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系統用蓄電池ビジネスの活用と展望 電力市場で収益を最大化する方法

電力市場の変化に伴い、系統用蓄電池ビジネスが注目を集めています。特に、再生可能エネルギーの普及により、電力供給の変動を調整する役割を担う蓄電池は、その重要性が増しています。しかし、系統用蓄電池ビジネスは新しい市場であり、その運用方法や収益化の手法には多くの企業が不安を感じているのも事実です。
系統用蓄電池のビジネスモデルや収益向上のための具体的な方法について詳しく解説します。


1、系統用蓄電池とは? その役割とビジネスモデル

系統用蓄電池は、発電所や再生可能エネルギーの供給量が不安定なときに電力を貯蔵し、必要なときに供給する役割を担います。例えば、太陽光発電や風力発電は、天候や時間帯によって発電量が大きく変動します。これにより、電力供給の安定性が損なわれるリスクがありますが、系統用蓄電池を活用することで電力の供給を調整し、需要と供給のバランスを保つことが可能になります。

また、系統用蓄電池ビジネスでは、蓄電池に電力を充電し、その電力を市場で売却することで収益を得ます。JEPX(日本卸電力取引所)や需給調整市場での電力取引が主要な収益源となりますが、容量市場にも参加できる点が、再生可能エネルギー発電との大きな違いです。これにより、企業はより柔軟な取引戦略を取ることが可能となります。

2、系統用蓄電池ビジネスの魅力

系統用蓄電池ビジネスには、適切な運用をすれば高い収益が期待できるという大きな魅力があります。特に、再生可能エネルギーの導入が進む中で、電力の需給調整に対する需要が増加しています。これにより、需給調整市場での取引が活発化し、蓄電池を活用することで安定した収益を得ることができるようになります。

また、JEPXや需給調整市場を活用することで、電力の価格変動を利用した裁定取引(アービトラージ)が可能です。これは、安く電力を仕入れて高く売るという基本的なビジネスモデルに基づいていますが、電力の調達や売電のタイミングを適切に見極めることで、収益を最大化することができます。

3、FITやFIPとの違い

系統用蓄電池ビジネスは、FIT(固定価格買取制度)やFIP(フィードインプレミアム)を利用した再生可能エネルギー発電とは異なり、電力市場での取引が中心となります。FITやFIPでは、発電した電力を一定の価格で買い取ってもらえるため、収益が安定している一方で、大きな利益を得ることは難しいです。

これに対して、系統用蓄電池ビジネスでは、電力の仕入れと売電の価格が変動するため、適切なタイミングで取引を行うことで、FITやFIPよりも高い収益を期待できます。ただし、このビジネスモデルでは、電力市場の動向を的確に予測し、取引戦略を立てる必要があるため、電力ビジネスの知識やノウハウが重要です。

4、需給調整市場の活用方法

系統用蓄電池ビジネスで収益を最大化するためには、需給調整市場をどのように活用するかが重要なポイントとなります。需給調整市場には、以下の5つの商品があります。

  1. 一次調整力

  2. 二次調整力①

  3. 二次調整力②

  4. 三次調整力①

  5. 三次調整力②

これらの商品の違いは、主に応動時間(指令から放電までの時間)にあります。応動時間が短いほど、調整の精度が高くなるため、蓄電池の優位性が高まります。また、現在は三次調整力②の商品が高騰しているため、この市場での取引に注目が集まっています。

応動時間による違い

応動時間が短い商品ほど、蓄電池に有利です。例えば、一次調整力では10秒以内に放電する必要があるため、応答速度の速い蓄電池が高価格で約定しやすくなります。一方で、三次調整力②は45分以内の放電であり、応答時間が長いため、比較的多くの電源が参加できます。

これにより、応動時間が短い商品ほど、約定価格が高くなる傾向にあります。しかし、需給調整市場はまだ歴史が浅く、今後の取引データを蓄積しながら最適な戦略を立てる必要があります。

5、電力市場での取引のタイミング

系統用蓄電池ビジネスでは、1日を48コマ(JEPXの場合)や8ブロック(需給調整市場の場合)に分けて取引を行います。この中で、どの時間帯に電力を仕入れ、どの時間帯に売電するかを戦略的に決定することが収益に大きく影響します。

例えば、JEPXでは太陽光発電が活発な昼間の時間帯には電力価格が安くなる傾向があります。この時間帯に電力を安価に調達し、需給が逼迫する夕方以降に高値で売電するという戦略が有効です。また、需給調整市場では電力需要が高い時間帯に取引を行うことで、収益性を高めることができます。

6、電力取引を外部委託する選択肢

電力市場での取引には専門的な知識が必要です。特に、電力ビジネスの経験がない企業にとっては、取引の判断が難しく、不安を感じることも多いでしょう。そのような場合、アグリゲーターと呼ばれる専門業者に取引を委託するという選択肢もあります。

アグリゲーターは、複数の蓄電池や電源を集約し、効率的に電力市場で取引を行うことで、収益を最大化します。特に、電力取引の実務経験がない金融機関や自治体などは、アグリゲーターに全てを任せることで、安定した収益を得ることが可能です。

7、系統用蓄電池ビジネスの未来

系統用蓄電池ビジネスは、電力市場の動向を敏感に捉え、適切な取引戦略を取ることで高い収益を期待できる分野です。特に、再生可能エネルギーの導入が進む中で、蓄電池の需要は今後さらに増加すると予想されます。

一方で、電力市場での取引にはリスクも伴います。適切なパートナーを選び、蓄電池の運用や取引を専門家に任せることでリスクを軽減しつつ、収益を確保することが重要です。

系統用蓄電池ビジネスに参入を検討している企業は、電力市場の知識や取引ノウハウを蓄積し、最適な運用方法を模索していくことで、今後の市場での競争力を高めていくことができるでしょう。

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日経MEXT
系統用蓄電池の収益を左右する 電力市場取引の進め方 より

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