独立支援エージェント

自分のキャッシュエンジンは何か、そのことの思案に暮れていた。
転職や事業承継を支援するサイトについては先に書いたが、転職エージェントと似たような、「独立開業を支援する」サイトも世の中にはあった。早速登録をして、毎日メールを受信した。
私は複写機メーカーの営業として29年間勤務していたが、中でも直近の10年間は官公庁営業部にいて、中央省庁を担当する営業だった。官公庁での調達は全て入札で行われていた。複写機のようにコモディティ化した商品は、「随意契約」のように業者を決めて調達されるになることは全くなかった。したがって、頻繁に入札会場に足を運んだ。
入札は、絶対にやり直しが効かない。入札の仕事をしていると、いろんな人たちの失敗を目の当たりにする。代表者からの委任状を忘れて失格になる者、入札書の封筒の表書きが間違っていて失格になる者、入札書に押印し忘れて失格になる者、電車が遅れたからと言って遅刻してきて会場に入れてもらえなかった者、と色々みてきた。入札金額を一桁間違えて安く記入して落札してしまい、でもそんな金額では提供できないので、後日「指名停止処分」を受けた業者もあった。(指名停止を受けると、関連団体に対して数カ月にわたって入札参加できなくなり、会社にとっては大損害となる。)
また、ただ失敗をしなければいいわけでなく、入札で勝つためには、いかに他者よりも競争優位に進めるか、それも大事な仕事だった。競争相手を入札から排除するのは難しいのだが、いかにして他社の原価が高くなるような、つまり自社に価格優位になるような調達仕様に持ち込むかが大事な業務だった。
お客様は、業者との癒着を防ぐために組織的にクルクルと担当者を替えるものだから、業者の方が担当期間が長く、調達品の仕様に詳しい。なので、お客様担当者が仕様書を作成する段階で、業者に情報提供を求めてくることがある。こちらから情報提供する際、過去の調達の経緯がどうだったか、ユーザー様がどんなことを求めているのか、最近の製品の機能のトレンドはどうか、他の省庁ではどうしているのか、自社に有利になるように巧みに情報を提供した。そんなことにばかり腐心していた。
そんな経験が豊富な私だが、冒頭に述べた、独立支援の会社から、小規模事業者が「国の入札」に参加するのを支援するセミナーがあるとメールされてきた。入札なら自分が独立してもできるのではなかろうかと思った。


ありがとうございます。引き続き、情報発信をしてまいります。