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【不器用な癒しのお品書き。】recipe4.夜12時、裸足で駐車場に寝転ぶ

【不器用な癒しのお品書き。とは?】
毎日自分なりに頑張る私へ、だらりとした癒しはいかがですか。明るく丁寧なひかりの癒しではなく、もっと温度の低い、影の癒しを。あなたの不器用に寄り添う癒しを、お店の「お品書き」にまとめご紹介します。


本日の不器用さん:普段の生活がすごく窮屈に思えてきたCさん


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どこか東南アジアを感じさせる陽気な赤い外観。夜中になると月明りとともにオープンする、知る人ぞ知る不思議なお店「ちゃんどら」。
今日も夜な夜な何故かたどり着いてしまった不器用さんが、ちゃんどらマスターに今日の出来事を話し出します。


夏の夜。蒸し暑い空気とうるさい蝉の声、眩しいぐらいの月の光。
そんな日にCさんは歩いていた。

Cさん:
久々にマスターに、会いたいな

そんな乙女チックなことをつぶやいては、はあ…。とため息をついている。しばらく歩いていると、いつもの赤い光が見えてきた。
その光を見ると、なんだか安心したように、少し早歩きになった。

カランカラン。

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マスター:
あら、いらっしゃい、cさん。

Cさん:
来ちゃった〜〜

マスター:
なんだか、今日来る気がしたんだよね、あなた。

マスターは、なんでもお見通しらしい。

Cさん:
別に今、めちゃめちゃ大変なことがあるわけじゃないんだよね。 
多分、人から見たら幸せな生活をしているはずなんだ。

マスター:
うんうん

Cさん:
どこかの誰かと比べたらきっと私は自分の幸せに気づいていない贅沢なやつなんだ

マスターが、手際よくお通しを出す。

Cさん:
でもたまにこの普通の生活がすごく窮屈に思えるときがあるの。
悲しいときは何かきっかけが必要なのだろうけど、そういう大きな理由がないと叫べないこの世界で、もっとちっぽけな理由だっていいから、悲しいとか苦しいとか言えたらよかったなあ…って思うんだよね

マスター:
そうなのね。もっとちっぽけな理由、話してごらんよ。

そうマスターがいうので、Cさんは溜まってたことを一気に吐き出した。


Cさん:
いっぱいある。一昨日行ったカフェで店員さんにきつくあたるお客さんを見た時は胸が苦しかったし。
昨日は、横断歩道を止まらずに疾走して行く車を見たとき、なんだか悲しかった。
子供にきつくあたるお母さんの姿を見たときは、ザワザワして泣きそうになったし。
今日だって…イライラしているコンビニの店員さんにお釣りをもらって、申し訳なくなった

堰を切ったように言葉が出てくるCさん
そんなCさんに、マスターは穏やかに頷き、料理を作る。

Cさん:
きっとこの人も大変なんだろう。その人にはその人の背景があるかもしれない。表面の行動だけ見ると、重たい気持ちになってしまうけど、相手の見えない背景も受け入れて。
そうすると不思議と自分の重たい気持ちも受け入れられるの。

そういいながら、マスターが作ってくれたお通しのきゅうりの漬物を頬張った。

Cさん:
私もみんなも普通の生活と思いながらも、結構大変なところを生きているんだろうなって思った。
でも、やっぱりそんな簡単にはできないよ。目上の人に言ったら根性が足りないって言われるんだろうけど。

マスター:
人の大変さって見えにくいよね。Cさんもみんなも普通の生活と思ってるけど、結構大変ところを生きてるのかもしれないよ。


本日の不器用な癒し:夜12時、裸足で駐車場に寝転ぶ


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そんなCさんに、ようやくマスターがゴソゴソし始めた。
そう!これが当店自慢の「不器用な癒しのお品書き」。
沢山の不器用な癒しを取り揃え、マスターがその日のお客さんにぴったりな癒しを提案します。


マスター:
あなたには、こんな癒しをあげる。裸足で散歩しなさい。

Cさん:
どういうこと!?


マスター:
人間で生活をしていると、いろんな情報が入って疲れてしまうでしょう。そんな風にグルグル考えてはなんだか弾けたくなったら、何も考えずスマホも持たずに外に出てみなさい。
持ち物は、サンダル、サンダルは履かずに手で持ってね。

大人になるとね、弾けることってどんどん減っていくの。自然と触れたり、童心に戻ることもね。例えばあなた、外で裸足になることが年に何回ある?

Cさん:
んー、海に行く時くらいかな。1回とか?


マスター:
そうよね。これからどんどんその機会はなくなっていく。外で裸足になるとね、足の裏にじんわりと暖かいアスファルトを感じるの。
とはいえ、裸足で歩いているところを人に見られたら色々まずいから、家の周囲だけ歩いたり靴をサンダルだけ手に持って歩いたりしているのもいいかもね。

それでね、おススメは近くの駐車場に行くこと。広いところがおススメ。
駐車場って普段は車多いんだけど、さすがに夜中の12時となると人っ子1人いない。
そこに寝転んでみなさい。
見上げるとそれは満天の星。

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星に囲まれているという感覚がすごく自分を安心させてくれる。
背中と足で感じるアスファルトの暖かさと目で感じる星の偉大さ。
結局のところ私たちは何かに生かされているんだなと思うことができるよ。

普段生活している会社とか学校とか何らかのコミュニティって、人間が作り出した1つのものに過ぎなくて。
駐車場に寝転んでいると、
私が悩んでいることって、人間関係のいざこざだったり、ちょっとした無神経な行いからだったり、なんだかちっぽけなことで悩んでいたなぁと思えてくるよ。

そして、持ってきた飲み物を飲む。
少し頭がふわふわした中でまた空を見る。
なんだか自分が自分であるような気がしてくる。
飲み終えたらまた立ち上がって、左手にサンダルを持って裸足で帰ること。
気をつけて帰るのよ。

Cさん:
わあ、なんかいいかも。


マスター:

帰りには、アスファルトの熱も、慣れてしまっているはず。家に帰ったら足が少し黒くなってと思うから、それを理由にお風呂に入っちゃいなさい。
きっと、お風呂に入るのが嫌だなあとは思わないはずよ。

そう話すマスターは、いつのまにかたくさんの料理を作って私の前に並べてくれた。
そのご飯を食べながら、声を出さずに泣いて、泣いて、たくさん泣いた。
またマスターの元に来よう。
そう思って家路に着く。



少し目を赤くして、でもなんだかすっきりした表情で席を立ったCさん。
カランカランとドアを鳴らして、お店から出ていきました。
いろんなモヤモヤが溜まっていたのですね。
そんなCさんの明日が「夜12時、裸足で駐車場に寝転ぶ」で、ちょっとでも良い日になりますように。
さて、次はどんな不器用さんがいらっしゃるのでしょうか。
ご来店をお待ちしております。

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ライター:小林ひかり
感性を生業にしていきたい人。エモいことが大好きで、チルい音楽を聞かせておけばご機嫌になります。プーナチャンドラというブランドを作っています。


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