プラモの筆塗り塗装に対する一考察
ガンプラで筆塗りする人は稀である。
何故かってーと、まず歴史的にはバンダイがシンナーは身体に悪いってんで色プラ化を推進して「塗装しなくても良い」ガンプラを志向したから。それなのにガンプラ界では素人でもエアブラシぐらい……とシンナー使用に逆戻りさせたがるフレンズが多いのは困ったもんだな!
次に、塗装をするにしても広い面を綺麗に仕上げるならスプレー缶とかエアブラシ使った方が「綺麗にしやすい」
色毎にパーツ分けされてるし、スプレーで塗った方が綺麗なんだもんよ。
てな訳で、まぁまぁガンプラ作るのに塗装する奴自体がそもそも少ないし、綺麗に仕上げるのが大変って事で筆塗りする奴は更に少ない。これに対して筆塗りスコスコ民が「筆塗り難しく無いヨ☆ こうしたらいいネ☆」とYouTubeに多数の動画上げてて、ワイは最近それをちょくちょく見てたんだが……
こらぁ、筆塗り始める人が少なくなる訳だ!
みんな言ってる事まちまちなんだもん! 塗料の希釈比率から始まり、リターダー使う使わない問題やら何やら。
私は基本、綺麗に筆塗りするなら塗料を塗料の構成要素とコンディション見極めて「適度に希釈して」、更にリターダーを適宜添加する。ここで「どれくらいの比率で?」と初心者は聞く訳だが……
色やメーカーやコンディションに依る
例えばシタデルなんかは本来ミニチュアフィギュア塗装用だから小面積をザバっと塗り、更に塗り重ねをする前提なんで「余りHGUCなんかの塗装には向かない」それをガンプラの広い面に塗るのであれば、ある程度の塗りむらが出来ても良い塗装方を用いるか、リターダー添加して乾燥速度を落とした方が良い。
また、ツヤあり塗料に比べて艶消し塗料は乾燥が早い。艶消し剤(フラットベース)により表面に微細な凸凹こさえて表面積が増え、溶剤の揮発を促すからかもしらん。この場合も艶あり塗料より艶消し塗料には多めのリターダー添加して乾燥速度調整した方がいいかもしんない。
また……と、実は筆塗りはコンディションによりかなり様々な部分調整しなきゃいかんから、調整の仕方をそもそも知らないと、塗装の前段階すら理解し難いのだ。
これに比べるとエアブラシは多少薄めに溶いてもまぁまぁ塗れる。雑にザバーっとしやすい。ある意味では経験やスキルの不足を金で解決出来るツールだ。
そして、エアブラシは単色をのっぺりとした感じに塗装するより、極めて狭い塗装範囲にグラデーション付けて色塗れるツールである。広い面積を平滑に塗るには普通「スプレーガン」を使う。
車のボンネットも塗れるぞ!
あくまでエアブラシは絵画用のツールだ。
こーゆーリアルな絵を描くために多用されるツールを我々はプラモ作りに転用してるだけで、しかも本来の持ち味である細密なグラデーション付けに利用していない。全くもってものの価値が分かんないムーブしてるよな俺ら!
例えば我々は愚かにも、エアブラシ使いこなせたら上級者である様に錯覚するが、輪島塗りを始めとする漆器作りの工房では漆を均質に塗る為にエアブラシ使ったりしない。まぁ、普通は刷毛塗りだ。連中は古臭いからだ、アナクロだと馬鹿にして己の無知を晒しても良いが、漆器は塗り重ねて厚い塗膜作る必要性があるから刷毛塗りしてんやで?
エアブラシは細密な模型に向く「発色するギリギリの薄膜塗膜」を作りやすいから多用されてるの。刷毛塗りとエアブラシは目的とする塗面がまず違うのだ。
と、いう事で。
本来(どのツール使うにせよ)「目的とする塗膜はどんなものか」を考えてツールを選択して、塗り方を考える訳だ。ここが存在せず「筆塗り」とか「エアブラシ」とかツールベースで塗り方考えるからおかしくなる。
まず大前提として、特にガンプラみたいな縮尺率が大きい(巨大なモデルを手のひらサイズに縮小する)プラモデルでは可能な限り薄い塗膜を作る方が良い。縮尺率がデカいせいでやたら細かくなるディテールを潰さない為だ。また、モノのサイズが極端に違うから光の挙動が実寸とプラモデルでかなり違ってしまうので、ある程度光の挙動の違いを塗装により埋めてやらねばならず……実はこれがスミ入れっていう作業をした方がリアルに見える原因である。
また、塗装をするとプラスチックっぽさが無くなるゆー人もいるが、塗料が硬化して作る塗膜は大部分が樹脂でありプラスチックや。少なくとも金属では無い。プラスチック塗膜作ったらプラスチック感が消えると主張するのは明確に頭がおかしい。正確にはプラモに使うポリスチレン樹脂が若干ながら光を透過する性質を持ち、物体表面でバチコンと発色しないのがガンプラサイズだとすごーく不自然に見えるから、塗膜っていう極めて薄い膜で綺麗に発色する膜を張るのである。
私などはそれを補う為に露出アンダーにしたりツヤテカにして物体表面で光が反射する様にしてたりする。
無塗装素組で撮影ブース使い、PS樹脂らしさを強調する撮影は今一度「何してんだ俺は」と考えた方がいいゾ☆
残念ながら、観測範囲内では筆塗り講座動画で「どんな塗膜作るのが目標か」であるとか、どれくらいムラを抑制すべきかを語った動画は皆無であった。
それどころか、(塗料の量はテキトーなのに)シンナーは2〜3滴垂らす感じですねとか、シンナーやらリターダー添加した後「ほら、こんな感じ」とかき混ぜ棒から垂れる塗料見せるのだけど……メレンゲじゃねーからそんなんしても具合は分からんぞ。大体塗料自体のコンディションや色に依るでしょうがっ!
私は諸般の事情で(主にスプレーしたりエアブラシ借りる為にアキバまで行くのがかったりー時)に筆塗りするフレンズであるが、各種の初心者でも出来る!とか「失敗しない」塗装動画を見て筆塗り塗装が上達しそうな気が「微塵も沸き起こらなかった」
特にプロペインターを名乗る某氏の塗装動画では、なんか広い面塗るのにちまい筆一本で始めてすごーくいやーな予感がしたのだが……案の定、塗装途中のまだ濡れてる面の光沢反射がウネウネしてて「そらまーそーよ」とンゴるなどした。(シタデルを水で希釈しただけだと流石にエアブラシみたいに平滑出すのは無理だと思う)
ぶっちゃけると、筆塗りして多少ムラがあっても塗り分けさえしっかり出来てたら気にならんというか、多くの人はそれに気付かないと思う。
塗装に於いては塗り分け1番ムラは2番。1.5番が色相環。
ムラがなくても塗り分けが中途半端なのと、ムラがあっても塗り分け完璧なのを並べて比べたら一目瞭然。
上記の写真で右側の改修モデルはオレンジ部の一部をクリアオレンジ筆塗り(筆塗りに於いて多分最高難易度はクリアの重ね塗りであろう)して、モノの見事にムラが出来ている。これをドヤって提示できるのがワイの(メンタルの)強さだ。
大腿部から脛にかけて、折角綺麗にスプレーしたのにわざと異なる色ドライブラシ風に雑に入れていたりする。腹部が明るいのは実はわざとやってる。黒マント着せる前提だからだ。
皆はエアブラシで噴いた時の様にムラにならぬ様、ムラが目立たぬ様筆塗りしたがるのだが、実はそんなもん割と撮影時のライティングでどーにでもなるのである。
そも、真面目にヒケを全潰ししてもしなくてもSNSウケという部分ではじぇーんじぇん気にされないからな。塗りムラも割と看過されるってーか、みんな下手だからヘッタクソでーって馬鹿にする奴少ないと思う。じゃーテメーの筆塗り見せてみろよーと。どーせオメーエアブラシベタ塗り派だろーと。
先のパワードジムなんかもスッゲームラムラなんだが、じゃーおめークリアカラー筆塗りして俺より上手く塗れるのかよーとゆーたら大体の人は口を閉じるであろう。つかこれエアブラシ使っても難しい。
普通は調色して吹くからね。ワイはスプレー缶派だから微細な色の具合の変化をつける際にクリアカラーによるオーバーコートを多用する関係上、スプレー缶ならほぼ完璧に「同じ厚みのクリア塗料膜」作れたりする。
上記ガンダムの「デコの5角形」がこのガンダムの赤の成形色だ。クリアレッド吹くと吹き重ねの具合により彩度が落ちて行く(腹やスリッパ部)
だからね、ワイが思うに「ムラの出来にくい塗り方」とか「失敗しない筆塗り」なんて超絶困難な……スッゲー経験やテクニックが必要な事語るのでは無く、むしろ「ムラがあっても気にならんやろ」とか、「ムラがあるけどカッコいいガンプラ写真」をみんなで掲載して、
「あ、別に筆ムラあってもえーんや」とか、「ムラが出るのも当然であろう! 初心者なのだから!」(富野式倒置)を普及させた方が良いのかなと。
大体さー
みんなガンプラ撮影する時に色温度とかホワイトバランス気にするかぁ?
トーンカーブとか気にした写真撮影する人なんてワイが見る限り一握りしかいない。割と色味とかみんな気にしてねーぞ、マジな話。
方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!