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【禍話リライト】冷蔵庫の世界

 小学生の頃、クラスの雰囲気に馴染めないというか、集団生活に馴染めない時があり保健室に逃げがちだった。今思えば、保健室の先生も若干引きこもり気味な、あんまり人とちゃんと話せないような感じだった。手当てとか業務はできるけど飲み会とかは行かないような。ちょっと線の細い女性の先生だった。それでも、定期的に保健室へ行っているうちにだんだん先生と仲良くなっていった。

 ある時、保健の先生に"すごく寂しいときがある"と相談をした。すると、私もそういう時はあったのよと。今の君に話してもしょうがないけれど、昔は夢見がちでね、蝶さんやダンゴムシさんとお話できるみたいなことを思い込んで自分を保っていたの。そんな私に比べたらマシよ。一番酷い時なんてね、冷蔵庫を開けるとそこはイッツワンダフルワールド!みたいな違う世界が広がってるの。イギリスの庭園みたいに素敵なガーデニングでね、そこで小さな人達がお茶会なんかをしてるのよ。英語か何か言葉はよくわからないけれど、フィーリングでコミュニケーションをとって気を紛らわせた時期があったなあ。でもあなたはそういうこともないんだから、先生よりマシだよ〜。
先生はニコニコと話したが、正直、小学生ながらにも「うわ、気持ち悪!」とドン引きしてしまった。

 しばらくすると皆も気を遣ってくれたのか、だいぶクラスにも馴染めるようになり保健室へあまり行かなくなった。先生もよかったわね〜と言ってくれた。

 ある時、授業中に急に熱が出て久しぶりに保健室へ行った。それこそ半年ぶりぐらいに。先生は書き物か何かで忙しそうだったが、「これは仮病じゃなくて本当に体調が悪いんですよ、はは〜」なんて冗談を交わし、保健室の奥で横になるとそのまま眠りについた。
 30分程経った頃か、目を覚ますとボソボソ話し声がする。なんだか要領を得ないような内容だったが、熱にうかされているせいでそう聞こえるのかな、と思いそっと声のする方を見た。


先生が冷蔵庫開けてブツブツ話していた。

それから保健室には行かなかった。


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※リライトにあたり、一部表現を変えている部分や、自己解釈が含まれる部分があることをご了承ください。
燈魂百物語 第零夜(1) (6:45頃〜)
https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/337047722

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