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予想の遥か斜め上をいく怪作!「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」レビュー

ぷらすです。
9月8日(金)から公開された白石 晃士監督作品「戦慄怪奇ワールド コワすぎ!」のプロモーションで、U-NEXTとアマプラに、同映画の元ネタでもありカルト的人気を誇る「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズが配信されています。

このシリーズは同名DVDを制作・販売するディレクターの工藤(大迫茂生)、ADの市川(久保山智夏)、カメラマンの田代(白石晃士)の3人が、投稿者から送られてきた怪奇現象を収めた映像を調査・検証するという”体“のフェイクドキュメンタリー作品。
2012年7月に発売されたFILE-01からオリジナルビデオ8作、劇場用映画1作の全9作+各作品のスピンオフ短編9作からなるシリーズで、FILE-01DVD発表当初はさほど話題にならなかったものの、ニコニコ生放送で放送されるようになると、その予想の遥か斜め上をいく超展開がニコニコユーザーにウケて、徐々に知名度とカルト的な人気を獲得していった作品なんですね。

で、今回アマプラで配信されている作品を少しづつ観進めていくうちに、僕もすっかりこのシリーズにハマってしまったので、今回はFILE-01【口裂け女捕獲作戦】からFILE-04【真相!トイレの花子さん】までの4作品をレビュー、少しでも本シリーズの魅力をお伝えできればと思いますよ。
また、本シリーズは恐らくネタバレしても面白さが目減りすることはないと思うので、今回はネタバレありでレビューしていきますので、ネタバレは嫌という人や何も知らない状態で本シリーズを観たいという人はご注意ください

白石晃士とは

そんな本シリーズの監督・白石晃士といえば現在、ジャパニーズ・ホラー(Jホラー)界を牽引する一人であり、フェイク・ドキュメンタリー(ドキュメンタリーの体裁で作る劇映画)手法の第一人者でもあるんですね。
そんなフェイク・ドキュメンタリー方式で描かれた「ノロイ」や「オカルト」は白石監督の初期代表作と言えると思います。

また、いわゆるJホラーの枠組みに収まりきらない、予想の斜め上をゆくストーリーテリングやキャラクター造形が白石監督の真骨頂。
観客を怖がらせる事より、誰も思いもつかないストーリーの「面白さ」を優先させるスタイルで、Jホラーの2大アイコンを対決させた「貞子vs伽椰子」や本シリーズはまさに、そんな白石晃士の作家性が詰め込まれた作品と言えるでしょう。

FILE-01【口裂け女捕獲作戦】

そんな「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」の記念すべき第1作となるのがこのFILE-01【口裂け女捕獲作戦】です。
“口裂け女”は70年代オカルトブームの火付け役にもなった、恐らく日本では知らぬ者がいない都市伝説。ある意味で貞子や伽椰子よりも有名なホラーアイコンです。
「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」というDVDシリーズを制作・販売しているディレクターの工藤、AD市川、カメラマンの田代の元に送られていたのは、トレンチコートを着て、背が高く長い髪で、大きなマスクをしている不気味な女に、投稿者が追い回されるという映像。
それを見た工藤は即座に「口裂け女に間違いない!」と断定。
投稿者や周囲の人々に取材を進めていくと、ある真実にたどり着き――というストーリー。

まず、タイトルに注目して欲しいんですが「口裂け女捕獲作戦」なんですね。工藤は口裂け女の姿をカメラに収めるとかではなく、口裂け女を捕まえて一攫千金を狙うと宣言。調査・検証に向かうわけです。
見ているこっちは「いやいや、お前の仕事は口裂け女をカメラに収めることだろ」と思わず突っ込んでしまいますが、この冒頭のやりとりで工藤というキャラクターの一端が分かるようになってるんですね。
短気でキレやすく、頭に血が上れば相手が誰であろうと暴力を振るう性格破綻者。現にこの作品でも、取材相手をは呼び捨ては当たり前。取材を受けるのを渋るホームレスの男性に殴る蹴るの暴力を振るい暴言を吐き、口裂け女と深い関りを持つ呪術師の犬井という女性を罵倒するなどやりたい放題。
近くにいたら絶対に近づきたくない男ですが、そんな異常者だからこそ、超常的な存在に立ち向かう事が出来るという設定なんですね。

事実、クライマックスで投稿者のアパートを襲いに来た口裂け女を、工藤は躊躇なく車で轢きますからね——って……
コラ―――!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ
おまえ、それが口裂け女じゃなくてちょっとアレな普通の人間だったらどうすんだ!――っていうか口裂け女でも車で轢いたらダメだろ!っていうw

結局、口裂け女の捕獲は叶わなかったわけですが、口裂け女が残した「呪具」を手に入れた工藤はその後の作品で、その呪具を駆使して超常現象に物理攻撃をしていくんですね。
この「バケモンにはバケモンぶつけるんだよ」精神は、その後「貞子vs伽椰子」に引き継がれていきます。

FILE-02【震える幽霊】

続く第2作の相手は、廃校に出るという幽霊。
第1作目の口裂け女と比べるとインパクトも薄く「普通」という感じですが、中盤から白石監督は「え、そっち!?」という方向にハンドルを切っていきます。

4人の男女が廃校での肝試しでカメラに映った「震える幽霊」の映像から物語はスタート。連絡の取れない夕子を除く3人を引き連れて廃校に向かった工藤・市川・田代は、そこで様々な怪奇現象を体験。
投稿者の3人も幽霊?にとり憑かれてしまうんですが、そこで工藤が持ってきたコンビニ袋から取り出したのが前作で手に入れた口裂け女の呪具。

それを3人の胸元に押し込むと一人ひとりぶん殴っていく工藤。殴られたショックで我に戻る3人。
――いや、それもう呪具関係なくない?っていうw
っていうか、身につけたら死んじゃう最凶呪具をコンビニ袋に入れて持ち歩くな工藤。

なんやかんやあったものの事なきを得た一同が来るまで戻る最中、連絡の取れなかった夕子から留守電が。
スピーカーで再生すると「ひーじーりーのーぎゃああああああ」という叫び声が。
急遽夕子のアパートに向かうと、そこに夕子の姿はなくご飯に箸を立てた手つかずの食事だけが。
その時、異音と共に電気が消え、部屋に現れた震える幽霊がカメラに映るんですね。

そこから物語は夕子の調査に移り、彼女がバイセクシャルであることや超常的な力を持っていること、そして彼女に深い関りを持つ「先生」という男性の存在を掴んだ3人は、先生に直撃取材するも先生の言葉は要領を得ず。
その後も取材を続けると、件の廃墟もこの「先生」が設計している事が分かり、その後廃墟の映像からノイズを取り除くとそこには先生の姿が映り込んでいて――。

そこで工藤は、先生に逃げられないよう投稿者の男2人と歩道橋に現れた先生を挟みうちするが、その時、空中に突如夕子が現れ、先生と投稿者は消え、その場にいた工藤も意識不明になってしまった――というストーリー。

え、第2話にして主役級の工藤が意識不明になっちゃったんだけど。これからどうなるの??と、続きが気になり過ぎるところで終わるんですね。

FILE-03【人喰い河童伝説】

そして第三弾は河童。
え、河童?って思う人もいるでしょうが、あの河童です。

工藤がいないコワすぎ!に、投稿者から河童の映像が送られてきます。
寂しい池で釣りをするバカップル。
その途中で彼女が催すも近くにトイレなどないので、野ションをしようと森の方に入っていくと、彼氏は「彼女の野ションを撮影しまーす」と彼女の方に向かいます。すると悲鳴を上げながらこちらに走ってくる彼女。
彼女は林の奥で、食い荒らされた小動物の死骸とキュウリを見つけたんですね。
さらに、池の水面からこちらに向かってくる何かを見つけた2人は慌てて逃げ出し――という映像。
市川と田代は、投稿者の彼氏と共に取材に出向。池近くの民家で家主の鈴木に取材を行うも追い返され。
その時、病院から工藤が抜け出したという電話があり、続けて工藤から会社にいるという連絡が。

取材を中断し、市川と田代が慌てて会社に戻るとそこには松葉づえをついた工藤の姿が。工藤は「昨夜、黒い影を網で捕獲する夢を見た。あれは河童捕獲の正夢に違いない」と断言。強引に調査に復帰するんですね。

工藤と共に改めて鈴木に取材すると、実は鈴木の娘が行方不明になったうえに鈴木に疑いの目が自分に向けられ、妻が息子を連れて出て行ってしまった事が分かります。
鈴木は河童を捕まえてぶち殺すと息巻いていて、工藤が協力を申し出るも「こっちは命がけでやってる。一緒にするな!」と。すると工藤も「こっちだって命がけでやってる。このDVDを見ろ!」とFILE1・2のDVDを鈴木に押し付けてその場を去るんですね。いや、それ逆効果では?w

その夜、再び池を訪れたバカップル。
キュウリを束ねた罠で河童を釣り上げようとするも逆に池に引きづりこまれそうになり、その様子を撮影したビデオを工藤達の会社に持ち込みます。
逃げる時に河童に足を掴まれたと言う彼女。
それから意識が飛ぶことがあると話した直後に様子が急変。
そこで工藤は、再び口裂け女の呪具を彼女の首に巻いてビンタ。これに怒った彼氏にボコられますが彼女は正気を取り戻します。

夢で見た網を購入し池にやってきた工藤達。
罠?を張って河童を捕らえようとするも、工藤は河童の超高速タックルで吹き飛ばされ、市川は河童に連れ去られそうになる緊急事態。しかし、市川は鈴木に助けられて事なきを得ます。
その後、実は鈴木が河童と対決するため陰陽道の修行をしていた事が分かり、鈴木が呪術で河童をおびき出し、彼の術でパワーアップした工藤が河童を捕獲する役を引き受けます。
しかし、河童の高速タックルの前に何度も倒される工藤。
業を煮やした工藤は、自分の拳に口裂け女の呪具を巻いてのカウンターパンチで河童をKO。すぐさま網で河童を捕らえようとするも池に逃げられてしまいます。その時、突如大きな地震が起こり工藤達は退却しようとしますが、鈴木は日本刀を持って池から上がってきた河童軍団に一人立ち向かうんですね。
その様子を映した田代のカメラには、何故か池から巨大な夕子の顔が出てくるのが撮影され——。

後日、自分の彼女が鈴木と同棲していると彼氏の報告を受けた工藤達は鈴木の家を訪れるんですが、カメラに映る二人の様子は明らかにおかしく、工藤達の言葉も聞こえない様子で家に入ってしまうんですね。その引き戸が締まる瞬間の映像には、まるで河童のようになった鈴木の顔と手が写っていた――と言うストーリー。

河童という怖がらせる気があるのかないのか分からない怪異の登場に、最初は半笑いで観ているものの、超展開に継ぐ超展開に、どんどんストーリーに引き込まれていきましたよ。
また、最後にFILE-02の夕子が登場したことで、このシリーズが短編のシリーズではなく、完全なる続き物であることが分かるんですね。

FILE-04【真相!トイレの花子さん】

続く第4弾は「トイレの花子さん」
しかし、もちろん「学校の怪談」に登場するような花子さんではなく、予想の斜め上をいく白石ワールドが極まっていました。

暇を持て余した投稿者のJK、山口菜々と田村英里はふと思い立って通っていた廃学校を探検。「トイレの花子さん」探しをする二人ですが、そこでカメラに花子さんらしき何かが写り、さらに翌日、菜々が英里を部屋で撮影していると英里が首を吊って死んでいる姿をファインダー越しに見てしまうんですね。

その“何か”は本当に「トイレの花子さん」なのかを調査するべく、奈々、英里、そして霊能者の真壁栞とともに廃学校に入った工藤、市川、田代に様々な怪現象が襲い掛かり、3階に上がったはずが1階に出たり、時空の捩じれから昼間だった学校は突如夜になったり。さらに英里が消え、みんなで探していると英里が死んだと英里の母親から菜々へ電話が入ります。すると工藤Dが真壁に「時間と空間を飛び越える力でどうにかしろ!」と衝撃発言。え、その人時空をジャンプできるん?

真壁はタイムスリップは「全員の心が一致すれば成功するが、失敗したら時間の狭間に取り残され本当の地獄を見る」と念を押てから3階に向かい、件のトイレで九字を切ると水音と共に花子さんが出現するんですが、何と彼女の足はまるで、触手のようになっていたのです!ここでまさかのクトゥルフ神話!

真壁の掛け声で全員が、そのうごめく触手のような下半身に向かって飛び込むと、一行は昼間の3階トイレに。
彼らは1階に駆け降りますが駐車場には車はなく、AD市川が兄に電話で確認すると8月14日PM5:37、つまり彼らが学校を訪れる1日前にタイムジャンプしてしまったのです。
困惑する一行。その時2階の出入り口からなぜか菜々が1人で現れ、歩き去っていきます。工藤らはそれを呆然と見つめていた菜々を問い詰めますが、彼女はなぜか頑なに口を閉ざします。

何とか英里を発見した一行は、車のある15日に戻ろうと再び3階に駆け上がりますが、3階にたどり着いた途端に夜に変わってしまいます。「イメージが一致してない!」と真壁が叫び、再びAD市川が確認すると8月15日PM7:03。それだと車は戻りますが英里が消えた後。
急いで車で英里の自宅に向かう一行ですが、そこには首をつって冷たくなった英里の姿が。泣き崩れる奈々に、真壁は英里を助けたいなら本当の事を言えと迫ります。全員の気持ちを一つにしないと成功しないと。

学校へ向かう車中、ようやく理由を話し始める菜々。実は中学時代、彼女は英里を執拗に苛めていたのです。
トイレの一件は、彼女が英里を3番目の個室に閉じ込め苛めていた時、泣き叫ぶ彼女の声が突然止まり、トイレのドアが勢いよく開いて現れた花子さんに首を絞められ気を失い、気づくと暗くてドロドロしたところを漂っていたのだと。

けれどどこからか「止めて!連れてかないで!」と英里の声がして、気づいたらトイレの前で英里が彼女を抱きしめて泣いていたと奈々。以来彼女はイジメはやめますが、ずっと後悔し続け、英里にきちんと謝りお礼が言いたい、あの日は、花子さんに殺すなら私を殺してと言いに行ったと打ち明けるんですね。

そこから廃校で何度もタイムスリップを繰り返す一行ですが、「ここで(いなくなった)英里を捕まえて私たちがいなくなれば(全てが)戻るはず!」と真壁が言い、2階の出入り口から侵入、教室側の階段を3階に駆け上がります。
真壁の考えは成功し、英里を取り戻した一行は階段に向かって走りますが、途中何度も昼と夜が入れ替わり先に進めません。それに気づき一行が立ち止まると3階トイレから花子さんが出現、彼らの前に立ちふさがります。

手を繋ぎ、花子の触手のような下半身に飛び込む一行。
ドロドロとした異世界で全員が揃った瞬間、一同は3階のトイレに戻っていました。
「入り口は閉じた。英里はもう大丈夫」と微笑む真壁。
一行は駐車場階段から外へと出ます。
ホッとする一行。そこで工藤Dが意を決したようすで真壁に近づき、”気づいたこと”を話しかけたその瞬間。
学校机が空間から落下し真壁を直撃、彼女は工藤Dの鼻先で頭蓋を破壊され死亡してしまうんですね。(;´Д`)えぇぇ…

というわけで、FILE-04【真相!トイレの花子さん】はまさかのタイムスリップ&クトゥルフものでしたよ。
どちらも、このシリーズの予算感でするようなネタではないと思いますが、それでもやり切って見せた白石監督に拍手です。

いや、もちろん映像は予算なりというか、かなりショボいですが、それを補って余りある発想と壮大なストーリーに思わず感動してしまいましたよ。

シリーズはさらに続く

というわけで、「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」FILE-01【口裂け女捕獲作戦】からFILE-04【真相!トイレの花子さん】までのレビューでした。

前述したようにこのシリーズは全ての作品が繋がっていて、続く「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」劇場版・序章【真説・四谷怪談 お岩の呪い】、史上最恐の劇場版、最終章の3部作では工藤の過去や、これまでのシリーズの背後にある巨大な謎がついに明らかになるんですね。

更に新章「戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!」2作から、8年ぶりにして最終作となる劇場版「戦慄怪奇ワールド コワすぎ!」へと続くので、このレビューを読んで気になった人は、ぜひアマプラかU-NEXTでご確認ください。

というわけで、「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」のレビューでした。
ではではー(´∀`)ノシ


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