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企画開発サプリ #5

こんばんは。いつもご覧いただきましてありがとうございます。

今回は、前回の#4発刊の際にツイッターにてコメントをいただいたのをきっかけに「カプセルトイのお金の話」について書きたいと思います。アイデア、開発だけでなく、この「お金」についても、企画を考える上でとても重要となりますので、参考になれば幸いです。

玩具を作るのに掛かるお金は?

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皆さんが玩具を購入する際、販売価格(いわゆる上代)については、とても意識していますよね。では、この販売価格が決定されるまでにどこでどんなお金が掛かっているか、企画開発の目線から見ていきましょう。

0.企画を考える
まずはアイデアです。どんな商品を作ろうか考える事は企画開発者にとっては「業務」です。つまりその業務の時間に対してあなたに支払われる「給与」が発生しています。これは考え方は様々ありますが、私は「アイデアを考える時間も給与をもらっている」という意識で、自分にハードルを課しています。それによって、アイデアの発生から纏めるまでの効率アップを図っています。ただし、あまり意識し過ぎると「売上のためにとりあえず企画を考えなきゃ」と、マイナス方向に働いてしまう可能性もあるので、人によっては意識しないほうが得策かも知れません。ですので、0番としました。

1.企画書を作る
社内でプレゼンを効果的に行ったり、版権交渉において先方への理解を深めてもらうために企画書の精度を上げていくために必要な「企画書」。
勿論、以前のマガジンで書いたように、シンプルな企画書であれば自分で全てをまかなっても良いのですが、自分という一人のリソースを企画書に割き過ぎてしまうのは良くありません。効率良く業務を進めるために企画書を外注する事は玩具業界においても同じです。A41枚の企画書に使用するイメージイラストの作成はピンキリですが、5千円~1万円以内に収めたいところです。

2.サンプルを購入する
商品を企画するにあたって市場分析は重要な業務です。市場、流行、他社商品…アイデアを広げるためには、積極的にサンプルとなる商品を購入すべきです。この費用も商品によって様々ですが、仮に1万円と置きます。

3.工場、デザイン会社に見積もりを取る
無事に商品企画が社内の承認を得られたら、今度はその商品企画が「現実的に商品としては発売できるか」の試算を行わないといけません。その為に、生産を請け負ってもらう工場や、カプセルトイのマシンの入れる台紙、カプセルに同梱する説明書のデザイン費用、フィギュアの場合は原型作成の費用などを見積もっていきます。本来、見積もりを取る事も取引先にとっては「業務」ですので、見積もり費用が発生しますが、比較的にフォーマットが固定されているカプセルトイにおいては見積もり費用は本発注によって相殺される事が多いです。よって、実質的に0円の場合が多いですが、見積もりにも実は人件費が発生していることは忘れないようにしましょう。

4.商品デザイン、原型を作成する
フィギュアの商品開発となった場合、金型を使った量産をするための「原型」が必要になります。カプセルトイで一般的なディフォルメされたフィギュア5体を想定した場合は
原型~金型用注型品(5体):70万円
彩色原型(5体):10万円
監修による修正費用:5万円
計:85万円
大体の中央値での金額ですが、上記のような費用が発生します。

アクリルキーホルダーやポーチなど、イラストレーションだけを作成する場合は、版権を管理している会社からの素材の提供具合にもよりますが、平均的に10万円と見ておけば良いと思います。

5.量産用金型、彩色用マスクを作成する
原型が完成したら、量産のための金型を作る必要があります。これは1tもの鉄の塊に小さなフィギュアの為の凹みを作っていく作業で、そこにPVCという合成樹脂を流し込んでフィギュアを量産していきます。その後、色を塗る作業に移った際、様々な色を塗り分けるためのマスキングプレートも金属で作成していきます。これらは、場合によっては生産コストに吸収される場合もありますが、それ単体で見た場合、合わせて70万円程度が発生します。

6.商品を量産する
新商品を営業さんに託し、受注を取ってきてもらい生産数量が決まったらいよいよ生産となります。これは、企業によって大きく違いますし、私も自分の会社の事は書けませんので、ネットで調べられる一般的な数量として100000個で見ていきます。これに、一般的な上代に対する原価比率で50円と仮定すると、製品を工場に発注した場合500万円が費用(生産コスト)となります。

トータルで…657万円!
ここまでが商品を生産するために必要なコストです。高級車が買える値段ですね!しかし、細かくは記載しませんが、これの他にも物流費や人件費など、見えない費用は数多く発生しています。300円のカプセルトイにこんなにもお金が掛かっていたのですね。

もう一つ、大事なのはキャラクターライセンス使用料

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上記の他にも、商品が世に出るまでには様々な費用が掛かります。その中でとても重要なのがキャラクターライセンス使用料です。
皆さんご存じの通り、カプセルトイにおいてはキャラクターライセンスを使用した商品のシェアがとても高いです。手軽にキャラクターグッズを手に入れられるのも、カプセルトイの楽しさの一つですね。ではこのキャラクター商品を作るために必要なお金はどれくらい掛かるのでしょうか?

キャラクターライセンス使用料(版権使用料)

商品を開発、販売するにあたり付加価値としてキャラクターの形状やデザインを商品に使用する際、1個単位毎に設定したパーセンテージを権利者へ支払う料金の事です。一般的には税抜き上代の3~7%程度とされていますが、取引条件によって様々に変わるため、都度交渉が必要となります。

仮に300円のカプセルトイを販売する時に3%のライセンス料(業界用語?でロイヤルティと言います)を支払うとなった場合
273円(税抜き)×3%×6万個=491,400円
を権利者へ支払います。

ミニマムギャランティ(最低保証使用料)

ロイヤルティは基本的に「商品の生産数量」もしくは「販売数量」に対して発生します。しかし、それでは版権を貸し出す権利者にとっては版権使用料を確実に徴収出来ないリスクが発生します。そのため、最低保証として払う料金をミニマムギャランティ(MG)と言います。これも条件によって様々ですが、MG自体が発生しないこともありますし、数十万の保証をしなければならない場合もあります。しかし、このMGは上記のロイヤルティによって減額されていきますので、その商品がヒットした場合はMGも償却出来るので、その点は安心ですね。

大事な点としては、このMGがライセンスアウトの条件として先行する場合があるという事です。仮に、新規キャラクターのライセンス取得にA社とB社が名乗りあげた場合、権利者側としてはMGの金額によって許諾先を検討する場合があります。こういった際の交渉術も企画開発のスキルとして持っておくと良いですが、これは実践する他ありません。

企画開発とライセンスだけではない「諸経費」

ここまでが企画開発として、自身で動かすべき金額となります。しかし、この他にも企業体である以上様々な費用が発生します。今実際に企業に勤めている方々であれば勿論承知しておられますが、会社としての「人件費」「流通販促費」「販売管理費」「流通諸経費」「その他固定費」などなど。ここは概算でも出すことは難しいのですが、これを自社の中にいながら意識出来るようになると、会社全体のお金の動きも見えてきますので、是非意識して欲しいと思います。

このように300円のカプセルトイが生まれるまでには多くのお金の流れがあることがお分かりいただけましたでしょうか?

ちなみにライセンス交渉や開発を円滑に進めるための「会食、飲み会」も必要経費ですね!会社としてはどの費用においても出来るだけ圧縮したいと思いますが、必要経費は「なぜ必要か」を明確にし、有意義に使う事も必要です。

(2019年10月12日の台風の影響で…)話が少し散らかってしまいましたが、大きなお金を動かしている自覚を持って、より大きな利益を生み出す実感を掴みやすいのも企画開発の醍醐味です。是非、ビッグビジネスを生み出していただければ幸いです。


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