異世界ファンタジー

 主人公「おっちゃん」はカクヨムに変な小編書いたりレビュー書いたり雑文書いてる極めて普通のおじさんだった。記憶に残る限りトラックに轢かれた記憶も無いし、過労死した事も何もない。2020年1月中旬までは少なくとも普通に現世で生活していた筈だった。
 異変は1月20日前後から起きる。
 いつも見ているカクヨムというUGCサイト(ユーザー ジェネレイテッド コンテンツ? 早い話が小説投稿サイトだ)のトップページに新しい小説がランク入りした様だった。しかし私はこのサイトのランキング上位作を読むと何故か頭痛が酷くなるという不治の病に悩まされており、そんなものは一向に気にしないのであった。
 気にせずいつもの「自分の作品」--大して耳目を集めているわけではない、目立たずひっそり咲く山奥のエーデルワイスの様な評論--に加筆をし、たまたま論じてた独自指標で先のランキング作を見ると……

 どうやら私は異世界転生をしたらしい。

 その作品はある日を境にそれまでの平均的pvの10倍近いpvを稼いでいた。規則正しく増える星の数、なろうから来ましたの短文レビュー。何事かと本文を確認すると数行で苦痛が……
 冷静に考えて、この様な作品が多数に愛される道理はない。そもそもカクヨムは読者数が小説家になろうに比べてかなり少ない。常識的に考えてなろうを辞めてカクヨムに移る道理は無いのだ。私はすぐに筆者名でGoogle検索をかけた。
 なる程、相互評価や複数アカウント登録からの不正評価で「小説家になろう」からアカウントBANを食らったのか。調べればすぐに5chのログにも突き当たる。

 しかし、奇妙だ。普通複垢作戦でBAN喰らったら、他所では同じことをしないだろうし、やるにしても巧妙にやる筈だ。垢BAN食らってまた同じ事をするとかまるで真性のバカじゃないか。いくらなんでもそこまで救えぬ馬鹿がこの世にいるとは考え難い。もしかしたらこの作品が馬鹿、馬鹿、and馬鹿に見えるのは私の感性がかなり世間様と異なるのが問題かもしれない。私が変なのだ、社会は正しい……いや待て、何故私だけが社会に背を向けるポジションに居るのだろう? 別に私以外の全てがショゴスや深き者どもにすり替わった訳でもなし……ここで誰かがアイデアロールをする音がする。別名「怖い考えになってしまったロール」

 そして私は気付いてしまったのだ。何故かは知らないが、もし私が異世界に転移してしまっていたのだとしたら?

 そう、ここが異世界で本文ではなく行間や本文の外、意味を成さない祭文の様なレビュー文字列により謎の作者が褒め称えられ、白痴の神々の周りに生まれて消える喇叭の奏者の如く不快な音楽を奏でる。それが楽しいと評価される異世界ならば納得できる。トラックに轢かれもしなかったし豊満な女神に会う事もなく、チートも与えられていなかったが……この狂った状況が異世界転移によってもたらされたなら納得できる。ニャルラトホテプが喜びそうな筋書きだ。そもあんなラノベ展開があるのがおかしい。リアルな異世界転移では誰も勇者になどなれぬのだ。

 馬鹿な、いや、まさか……今川監督節で一人勝手に合点しながらランキングページでリロードする。

夢だ。
これは夢だ。
そう、これは悪夢。

 夢はいずれ覚めるもの。リロードを続けていればいずれ悪夢も覚めるに違いない。
 祈りを込めてリロード。
 救いを求めてリロード。
  夢よ、悪夢よ、忘却の彼方に……っ

 憔悴の彼方に見えたものは、「おっちゃん」が先の作を讃えた言葉。
え?
いや、待て。
私はそんな文字を入力した覚えはない。何かの間違いだ、そんな馬鹿なッ!
ああ!
窓にっ!
窓にっ!(古式ゆかしいテンプレ)




 表示名が同じだけで、登録アカウントは別でした。あーびっくりした(本当)


 貴方も人知れず、異世界ファンタジーしてませんか?

方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!