見出し画像

ヤスリがけ+1

みんな、金ヤスリで今日も楽しく整面してるかにゃー? うっかり面の多いモデル選んじゃって「ぅゎぁぁあ! 整面が終わらないよう!」ってベソかいてる子はいないかにゃー? 面の情報量がなんて言ってる連中が精緻な仕上げしてないってのがはっきりわかんだね。ただののっぺり面を磨き出す苦労を知らぬ奴は勝手なこと言いよるんじゃい。本当に手を抜かずに磨くとHGペイルライダー磨いた私みたいにそれだけで3ヶ月掛かったりするから、写真撮影時に目立つ(注目させたい)とこだけキッチリ仕上げるってのもアリだぞ。全部整面してると「射出成形死すべし、慈悲は無い」とか言い出して「箱組の方がなんぼかマシじゃー!」と冥府魔道行く羽目になるからね!

と、手抜きテクを教えるのには訳がある。ヤスリがけというとどうしても平滑面を作るという話に傾倒しがちだが、深淵なるやすりがけの世界には更なる深みがあるのである。

これを理解するためには射出成形という技術をある程度理解しなきゃならないのだが、なぁにそんなに難しい話ではない。

x, y, z軸を持つ空間を想定しよう。ガンプラに限らずプラモデルってゆーのはx-y平面上にz軸方面の高さを持つパーツを配置してランナー(パーツが配置された板)を作り、z軸方向に型を移動してランナーを外す。ガンプラだとスライド金型っての使うから若干煩雑だが、基本はこーだ。

画像1

この辺読んでみるといいゾ!

で、金型は抜きの関係上「逆テーパー」を作れない。この問題を解決する為に逆テーパー部を分割してz軸方向以外に抜く「スライド金型」というものもあるが、複雑な分コストが上がる。昔のガンプラだと……

画像2

ビルドダイバーズで描かれた1/100ガンダムだが、ガンダムのアゴの所の形状が違うことに気がついただろうか? 昔のキットだと頭は単純な前後分割にツノが付く構造で、型抜きの関係でアゴパーツはこんな形状になってたりする。また、最近はやたら沢山凹モールドが刻まれがちだが、抜きの関係でz軸方向のモールドはくっきり作れるが、x軸やy軸に近い深さを持つモールドは逆テーパーになってパーツ抜けなくなるからモールドが浅くなったりアレンジされてしまう。

画像3

これはGM/GMの大腿側部だが、連邦MSに特徴的なクランク状のモールドがこんな形にアレンジされている。何故かって言うと「クランクモールドにしたら逆テーパーが発生して抜けなくなるから」だ。

この様に、ガンプラ「にも」……変態金型成形技術を持ち、なんでそこまで……とドン引きする技術力を持つバンダイのガンプラでも、インジェクションという技術の制限に起因するアレンジやモールドの甘さ、設定画稿通りに出来ない部分というものがある。あと、設計者がテキトーこいてたり手を抜いたり、優先順位の関係でダルいモールドになってたりする部分も。

画像4

例えばこの部分。ジムのスネ側面の段モールドだが、キットではここがもっさり気味である。なのでここは設計意図はよー分からんが金ヤスリで「私は」磨いた。緩やかな曲面が生み出す影のグラデーションの近辺にキワっとした鋭角の影が出るとかっけーからだ。(主観なので個人差があります)

画像5

これ

画像6

この、影のグラデーションの中に鋭く斬り込むハイライト。これがかっこよさげなので磨いたのだ。恐らく大部分の人(ジムの面構成に対して鈍感で、線が入って無いからのっぺりしてるーとか言う美のなんたるかを弁えぬ輩:個人の主観です)は気にも留めないすごーくどーでもいい部分に、逆光大好き美とは異なる要素の対立や融和の中にある派(大変めんどくさい生き物)はこだわるのである。これだ、これが美だ!(石川賢のぐるぐる目で) 

と、このよーに……キット見てたら出来る整面とは別に、ランナー状態に立ちかえって型抜きの関係で省略された・改変されたモールドを彫りなおしたり、ダレた所を(時に主観的な動機で)シャープ化するなどの切削加工もまた、やすりがけの範疇として入ってくる訳だ。そこにあるヒケや合わせ目を消すだけではなく、そこに無いものを新たに「彫り出す」或いは「強調する」

この取捨選択の中から「作家性」とか「作者が大切にしているもの」が形成されていく。この「自我の目覚め」から先が改造の世界だ。キットを綺麗に組むだけではなく、己が良いと思う形に寄せていく……

皆の世界に数多くの理解者が現れることを祈念しております。合唱礼拝南無南無。

方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!