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歴戦のすゝめ

PSA日本支社出しが返却されるこの時期は、絢爛たるコレクション品が、それこそ綺羅星の如くTLを彩ってくれる。

世の中、凄いコレクターがこんなにも多くいるものなのか、と毎度驚いてしまう。そもそも入手自体が困難なカードを、大谷翔平選手もビックリの打率でPSA10やBGS黒ラベルを重ねていくような超人たちもいらっしゃる。

曲がりなりにもこの道に足を突っ込んではや数年。フリマアプリの通知設定は増え、仕事や育児、持病などと折り合いを付けながらショップを巡ってきた。その過程を経て、それなりにカードの「価値」というものが分かってくればくるほど、凄いコレクターの「凄さ」の解像度が上がるのだ。

逆に言えば、自分のコレクションなど足元にも及ばない、というような気持ちになることもある。羨ましい、妬ましい、というような気持ちがまったくないと言えばそれは嘘になるだろう。

特に高価になって手が出なくなってしまったカードのハイグレード鑑定品などを目にした日には、「ああ、もう手に入らないんだろうなぁ」と胸が少し締め付けられるような気持ちになる。もちろん生活や将来を犠牲にすれば、一時的に保有することは可能であろうが、さすがにそれは一社会人としてまともな判断ではないし、家族にも迷惑をかけることになる。

さて、このような気持ちになった際には、その欲しいカードのめちゃくちゃにボロい歴戦品を探してみるべきだ。とにかくどんなにボロくてもいいので、できるだけ安いやつ。安ければ安いほどいい。で、とにかく騙されたと思って買ってみる。

これ、意外と満足しちゃうんですよ。個人的な経験なので満足しない人もいるかもしれんけど。そこは申し訳ないが保証できない。自分はわりと満足したという話。

買う前って傷とか折れとかスレだとか、何だかんだ気になっちゃうんだけど、思い切って買っちゃうと「まぁいいかとりあえず手に入れたし」という気持ちになって、むしろ「ボロいけど、まぁ持ってることには変わりないしな」という前向きな感情に取って代わられるのだ。これを私は「オーナー気分」と命名したい。まぁ気分っていうか、実際にオーナーではあるんだけど。

そんでファイリングしたりフルプロに入れると傷も殆ど気にならないんだよね。特に裏面の傷は。二重スリーブに入れてフルプロに入れるともうなんでも大体美品に見えるんやで。

外国人が裏の傷見ないのは、これなんじゃないか?「お前らいちいち裏面見るのか?裏面はみんな同じで、表面がキレイならそれでいいじゃないか」ってそういうことなんだろうか。それなら結構納得いくわ。

もちろんPSA10みたいな美品を持てるのであれば、満足度はもっと高いのは間違いない。しかしその満足度は自分にとってはあくまで相対的に高い、というぐらいものであった。つまり「持っている」「持っていない」の分かれ目が一番インパクトが大きくて、所有さえしてしまえば、状態の影響度は思いの外低かった。要するにコスパってやつである。

これは実際に、ずっと長年欲しかった相当高価な鑑定品を実際に買ってみて自分の心境を観察してみた結論である。暴論かつ分かりづらい主観的な話でしか無いことを百も承知であえて表現してみると、以下のような感じ。

費用
購入高評価鑑定品>>>>>自力高評価鑑定品>>そこそこ素体>>>>>歴戦

満足度
自力高評価鑑定品>>>購入高評価鑑定品>>そこそこ素体>歴戦

一つ注意したいのは、歴戦品は歴戦品で買うのが難しいということだ。もちろん、そうそう市場に出てこないというのもあるし、売り手が強気すぎるということもかなりある。フリマアプリは特にそうだ。状態に対して強気すぎる出品ばかりだし、そうでないものは志を同じくする歴戦ハンターか、歴戦を転売する専門バイヤーがいるので、そういったライバルに即座に刈り取られてしまう。

運よく出会えたとしても、どこにどう傷が付いているのか、それが自分にとって許容できるのか、といった永遠に正解のない課題と向き合うことになる。とりあえず安ければ買え、とは申し上げたものの、実際何も気にせずに買うのはまぁ無理だよね。コレクターの性ですから。

ならばどこを妥協し、どこを譲らぬべきか?美品価格との相対的な乖離をどう見極めるのか?決して安易な道ではない。札束積んで鑑定品を買うほうが遥かに楽だ。だがそんな金がどこにある?俺にはないぞ。

ゆえに、私のような庶民コレクターは、修羅の道だが財布には優しい、納得のゆく歴戦を探す旅に出ようではないか。貴重なカードも、意外とポロッと出てくるもんなので、そうそう焦らなくても大丈夫。死ぬまでに1枚ぐらいは納得の行く出会いがあるもんですよ、多分。

それに歴戦のいいところは、気軽にスリーブから手にとって思う存分光を当てたり角度を変えたりして輝きやイラストを楽しめるところ。鑑定品はケースから出せないし、美品の素体()をスリーブから出すのは神経を削ってやる気にならないでしょう。

この点歴戦はもうボロボロだからね。気軽に触れるし眺められる。舐めたっていいぞ(おすすめはしない)。カードの真の美しさは、やはりスリーブなどに覆われていない本来の状態を肉眼で見てこそであろう。何の障壁も遮蔽もない状態でこそ、最高の輝きを放つというのは一つのファクトであろうと思う。

つまるところ、「あばたもえくぼ」はカードの世界にも当てはまる箴言ではないか。手に入らぬ美品より手に入る歴戦、というのもまた、コレクションの一つの選択として存在するのだということを、改めて申し上げたかった次第である。


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