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「ペロブスカイト太陽電池」が日本のエネルギー問題解決の鍵となる理由とは


はじめに

次世代の太陽電池技術として「ペロブスカイト太陽電池」が注目を集めています。この技術は、フィルムのように薄く軽量で、柔軟に曲げることができる特性を持っています。主原料であるヨウ素は、日本が世界の生産量の約3割を占めており、日本国内での量産が可能です。さらに、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギー(再エネ)としても期待されています。このペロブスカイト太陽電池の魅力について、詳しく解説していきます。

シリコン系太陽電池の限界を超える

自民党の「国産再エネに関する次世代型技術の社会実装加速化議員連盟」は、ペロブスカイト太陽電池の国産化と普及を急ぐべきだと提言しています。次世代型太陽電池の技術開発は、欧州や中国と激しい競争を繰り広げていますが、ペロブスカイト太陽電池は国産化が可能であり、国際競争力も期待されています。日本政府は、2050年までのカーボンニュートラル(脱炭素化)を国際公約として掲げており、ペロブスカイト太陽電池は地球温暖化対策の切り札となる可能性があります。

従来のシリコン系太陽電池との違い

一般的な太陽電池は黒いパネル式であり、シリコンを発電層としています。シリコン系太陽電池は高い変換効率を持つ一方で、重く、設置場所が限られるという課題があります。日本の太陽光発電設備は1平方km当たり470kWに達し、設置場所の確保が難しくなってきました。

ペロブスカイト太陽電池の特性

ペロブスカイト太陽電池は、メチルアミンと鉛、ヨウ素から成る結晶構造を持ち、太陽光を電力に変換する能力があります。宮坂力教授がこの技術を開発し、2023年に日本学士院賞を受賞しました。この太陽電池が次世代の切り札とされる理由は以下の3つです。

  1. 低コスト
    ペロブスカイト太陽電池は、特殊なフィルムに塗布したり印刷したりして製造されます。製造工程が少ないため、量産化と低コスト化が可能です。経済産業省は2030年までに1kW当たりの発電コストを14円以下にする目標を掲げ、総額2兆円規模のグリーンエネルギー基金の一部をペロブスカイト太陽電池の実用化に充てています。

  2. 軽量で柔軟
    シリコン系太陽電池に比べて非常に軽量で薄く、柔軟に曲げることができるため、多様な用途に適しています。小型のIoTデバイスにも対応できるサイズにすることが可能です。

  3. 日本国内での原材料確保
    ペロブスカイト太陽電池に必要なヨウ素は、日本が世界シェアの3割を占めており、国内での原材料調達が可能です。これにより、経済安全保障の面でも優位性があります。

国内企業の参入

ペロブスカイト太陽電池の特性を活かして、国内の多くの企業が研究開発に乗り出しています。以下はその一例です。

  • パナソニックホールディングス 
    2026年にペロブスカイト太陽電池事業に参入し、自社建材と組み合わせた「発電するガラス」を製品化予定。

  • 東芝 
    フィルム表面にペロブスカイトを塗布する技術を開発し、エネルギー効率と生産速度の向上を目指す。

  • コスモエネルギーホールディングス
    曲がる太陽電池の実証実験を開始し、自社施設の外壁にフィルムタイプの太陽電池を貼って調査。

  • HESTA大倉
    曲がる太陽電池を販売し、駐車場の屋根や壁面での需要を見込む。

  • 大成建設とカネカ、不二サッシ
    建物の外壁や窓と太陽光発電を一体化させた製品を開発。

  • エネコートテクノロジーズ
    第三者割当増資で55億円を調達し、生産体制を整えるとともに、車載用小型太陽電池を開発。

  • YKK AP
    秋葉原駅前広場で建材一体型太陽光発電の実証実験を開始。

  • 積水化学
    福島県いわき市でスマートシティの開発にペロブスカイト太陽電池を活用。

課題と展望

ペロブスカイト太陽電池の実用化には、寿命と安全性という課題があります。従来のシリコン系太陽電池は寿命が約20年ですが、ペロブスカイト太陽電池は約10年とされています。紫外線や赤外線に弱く、湿気により劣化しやすいため、これらの問題を解決する技術開発が求められています。また、ヨウ化鉛などの有害物質を使用しているため、安全性の確保も課題です。

富士経済のレポートでは、ペロブスカイト太陽電池の本格的な量産は2020年代後半になると予想され、2040年には市場規模が2兆4000億円に達すると試算されています。日本国内での原材料調達が可能な環境にありますが、中国や欧州の企業も次世代太陽電池の研究開発を進めており、日本がリードするためには官民の協力が不可欠です。

ペロブスカイト太陽電池は、低コスト、軽量・柔軟、国内での原材料調達という利点を持ち、日本のエネルギー問題解決の切り札となる可能性があります。今後の技術開発と実用化に期待が高まります。

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「ペロブスカイト太陽電池」が日本を救う?エネルギー問題解決の切り札になる3つの理由 【やさしく解説】ペロブスカイト太陽電池とは|
JBpress (ジェイビープレス)
https//jbpress.ismedia.jp/articles/-/82351 @JBpressより


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