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今さら?【読み解き】寄生獣

以前、作家の勉強として、岩明均さんの漫画『寄生獣』のプロットを作って研究したことがあります。プロットを作ることによって、それぞれのキャラクターの役割や内容をより理解することが出来ました。

今さらですが、今回はその成果を発表します。

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                          【設定】

                   《寄生生物(以下パラサイト)》       

                 ★親がいなく、子供も作れない ★ 

突発的に発生した。次世代を作れないので、種として絶滅がほぼ確定。(幸か不幸か、パラサイトには情緒がほとんどなく、他の個体に関心がないので、パニックにはなっていない。)誰かに育てられた経験はなく、何かを育てることもない。(他の個体とのつながりがないまま成長するので、情緒や心が育たない)

                 ★人間の頭部を食べて成長する★ 

頭部を食べて成長すると、『この種   を食い殺せ』という指令をもらう 。頭部を食べなければ、人間を食べようとは思わない。(この種を食い殺せという指令は人間由来のもの。人間には同種の生物を殺そうとする本能がある)

         ★お互いにテレパシーで存在を感知できる★

特に殺意を強く感じる。(加奈が同じテレパシーを新一との「運命の赤い糸」と思うのとは対照的)

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                      《登場人物》      

                                      ★泉新一★

母親をパラサイトに乗っ取られ、母親という存在との¨つながり¨を切ってしまう。感情に異変が起きるが、田村玲子とのやり取りで“胸の穴”を癒し、人間らしい感情を取り戻す。

                                        ★信子★

新一の母親。身を呈して幼い頃の新一を守ったために右手に火傷の痕がある。

                                     ★村田和美★

泉新一の人間らしさに共鳴する。「きみ、泉新一くんだよね?」とたびたび確認することで、泉新一が人間らしさから離れていくのをを確認する。

                                        ★加奈★                                

泉新一の野性的な(人間らしくない部分)に共鳴する。パラサイトの信号を感知し、新一との“赤い糸”と思う。

                                       ★宇田守★                                  

泉新一と同じくパラサイトに寄生されているが感情豊か。パラサイト信子に胸を突かれるが、心臓は無事で涙もろいまま。(一方の新一は、心臓を貫かれて涙が出なくなる)新一との対比の存在。

                         ★田村玲子(田宮良子)★

パラサイトの存在に疑問を持つ。子作りを試み、次世代を作れないことを実証する。死の直前に人間の赤ん坊との¨つながり¨に目覚める。人間性に近づいていこうとする存在。

                                        ★浦上★

上記の人間の「同種の生物を殺そうとする本能」の部分を形にした存在。人間とパラサイトを見分けられる。野生生物としての人。

                                     ★平間警部★

パラサイトに人間的な対応をしながら排除する。

                                     ★山岸二佐★

パラサイトに非人間的な対応をしながら排除する。

                                         ★後藤★

田村玲子によって作られた、パラサイトのかたまり。

                                     ★広川市長★

パラサイト同士をつながらせ、コロニーを作る。第1巻最初の「誰かがふと思った。    」の言葉を引き受ける。「誰かがふと思った。・・・」というのは、宇宙や自然や神の意思などではなく、あくまで人間の勝手な考えに過ぎないこと。

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【心境が変化する登場人物】

 ★新一★

パラサイトのミギーが右腕に寄生。

母・信子に自身の変化を気づかれるくらい、信子に見守られている。(田宮良子の母親がパラサイト田宮良子を別人だと見破ることに類似)

信子がパラサイトに乗っ取られるが、新一は認めたくない。パラサイトに乗っ取られた母親に心臓を貫かれる。

ミギー、新一を修復する。ミギーの体の30%が新一の体と一体化する。涙が出ないことに気づく。

パラサイト信子と対決。

パラサイト信子を“ヤツ”と呼ぶが、首から下の体を「母さん」と認識し、パラサイトを切りはなそうとする。しかし、その体が拒絶するのを目の当たりにする。それを“信子の意思”と思ってか、ショックを受ける。心の変化が起こる。

「イヌの死骸はイヌじゃない。イヌの形をした肉だ」という無表情の言葉により、「母親の首から下は母親じゃない。母親の形をした肉だ」という認識で乗り越えようとしていることが暗示される。

母親という存在との心理的なつながりを断ち切る。母親のことはタブーになる。

和美の「きみ、泉新一くんだよね?」という言葉に「さあ、どうなのかな」と答える。和美(人間らしさ)から遠ざかっていく。

加奈の葬式で光夫に「てめえは人間じゃねえよ。」と言われ、さらに探偵・倉森に正体がバレて、“化け物”と言われる。「モンスター二匹の」「きみはもう普通の人間じゃない」と言われる。

田村と対峙する。赤ん坊を保護した田村玲子を人間と同等に接する。田村玲子の赤ん坊への思いやりを理解し、新一も田村玲子を思いやる。

赤ん坊と、赤ん坊を守ったパラサイト・田村玲子。    自身と、頭部をパラサイトに乗っ取られた元母親を重ね合わせる。“母はそれでも母であり、子として生命を受け継いでいる”と認識し、母親という存在とのつながりを回復する。

感情が戻り、涙を流す。人間的な感情を取り戻すことができ、リラックスした日常へ。

パラサイト狩りに参加。人間らしさを取り戻した新一としてパラサイトと向き合う。

最後に浦上と対決。パラサイトというモンスターと戦う話ではなく、あくまで人間の問題を描いていることの確認。

浦上のナイフが左腕に刺さるも浦上を倒す。(浦上の「人間はもともととも食いするようにできている。お互いに殺したがっている生き物」という言葉に一理あるかもしれないが、その立場を認めないことを示唆)

和美に「きみが新一くんだから」と認められる。

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★田村玲子★

人間社会に溶け込んでいる。

繁殖能力がないことを実証する。

人間・田宮良子の母親に、「あんた、いったい誰?」と、別人だと見破られる。

広川と出会い、コロニー計画を立てる。後藤を作る。(生殖の真似?    種としての寿命を伸ばすのが生殖ならば、パラサイトの個の寿命を伸ばすこと=種としてのパラサイトの寿命を伸ばすことになる)

赤ん坊とは非人間的な関係。

意図せずに自然に笑いがこみ上げてくる。

生物の利己、利他行動について大学の授業を受ける。「種すら違う、自分のDNAとかかわりのない相手を保護する事例。環境保護での利己、利他について」(最終的に自分を犠牲にして赤ん坊を守ることになる)

「寄生生物は何のために生まれてきた?」と疑問に思う。(最終的には人間の赤ん坊を守って 、次世代へと生命を受け渡す生命のつながりの中で幕を閉じることになる)

母と子の関係性に注目する。母と子には姿形だけではないつながりがあることを考える。新一の母子関係を調べる。

倉森に赤ん坊を誘拐される。「おまえの子じゃない。人間の子だ。」と言われ、赤ん坊とのつながりに目覚める。

「寄生生物と人間は1つの家族だ、我々は人間の“子供”なのだ」と言い、人間とのつながりを重要視し、パラサイトは人間に育てられる必要があると認識する。

銃撃から赤ん坊を守る。(利他行動)

新一を引き留め、つながりを保つために、新一の母親という存在になる。母親は子どもを保護する者であることを示し、警戒を解く。

赤ん坊を保護した田村玲子に対して人間のように接する。田村玲子の赤ん坊への思いやりを理解し、新一も田村玲子を思いやる。それに対して田村玲子は感謝する。

死亡。“人の子の親”という役目を果たし、そのような存在にはなれた。田村だけは人間の顔の形のまま死ぬ。(田村が人間に近い存在になったことを示唆?)

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★ミギー★

新一に寄生する。

献身(自分にとって損でも他人のためにする)が理解できないなど、情緒のない状態。

新一を修復して、元の体の30%の細胞が新一の肉体と一体化する。元の体の30%と連絡を取ろうとすることにより、自分以外の個体(元は自分の一部ではあるが)とのつながりや関係性に意識が働く。

田村の赤ん坊への感情の信号を理解できないながらもキャッチする。また、田村の自己犠牲を理解できないが、目の当たりにする。

後藤と戦い、新一を逃がす行動を取る。

後藤の一部になり、他のパラサイトと意識を共有する。複数のパラサイトの集団の中のひとりとして、集団に属するいう感覚を体験する。これで他者とのつながりの意識が深まったのではないかと思われる。

後藤から分離して、新一の腕に戻る。

休眠に入る。「いままでありがとう、シンイチ」と、新一に感謝の気持ちを持つまでになる。

新一と和美が浦上と争う。ミギーには関係ない人間同士の争いだが、和美に見られる危険をおかしてまでも、和美を助ける。和美の「どんな生命も大切に思うのが人間なんだ」という言葉を受けて、新一に1人として認識される。

人間とは心に余裕(ヒマ)がある生物。

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★まとめ★

物語全体としては、心のないパラサイトを登場させ、主人公が心を失ったり回復したりして、心はどこから生まれるのか? それは他の存在を育てたり、つながりを持つことで生まれるのではないか?   ということを描いていると感じました。

田村玲子はパラサイトから外れて人間へ近づいたのに対して、ミギーは新一との共存から同じ種のパラサイトへの仲間意識へと進んでいったのかなとも思いました。

プロットを作ることで、自分なりの明確な理解が出来たと思います。

長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

★お疲れさまでした★

サポートをしていただけたら助かります。 これからも頑張りますので、よろしくお願いします。