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日本の未来を支えるペロブスカイト太陽電池—特許戦略と日本の強み

近年、次世代の太陽光発電技術として注目されているペロブスカイト太陽電池。その開発競争は、世界中で激しさを増しています。この技術は、日本から生まれた革新的な技術であり、日本企業が研究開発をリードしてきました。しかし、近年、中国企業の特許出願が急増しており、特許件数ではトップに立つ状況が続いています。果たして日本は、この競争においてどのように戦っていくべきなのでしょうか。今回は、SK弁理士法人の奥野所長に伺ったインタビューをもとに、特許戦略と日本の強みについて考察します。

日本企業の優位性—特許戦略で見る未来

ペロブスカイト太陽電池の特許出願の動向を見てみると、2010年代は日本勢がトップに立っていました。しかし、ここ数年で中国企業の出願が急増し、年間出願件数で日本を追い抜いています。しかし、累計件数で見ると、パナソニックや積水化学、東芝などの日本企業がトップ10の約半数を占めており、特許の蓄積では日本が依然として優位に立っています。特に、積水化学が保有する特許ポートフォリオは非常に強力であり、他社がこれを回避して製品化するのは困難だとされています。

ペロブスカイト太陽電池の製品化には、大きく2つの方向性があります。一つは、樹脂を基板にしたフィルム型、もう一つは、ガラスを基板とし結晶シリコン太陽電池とペロブスカイト太陽電池を積層構造にするタンデム型です。日本勢が強みを持つのはフィルム型であり、特に積水化学がリードしています。一方で、中国企業はタンデム型に注力しており、これが中国勢が増加している特許出願の大半を占めています。

日本の特許戦略—結晶シリコン太陽電池の失敗から学ぶ

特許戦略において、日本は過去の失敗から学んでいます。かつて、シャープや京セラなどの日本企業が主導していた結晶シリコン太陽電池市場は、2010年代に中国企業の低価格攻勢によりシェアを奪われました。その原因の一つが、基本特許の期限切れでした。特許の効力は通常20年であり、新技術が市場に浸透するまでには10年近くかかるため、実質的に特許で守られる期間は限られています。

しかし、ペロブスカイト太陽電池では、基本特許を日本と欧州がしっかりと押さえています。その上で、日本企業は改良や量産に関する特許も多数保有しており、全体として強力な特許ポートフォリオを築いています。これは、単に基本特許だけを持つ欧州や、改良・量産関連特許に特化した中国に対して、日本が総合的に優位に立っていることを示しています。

フィルム型ペロブスカイト太陽電池—日本の未来を照らす鍵

経済産業省は、ペロブスカイト太陽電池の中でも、特にフィルム型の開発支援を強化しています。これは、結晶シリコン太陽電池での失敗を教訓に、フィルム型での製品化を目指すことで、日本企業の強みを最大限に生かそうという狙いです。フィルム型は、日本の素材技術など周辺産業の強みを生かすことができ、建築物やインフラ施設への設置が容易であるという利点があります。

一方、中国企業は、既に市場で低価格化が進んだ結晶シリコン型太陽電池と競争することを余儀なくされますが、日本はフィルム型で差別化を図ることで、中国勢との直接対決を避ける戦略を取っています。このように、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の開発と特許戦略を進めることで、日本は再び太陽光発電市場でのリーダーシップを取り戻すことができるかもしれません。

日本発の技術で世界に挑む

ペロブスカイト太陽電池は、環境・エネルギー分野で久々に日本発の有望な技術として注目されています。結晶シリコン太陽電池の教訓を生かし、強力な特許ポートフォリオを背景に、日本企業が主導して健全な形で産業化を進めていくことが期待されます。この技術が成功すれば、日本のエネルギー自給率の向上や、国際競争力の強化に大きく貢献するでしょう。

私たち日本は、これからも世界に誇れる技術を生み出し、未来に向けた持続可能な社会を築いていくために頑張り続ける必要があります。ペロブスカイト太陽電池の成功は、その一歩となることを信じて、国全体で支援し、共に前進していきましょう。
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特許に見るペロブスカイト太陽電池の勢力図、SK弁理士法人・奥野所長に聞く
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02443/080200066/?n_cid=nbpnxt_twbn

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