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指数タワーの読み方

はじめに

なんとなーくみんなわかっているけど、学校でちゃんと習った覚えがあんまりないことってありますよね。以下はそんなことのひとつ。

読んでみよう

タイトルの「指数タワー」とは

$$
3^{3^{3^3}}
$$

のようなやつです。指数がいっぱい重なるやつです。
これどう読むでしょう。

答えは
「3の3の3の3乗乗乗」
です。
もしかしたら
「3の3乗の3乗の3乗」
と読んだかもしれないですが、これは誤りです。

なぜでしょうか。それは
$${3^{3^{3^3}}}$$とは$${{3^{(3^{(3^3)})}}}$$のこと
であり、そして
「3の3の3の3乗乗乗」とは「3の「3の「3の3乗」乗」乗」のこと
だからです。
一方で「3の3乗の3乗の3乗」とは
「「「3の3乗」の3乗」の3乗」
のことです。

結合則が成り立たない計算

上の話、わかる方は「そりゃせやな」と思うと思いますが、わからない方はチンプンカンプンかもしれません。

これは結合則が成り立たない計算と、その表記の慣習に関するお話です。

$${3^{3^{3^3}}}$$は、実はあいまいな表記です。何があいまいかというと、計算を上から行うか下から行うかで答えが(とてつもなく)違う点です。


(1) 上から順に計算しましょう:

$${3^3=27}$$
$${3^{(3^3)}=3^{27}=7625597484987}$$
$${3^{(3^{(3^3)})}=3^{7625597484987}=\text{3兆7千億桁の数}}$$

となります。とてつもないです。

(2) 次に下から計算しましょう:

$${3^3=27}$$
$${(3^3)^3=27^3=19683}$$
$${((3^3)^3)^3=(27^3)^3=19683^3=7625597484987}$$

となります。大きいですが、所詮7兆6千億くらい、13桁の数です。日本円だと思えば、日本の国家予算より小さいです。(1)とは比べものになりません。


このように、指数タワーは、計算の順序で答えが違います。

一般に、a,b,cの間に演算*が定義されているとして

a*(b*c)=(a*b)*c

が成立するとき、「結合則が成立する」と言います。これが成立していれば

a*b*c

と書いて問題ないです。しかしこれが成立していない場合、本来カッコをつけて、計算順序を指定する必要があります。指数は結合則が成立しません。

ただ、カッコをつけるのは大変なので、結合則が成立しない演算では、定義・慣習でどう計算するかが決まっていることが多いです。指数の場合はそれが決まっていて、右結合(上結合?)です。すなわち$${a^b}$$を$${a}$$^$${b}$$で表したとき

$${a}$$^$${b}$$^$${c}$$:=$${a}$$^($${b}$$^$${c}$$)

とするのがルールです。すなわち$${a^{b^c}:=a^{(b^c)}}$$です。

指数の読み方と計算の対応

次に読み方ですが、以下のように実際に計算してみるとわかりやすいと思います:

「3の3の3の3乗乗乗」
=「3の「3の「3の3乗」乗」乗」
=「3の「3の「27」乗」乗」
=「3の「$${3^{27}}$$」乗」
=「3の「7625597484987」乗」($${3^{27}=7625597484987}$$)
=「$${3^{7625597484987}}$$」

一方で

「3の3乗の3乗の3乗」
=「「「3の3乗」の3乗」の3乗」
=「「「27」の3乗」の3乗」
=「「$${27^3}$$」の3乗」
=「$${19683^3}$$」($${27^3=19683}$$)

となります。最初に書いた指数タワーとの対応が、これではっきりすると思います。

$${3^{3^{3^3}}}$$を「3の3乗の3乗の3乗」と読んでしまいたくなる気持ちはわかります。下から読むのだからそう言いたくなります。そもそも正しい読みである「3の3の3の3乗乗乗」など、一聞しただけでは意味がわからないです。最初の「3の」は最後の「乗」と組になるなんていう非局所的な言い方は、言葉ではわかりにくいにも程があります。

結局、下から数字を読むという慣習が悪いのです。上から読めば良いのです。ただ、普通の表記だと、上から読むと必然的に右から左に読むことになるので、不自然です。よって表記自体を変えた方が良いです。

解決法としては、普通の表記における$${a^b}$$を、新たな記法では$${b_a}$$と書くことにして、これを「$${b}$$の$${a}$$降」と読めば良いのです。すると

$${a^{b^c}=c_{b_a}}$$は「$${c}$$の$${b}$$降の$${a}$$降」

となります。この場合、「$${c}$$の$${b}$$降」を計算してから、その数の$${a}$$降を計算するのが指数計算と整合的です。すなわち文の最初から順に計算していけば正しい答えを得ます。

logの計算における注意点

対数の計算でも同様のことが起こります。$${a^{b^c}}$$のlogを取ることを考えます。ここで対数関数に対して成立する以下の公式

$$
\log a^b=b \log a
$$

を使います。すると

  1. $${a^{b^c}}$$を「$${a}$$の$${b^c}$$乗」と捉えれば$${\log a^{b^c}\rightarrow\log a^{(b^c)}=b^c\log a}$$

  2. $${a^{b^c}}$$を「$${a^b}$$の$${c}$$乗」と捉えれば$${\log a^{b^c}\rightarrow \log (a^b)^c=c\log a^b=bc\log a}$$

1.と2.が両方正しいとすると$${b^c\log a=bc\log a}$$が成立しなければならないので、これは矛盾です。よってどちらかは間違っています。

既におわかりかと思いますが、正しいのは1.です。2.は$${a^{b^c}}$$を$${(a^b)^c}$$とみなしており、これは上記したように間違いです。

おしまい。$${{}_\blacksquare}$$

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