楽しい音楽のためのいっぽ③-オモテ、ウラ、ノリのハナシ-

こんにちは、MIXする犬です。

5月はとても多くのMIX依頼をいただき、たくさんの音楽と人に関われてありがたい限りです。

歌い手の皆さんがもっと楽しく、かつクオリティを上げるために、今回も大事な意識の話です。

今回は主にノリのお話です。

音楽においてノリ、という言葉は結構あいまいでいろんな意味を持っていたりします
なので、本記事で言う”ノリ”などはMIXする犬の個人的な解釈としてとらえてください。

〇なんでノリが大事なの?

なぜノリを理解する必要があるかというと、よりオケになじむ歌にするためです。

人間同士の集団になじむには”場の空気を読む”ことがとっても大事になると思うのですが、音楽においても一緒。

歌ってみたで置き換えるとすれば、オケのノリ=”場の空気”
あなたの歌がオケになじむためには、オケのノリと歌を合わせてあげる必要があります。

ノリが合っていないと、MIXでどう頑張っても一定以上のクオリティになりません。
逆にノリを攻略すれば、曲になじみやすくなるだけでなく、もっと楽しくなるよ!

〇表拍と裏拍

ノリに関わる大事な要素の一つに拍のとり方があります。
どうやってリズムを感じるか、ということ。

テンポに合わせてクリックが鳴っているとして、
クリックに合わせて「1と2と3と4と」、という具合にカウントをします。

このとき数字の部分が表拍”と”の部分が裏拍です。

ということは普通にクリック(メトロノーム)を聴いているときは表拍で鳴っていることになります。

よくみんなで手拍子するとき、一人だけ裏で手拍子してるやついませんでした?
ソイツの手拍子は裏拍です。

この表拍と裏拍、どちらに重点的に意識を置くかでノリが変わってきます。
それ以外の要素ももちろん関わってくるけど、今回はとりあえず割愛。

どう使い分けるかは曲によりけりです。
曲をしっかり聴きこんで、曲にマッチしたノリを判断してみましょう!

〇曲で考えてみましょう

実際に曲を聴いてノリを考えてみましょう。
メインどころは表拍を強く感じるか、裏拍を強く感じるか。
個人的に好きだったり、よく耳にする曲をピックアップしてみます。

人によって意見や感じ方は様々だと思いますが、今回は僕の考え方でいきます。
どう判断していいか分からないよ!って方はぜひ思考方法の参考にしてください。

〇表拍編

まずはバルーンさん”シャルル”

僕ならこの曲は表拍に意識を置いて歌います。

なぜかと問われると「なんとなくそっちのが合うから」と答えてしまいそうになりますが、それでは無責任なので、ちょっと根拠を考えてみます

ノリを考えるときはドラムとベースを聴くと分かりやすいです。
(この2つはよく”リズム隊”と称されるくらいリズムのカギを握っているよ!)

この曲でドラムがメインで主導権を握るのはバスドラとハイハット。
僕が聴く限りバスドラは表拍ハイハットは裏拍をメインにして鳴っています。
(ドン、ドン、と低い音で鳴るのがバスドラ。シャンシャン、チッチッと鳴るのがハイハット。無理に覚える必要はないです)
スネアはこの曲のリズムパターンの核ですが、表裏にあんまり関わってきません

バスドラは表拍、ハイハットは裏拍なのでこれは迷いどころです。どちらに意識を置くか迷います。

ただベースを聴くと、全体的に表拍に重点を置いたフレーズなのが分かるでしょうか?
よって曲全体も、裏拍より表拍が強調されます

一曲通して四分音符で鳴るバスドラと、表拍を強調したベースに意識を置くと自然と歌も表拍に意識を置くことになります。
そうすると、より歌とオケに一体感が出ます

ちなみにサビの途中、2拍目・4拍目にオケ全体で休符が現れます。
(否、否のあたり)
歌もこの2拍目・4拍目は休符ですが、この休符にしっかりと意識を置くとさらにノリが出ます。これも表拍ですしね。
オケに合わせてぐっ!と止まるイメージです。

〇裏拍編

Ayaseさん”シニカルナイトプラン”。この曲ほんとに大好きです。

この曲、表拍の四分音符でキック(バスドラ)が鳴ってます。先ほどのシャルルもそうでした。

が、ボーカルのメロディの多くが裏拍から始まっています。よく聴きこんでみてください。
Aメロ歌いだしからいきなり裏拍始まりです。サビの入りもそうです。

表拍に意識を重点的に置いていると、この歌い出しの対応が甘くなります
なので裏拍に意識を置いて歌い出しをキッチリとらえたほうが合うのではないかなと思います。

こういったダンスチューン(ですよね?)は裏拍と相性がとっても良いと思います。

裏拍を感じながらこの曲を聞くと、自然にこの曲の世界にピタッとハマりやすくなると感じます。

それと原曲をよく聞くと、歌がスタッカート(音を短く切る)を多く使っています。
どこで音を切っているのかよく聴いて、再現してみてください。ノリに大きく関わるので。

〇難問編

最後に、柊キライさん”ボッカデラベリタ”
この曲は歌い手さんおよびMIX師泣かせな曲だと思います。(僕がそう思うだけ?)

色んなむつかしさはとりあえず割愛するとして、この曲の難しいところは「曲中でノリが目まぐるしく変わる」ところにあると思っています。

サビのメロディは表拍をメインに構成されているので、素直に表拍に意識を置けば大丈夫です。

Aメロに入るとノリが変わります。曲の雰囲気もちょっと落ち着き(?)ますよね。
このAメロ、いわゆるハーフタイムだと思っています。
(テンポが半分になったような感じ。)
クリックの1拍目、3拍目だけ聴くとちょうど半分になって、曲のノリにしっくりくると思います。

で、サビに戻ると通常のテンポに戻ります。特にサビの後半は表拍をグイグイ出していくと勢いが出ます。(確かバスドラが4分打ちになった気がする)
前回のnoteでも書きましたが、四分クリックと一致する歌詞の文字をよく把握して、落ち着いて歌ってみてください。

で、割と大事なのが2番のBメロ前半
Aメロと同じくハーフタイムなのですが、ビート感がしっかりしているので、それまでとその後の良い対比になります。
1拍目、3拍目のノリをしっかり感じて伸びやかにいきましょう。

この途中3連符が出てきますがこれも結構鬼門。
(喉を火傷させる、のあたり)
早いなと思って焦ると確実にハシる(早くなる)ので、落ち着いて対処しましょう。
けどせる
この太字部分がクリックと一致します。これだけ意識しとくとズレにくいです。

○歌う前によく分析しておきましょう

今回はとりあえず以上。

歌ったり録音する前にこれらのことをしっかりと分析しておくと良いと思います。
表拍が大事なのか、裏拍が大事なのか。これだけ意識するのみでも、テイクが変わってくる部分があると思います。
ちなみに僕は楽器演奏時ですが、両方意識する時もあります。
表拍がメインっぽいけど、裏拍もちょっと気にかけておく、みたいな。

解釈は人それぞれです。こういうことを考えた経験は、絶対に活きてきます。

最後に。
ノリを考えた結果いつもと違う感じ方をした、という時は、些細な物でもその感覚を忘れずに大事にしてください
ノリや音楽は非言語的な要素が強いので、その時感じた感覚が大事。

もっと洗練されたアウトプットができるように、研究してみましょう!
わからないことがあったらDMなりなんなり飛ばしてください。一緒に考えます。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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