)根性600余剰体力126
スタミナ1872(1536)根性700余剰体力113

根性育成だと根性100でスタミナ21です。エミュレーターの結果は以下になります。
スタミナ2000(1600)根性1200余剰体力270
スタミナ1958(1579)根性1400(1300)余剰体力267

東京2400m

根性600付近の場合は近似だと根性100でスタミナ48削れます。エミュレーターの結果は以下になります。
スタミナ1200根性600余剰体力241
スタミナ1152根性700余剰体力231

根性育成の場合は近似だと根性100でスタミナ16削れます。エミュレーターの結果は以下になります。
スタミナ1200根性1200余剰体力343
スタミナ1184根性1400(1300)余剰体力340

以上のようにおおよそではありますが根性を盛ることで削ることのできるスタミナを計算出来ていることがわかります。

結論

以下の計算式を求めました。以下でlはコース距離/1000mです。

  • 根性600を基準とする時、根性600からのずれのl/5がスタミナに加算

  • 根性1200を基準とする時、根性1200からのずれのl/15がスタミナに加算

  • 主な距離別に表の形式でまとめると以下

距離毎のまとめ

以上は基準の根性に近い領域でのみ成り立ちます。スピードの換算式と比べてずれやすいので正確な数値が必要な時はなるべく以上の公式のみで済ませず他の方のスタミナ計算機を使用してください。

関連調査

今回の記事に関連してスタミナと根性の関係を調査している方を調べたところ以下のようなものが見つかりました。関連するツイートとしてまとめておきます。


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