お産その3


LDRという、そのまま分娩に入ることが出来る部屋だったので、分娩室に移動するなどはなかった。
転がっていたベッドが少し稼働して、分娩台になる。左右に足をそれぞれ置く場所があり、そこにセットすると自然と開脚の体勢になるのだった。ここで一つ言っておくがわたしは体がものすごくかたい。



さっきまで2人くらいだったはずの助産師さんが、一気に6人くらいに。そんなに人必要なの、出産!!??後々聞いた話だと、血圧高めが続いている中での促進剤投与だったので、念のためと人数が多かったらしい。
とにかく、人数が多すぎてもはやどれが先生なのかわからない。探す余裕などはなく、お願いします!の一言も言えない。てか今のここは完全に密じゃん、夫一人増えても大丈夫なのでは、、、???(立ち会い不可)



いつの間にか子宮口も結構開いたみたいで、いよいよいきむらしい。両脇にあるバーみたいな部分を掴んでと指示される。次の痛みが来たら1、2で軽く呼吸をし、3でいきむ!やってみよう!と言われる。そうだ、とりあえずやるしかない。誰だって最初は未経験なのだ。1、2、3!!!!!!!とにかく目を閉じないでお腹を見ること!!!!!なんだそれ体育会系か!!?頭は見えてきたとのこと。うわあ今わたしの体から別の人間が出てきかけている、、、もう頭見えてるんだ、、、と少し感動。



2、3回いきんだだろうか、助産師さんから「あと1、2回いきんだら生まれるよ〜!」と言われてちょっと驚く。あ、もうそんな感じ??出来る、生めそうだ、と思った。

なーんて余裕が出てきたのも束の間、今度は両側にそれぞれ助産師さんが回り込み、右の人は右脚を、左の人は左脚をガッと抱える。盛大なM字開脚。前にも書いた通り、わたしは体がかたいのだ。M字開脚などしてはいけない体である。それが人に抑えられ、しかもその先にはたくさんの助産師さん&先生が構えている。俯瞰で見たらすごい光景だ。「わたし体かたいんだよな、、、」と心の中で言いつつ、酸素酸素、と必死に呼吸だけは忘れずに意識的に続けた。その後2回ほどのいきみで、本当にスルッと出てきた!!!!!!!きゃーーーーーーー!!!!!



助産師さんにかかげられている子。泣き声。声低い、赤ちゃん大きい、、、というのが一番の感想。絶対に泣いてしまう、と思っていたけれど、やり遂げた感マックスで、無事に子がこちらの世界に出てきたことが嬉しくて嬉しくて、もうずっと笑ってしまっていた。笑顔が止まらん。終わった、もう踏ん張らなくていいんだもう痛みの波は来ないんだ、一心同体だった10ヶ月が終わったんだ、、、



わたしの胸の上に来る前に、体重やら身長やらいろいろ測られに行ってしまう。良い良い、この後一緒に暮らすのだから。今少し離れるくらい何てことない。(大袈裟)
わたし自身はというと、両脚を抑えていた助産師さんは離れたものの脚はまだ開脚状態。
お腹の中に残っている卵膜を取り出す作業が行われていました。これがまた結構しんどいもので、手を突っ込まれひたすらに掻き出される。しかも強めに。ガシャガシャ、ジャバジャバ!ヒーーーーー!!!痛いというか気持ちが悪い。そんなに掻き出すのですか、卵膜まだ出るのですか、、、



そのうちに手がとまり、おっ終わったのかなとようやく力が抜けたのだが、まだでした。
先生「分娩時に切ったのですが、裂けました」とのこと。股を切った&裂けたということが意味わかります?伝わります??壮絶では???これは出産前からかなり危惧していたことであり、切られたくも裂けたくもない!!!と祈っていたのに全部やってしまった。

実際、直後ハイで痛みはあまり感じずチク?チク???みたいな感覚が続いていたのだけれど、途中少し痛みが出てきたので自己申告して麻酔を使ってもらう。縫ってくれている先生と、サブでもう一人先生がついていた。どうやらサブの先生に縫い方を教えているみたいだった。(おい!わたしの股!!!)どちらも女性の先生で、メインの先生は二階堂ふみに似ていた。ふみ先生がサブ先生に向かって「ここをほら。どう、、、?芸術的でしょ?」と言っているのが間違いなく聞こえました。ふみ先生、聞こえないところでお願いします。ここでアートは持ち出さないでください。



ふみ先生のことはさておき。



子は出てくるときに胎便を飲み込んでしまったようで、後で少しだけ検査しますとのことだった。それはよくあることだし、全然心配いらないと言われ、胸の上に子を連れてきてくれた。うわああああああ体重が、ある!!!重くないけど重い!!!やっと会えたねーーーと声をかける。さっきまでお腹の中にいたのに、今わたしの腕の中で動いてる。なにこれ、出産ってすごい、忘れたくないと思った。



とても眩しくて、知らないことしかない世界に出てきたのに、もうあくびやしゃっくりをしてる。呼吸をして泣いている。すごい、なんという瞬間なのだろう。なんという瞬間だ、という瞬間が何個も何個も繋がってひたすらに流れていく。これはまぎれもなく幸せだ。



助産師さんが、おっぱいあげてみましょうか〜と子を胸に持っていく。えっもう???と戸惑いながらもない乳を子の口にあてがうと、吸う仕草をする!!!なんてお利口なわけ???どうなっているんだ人間って。でも考えてみれば、牛とか鹿とか生み落とされて自力で立つし、、、素晴らしき生命力。



結局、数時間はその部屋で子と過ごすことが出来た。本当にあの時間プライスレス。
その後は検査のためNICUに移動になってしまい、一旦お別れ。分娩時に胎便を飲んだことによって呼吸にストレスがかかってしまい、少し数値が高いとのことだった。また後で検査結果は伝えますと言われる。わたしは一人になり、腕の中にいた子の余韻に浸っていた。なんだか気が付かない間にものすごい汗をかいていて、助産師さんに「汗がやばいす」と伝えて拭いてもらった。これがとても気持ちが良かった。これで本当にお産が終わった〜と安堵した瞬間だった。体がバキバキなので、車椅子で部屋へ移動。

個室に空きがなく大部屋になったのだが、全然大丈夫そう!という印象だった。綺麗だし狭苦しいわけでもない。とにかく今から自分タイムだぜ、、、とワクワクしていた。空腹の限界だったので夜ご飯は普通に食べることが出来た。体が少ししんどくて横たわっていると、お産の時についてくれていた助産師さんが来て、「大事なもの渡し忘れてました〜!」と持ってきてくれた、子の臍の緒。まだプルッとしている、、、なんじゃこれ。形が犬のホネのおもちゃみたいだった。乾燥させてネとのことだったので、とりあえずテレビの横に並べて、寝ることにした。

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