Puzzle Boss Rush 2 Day3 -Loop Rush- 物語

§0.序章
§1.はじまりのことば
§2.たんじょうの地
§3.うまれる怪物
§4.かえる言霊
EX.クロスレビュー
(文:広瀬あつみ)

§0.序章

その男は研究者だった。
湖の遺跡で発見した、半ば朽ちかけた石碑。好奇心の赴くままに欠けた文字を推測し、書かれた呪文の復元を進めていた。
かつてこの地に存在したという古のパズル。その伝承を追い求め、男は悪夢のピースを組み立てる。
これは、そんな愚かな喜劇の話――


§1.はじまりのことば

――ではありません。
こんにちは。Day3、Loop -Chimera-を喚び出したエミリ……じゃなかった、Loop Rushの制作を担当しました、広瀬あつみです。
この記事では、出題したLoop Rushについて、思いついたきっかけやパズルそれ自体について、あれこれ書いていこうと思います。
お付き合いいただけたら幸いです。


§2.たんじょうの地

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もともとのアイディアですが、思いついたのは前回Puzzle Boss Rush(以下、PBR1と書くことにします)の直後でした。
前回が初めてのパズルボスラッシュだったわけで、それの経験を踏まえて、もし次があるとしたらどういうものを出題したら楽しそうかな、と、ぼんやり考えて。
思いついたもののひとつが……っと、その前に、いただいた感想からひとつ抜粋して紹介しましょう。

『(前略)キングスライムで破綻して翌日に持ち越しちゃいましたが、めちゃくちゃ楽しかったです!』

ありがとうございます! 楽しんでいただけてなによりです。
そうですね、アイディアのもとは、某RPGのがったいスライム&キングスライムでした。
「え? こんなところにスライムなんて弱いモンスターが出てくるの? まさか……」
→「ほらやっぱりこれだけじゃ済まない!」
という流れがやりたくて。出題ページの冒頭の文言なども、それのオマージュとなっています。ループパズルにABC……が振られているのもそうですね。
また、そもそも合体盤面が面白そうだな、というのは、PBR1のFusion LoopやFusion Blackを解いてみて思ったところですね。
小問集合という形式を含むとチームで分担しやすくて良さそう、というのはTEN PUZZLESやInstructionlessを見て考えたところですし、PBR1リスペクトとも言えるかもしれません。

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そんなこんなで概形は頭の中に有ったのですが、具体的なルールを決めたのは、PBR2の話が実際に動き始めてからのことでした。
黒マスパズルを組み合わせようか?と思ったりもしましたが、自分がいちばんに好きなのはループ系のパズルということで、やはりこちらにしようかなと。

そうしたら次は、どのループパズルを組み合わせようかという話になります。
中でも好きなループパズルはスリザーリンクなので、これは採用確定。
オマージュ元にあやかるなら、スリザーリンクに似た見た目のパズルを8種類……? と考えて、格子点盤面のマスの中に数字を入れるだけの見た目にできるパズルを、既にあるものから持ってきたり、それだけでは足りなさそうなので新たに考えてみたり……としていたわけですが。

新しいものも含む8種類ものルールがあると、記号を考えるのがたいへん……もとい、ルール把握だけでたいへんになってしまって、参加してもらうためのハードルが上がってしまうのでは、と思い当たりまして。
組み合わせるパズルは6種類に抑え、スリザーリンクに似た見た目にならなくても、格子点盤面に持ってこられるパズルをなるべく既にあるパズルから持ってこよう、ということであのラインナップになりました。

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とはいえ新しいルールのものとして1つ、ループパズルFがあります。
パズラバという雑誌(参照→https://booth.pm/ja/items/1958045)に初月葉桜さんが投稿された「12号ループ」というパズルにルールが似てしまったところではあるのですけれども。

考えのもとは、先に書いた「スリザーリンクと似た見た目」にしたいというところで、マスの中に入った数字に何の意味を持たせるか……と考えて、Maxi Loopのルールの一部分「数字は(中略)一番長い線の長さを表す」が思い浮かんだ、ということだったりします。
合体盤面のパズルにするならせっかくなので、あるルールの数字が盤面の広い範囲に影響を及ぼすような展開にしたいと思ったので、一気にたくさんの部分を確定させやすいルールにしたかったというところでもあります。
バッグやCastle Wallなども、それがやりやすいかなと思って採用したパズルですね。

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ところで、それぞれのパズルの記号デザインについて。
1つの盤面にすべての記号を乗せることになる以上、異なる記号を用意しないといけません。
たとえば、○囲み数字、●囲み数字、グレーの丸囲み数字が同居していたりすると、どの丸がどのルールだっけ?みたいな混乱が起きやすくなってしまうのではと思います。

ということで、今回は数字は3種類の意味合いが登場するわけですが、囲む記号の形をそもそも変えることにします。

スリザーリンクは囲み無しの素の数字。
バッグは、数字のマスが必ずループの内側になるということで、なんとなく白マスを表す印っぽい○囲み数字(黒どこを頭に浮かべつつ)。
ループパズルFは、新たなルールということで、ニコリなどでもあまり見かけない四角囲みの数字に。さらに、色も変えて、Castle Wallのヒントとも被らないグレーにすることにします。
Castle Wallでは内外どちらになるか不明の記号としてしばしばグレーの四角が出てきますが、今回は登場させないことにします。

さらに、それぞれの記号がどのパズルのルールであるかの紐づけを少しでも強化する助けにならないかなと思って、例題のヒント数字の配置を「A」「B」「C」「D」「E」「F」の文字の形になるようにしてみました。
これについてはどれほどの効果があるかもわからないので、気休め程度かなとは思ったのですが……。まあやってみても損はないよねという気持ちでためしてみました。


§3.うまれる怪物

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組み合わせるパズルの選定を終えたので、いよいよ問題を組んでいきます。
どんな感じの展開にしようか……。

ということを考える前に、まずこの小問→合体盤面という形式について。
たとえそれぞれのルールがなじみのないものだったとしても、「小問をまず解いて、正解判定がされる」ということで、「どうやらルールが無事に把握できていそう」と思ってもらえるのかなと。
これならばそのあと合体盤面が出てきても、得られた経験値……確信をもとに攻略を進めていくことができるし、それぞれのルールの記号がかたまっている部分があれば、それがさらにやりやすくなるだろう、と。
そんなことを考えての、合体盤面のヒント配置なのでした。

余談ですが、正解者登録フォームの動作チェックも他メンバーがしてくれているのですが、そのときの登録ネームが「バル、ベル、ボル、ブル」でした。
こいつらも某RPGに登場して、合体するモンスター(しかも、合体してもそれぞれの面影が残る)ですね。

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さて、そんなこんなで組み上がりました。
当初、自分が想定・設定していた難度は「ニコリ(https://www.nikoli.co.jp/ja/)でいうところのアゼン(ニコリでの最高難度)を少し超えるくらい」で、実際それくらいになったのではと思うのですけれども。
にょろっぴぃさんの意向として、ある程度難度を抑えたものもほしいということがあったので……。

「これだと難しいですよねえ」
「そうですねえ」

というやりとりを経て、難度を抑えたものをもう1つ組んでみたのでした。
念のため、(その時点でストーリーが出来上がっていたとしてもさほど変更しないで済むかなと思って)合体盤面の外側の方ではそれぞれのルールの記号がかたまっていて、中央部分ではすべてが混ざり合ったようなヒント配置は踏襲して。

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ちなみにこの難度調整として主に考えたのは、「大きい数字をより多く登場させて、それらは確定させやすくする」ことでした。
こうすることで、長い線が一気に引けたり、内外の塗り分けが一気に進められたりして、気持ちよく解き進めてもらえるかなと。

小問の方も6問中3問を差し替えているのですが、方針としては同じ感じです。スリザーリンクは大きい数字も何もないので、少し違いますけれども。
ちなみにこれらのボツ問題は別記事にて公開予定ですので(※ボツ問集として、有料記事で公開予定です)、強さを追い求める団員のみなさま、よければぜひ解いてみてください。


§4.かえる言霊

いただいた感想からいくつか・部分的に抜粋して、コメントやお返事をさせていただこうと思います。
ここでは紹介しきれないくらいの長文の感想も、すべて読ませていただいています。ありがとうございます。

>楽しかった、面白かった、好きです、等
ありがとうございます。
できれば楽しんでもらえたらいいなと思ってパズルをつくっているので、波長が合ったのかなと、こちらも嬉しくなります。

>急にデカくなるなんて聞いてない!
すみません! 言ってませんでした!

>6問の答えを入力したら合体版の大きいのが出てきて(そういうものだとまだ知らなかった)、「うわーヤバいやつが来た!」ってなった瞬間がとても楽しかったです。
そういうところも楽しんでいただけたならば何よりです。

>がったいするのはなんだか分かってた
>キメラパズルが出てくる予感はありました
熟練の団員たちからはこんな声も。さすがです。

>bagの解き方が解ったきがします
>ましゅ苦手意識ありましたが好きになりました!サクサク線が引けて上達を実感!
>myopiaでまごつきましたが、楽しかったです。
それぞれのパズルへのコメントも嬉しいです。
Myopiaは、遠方の線を指し示しているときなど見落としが発生しやすくなると思うので、地味な伏兵だったかも?

>ループF成分の大きい数字で一気に線を引くのが楽しかったです。
>パズルF周りがハタンしやすくて危険だった
>Fのループパズルは手筋が独特で面白いですね。
ループパズルFはどんなふうに受け取られるかなと気になっていたので、コメントありがとうございます。

>こんなに内外が大切とは
>線を引く・引かないの考え方とループの内・外の考え方を切り替えるのが大変でした。
>内外を使わせようとする策略を感じました。
策略!(ふふふ)
……そう、線が確定したらその両側のマスは内外が異なる、線が引かれないと確定したらその両側のマスの内外は同じになる、これらをきっちりメモしていくとかなり解きやすくなるのですよね。

>キメラはルールがごっちゃごちゃになって頭おかしくなるかと思いました! ルールの絡みあいによる手筋の創出は楽しいですね。
>Fusionは普段絡まないヒント同士で決まるところが楽しかったです。
>大盤面複合ルールが生み出す独特な解き筋のお祭り的な感じが前回のボスラッシュの時から割と気に入っているのですが(特定のパズルへの慣れをそれほど必要としない点も私のような初心者にはありがたいです)、今回もそれが比較的短時間に濃縮された感じで個人的にとても楽しめました。
わちゃわちゃ感を楽しんでくださった方もたくさんで、嬉しいです。
全ルール乗せの盤面小さめ問題を1つ新たに制作して、先にも書いたボツ作品公開記事に寄せていますので、そちらもよければどうぞです。

>凡ミス破綻で3回解き直しました
>途中でミスしてから何回かやり直してました。
ナイスチャレンジです。あきらめない心、良いですね。

>ま、間に合った……
>21時開始だったら中間発表間に合ったな…。悲しみ。
>通信障害が無ければ………
この日は障害が発生して、討伐開始が遅くなってしまったのですよね。一次発表までの時間が短くなってしまって、さまざまに影響が。そんな中でも参加していただいてありがとうございました。

>おはよう!朝4時に何してるんだい?
>気付いたら朝でした
>毎日楽しみですが、詰まった時の止め時を考えようと思いますw
時間も忘れて解いていただいた感じでしょうか。ありがとうございますー。

>1,2とギブアップしてましたが、3で何とか解き切れてよかったです!
>初めてボスラッシュ撃破できました!次は時間内に解けるよう頑張る!
討伐おめでとうございます! 前向きな姿勢もすばらしいです!

>Lovely ^^
>great!
Thanks! :)

>わいわい!
わーい。

>美しい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
嬉しい!!!!!!

>楽
喜。

>ありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。


本文記事は以上です。
以下、他メンバーによるレビューです。

EX.クロスレビュー


・あーく
やけに個性的なスライムたちだなあ。スライムとホイミスライムとバブルスライムとマリンスライムとが合体して一つになったような。
合体版の各所に元のパズルの面影が見えるという案はなかなか面白いですね。何かの機会にこのアイデアを使わせてもらおう、と思ったものの、私は合体系を全く作らない人間だった。残念。

・kattun
ルールの選定や新ルールの考案など、複数ルールを1つにまとめるというのは大変なこと。ましてや、ルール同士の相性まで考えるとなるとそりゃあもう……。でも、Chimeraではそのあたりも含めてしっかりまとまっていてさすがでした。

こっちのルールで引けた線のおかげであっちのルールが進む、というのが解いていて気持ちいいですし、記号配置もパズルごとの領域と中央のミックス領域がはっきりしていて見た目にも楽しい問題でした!バッグとCastle Wallのおかげ(せい?)で、それなりに内外を意識する必要がある問題に……ちょっとニガテ。

今ここでいうのもアレですが、実は例題の配置がA~Fになっていたことに全然気づいていませんでした。ゴメンナサイ。

そういえば、エミリ=シャストって、一体何者ナンダロウナー(棒)

・にょろっぴぃ
前回のFusion Loopとは似て異なる、ループ系ハイブリッドです。ループそのものを考える場面と、内外を考える場面があって、色んなことを考えるところが非常に面白い問題です。
初期版は、想定タイムが本問の倍ぐらいの難易度ですが、本問を解けた方ならきっと大丈夫。前回のプッテリア枠を想定していたのと、周りの問題が難しくなりそうだったので本文にあったようなやり取りがされたのですが、わずか1日でヒント追加バージョンではなく、1から本問を作られてびっくりでした。

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