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水星のタヌキ #2

「じゃがりこ屋さん事件」

「何これ、何これ! うみゃーうみゃー☆」(スレッタは興奮すると名古屋弁に似た水星タヌキ村方言を使う)

ミオリネとの婚約が成立して以降、スレッタは放課後に学園内の主要売店で美味いお菓子を食いまくる生活をしていた。結果としてお腹が少しばかりポンポコ気味だが……
「これが幸せ太りって奴ね!」

違うと思う。

中でも1番気に入ったのがポテトフライだ。通称ジャガリコ。トマトを知らなかった(トマト味は知ってる)スレッタは、ジャガイモも業務用マッシュポテトしか知らず、と言うか水星ではジャガイモもいわゆる宇宙食……チューブ飯という形でしか流通していないのである。

「そんなに気に入ったの? 水星には無いの?」
ミオリネの問いには答えず、スレッタは一心にジャガリコをカリカリする。美味しいなぁ、水星のみんなにも食べさせてあげたいなぁ……でも、水星には……(曇)
そんな折に、救世主が現れた!

「あ、横恋慕くぅーん!」
「横恋慕じゃね……申し訳ございませんでした、スレッタ様。忠実なる下僕、横恋慕にございます」
「ちょっとお使い頼めるー? 水星の大宮駅西口のじゃがりこ屋さんでじゃがりこLサイズ2つ買ってきてー?」
「え……目の前の学園3号店では……」
「私は『水星大宮駅西口店の』ジャガリコが食べたいわ。いけない?」
「……いえ、いや……そんな……」

「不服そうね? 決闘する?」
「滅相もございません!(土下座ずさー)」
御曹司でもモビルスーツを安易に破壊されてしまうと困るんだなぁ。予算的に。

数日後。
「すいませんスレッタ様。水星大宮駅西口にじゃがりこ屋は……」
「……良く聞こえないわね。じゃがりこは買ったの?」
「いや、お店が」
「何よ、水星の大宮駅なんて田舎町にはじゃがりこ屋さんなんてねぇよ田舎モンとでも言いたいの?」
「え……」

「お店が無ければ作ればいいでしょ? ジェターク社の御曹司はそんな簡単なことも分からないのかしら?」

この一言に、学園の生徒は戦慄した。決闘という他者への強制力が極めて高い問題解決法。このシステムの頂点にスレッタが居ると言うことは、水星にイオンモールを建築するとか、スカイツリーを建てろという無茶を言えるという事で……それがあながち「無理では無い」立場の人間も、この学園には多数存在する。

「スレッタ、アイスは好き?」
「お、おおおお団子みたいに3つもももも……バチ当たらない?」

31アイスクリームはこの時代だとグラスレー社の企業グループに属している。シャディクは直様すぐさま31アイスクリーム水星店の企画書の起案を始めた。


水星に、アマンリゾート経営のホテルが開業する6年前の話である。

方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!